enoki181
2023-10-04 18:14:14
35656文字
Public リプレイ
 

【:プレイ・バイ・レター】拝啓、大嫌いな愛しい英雄(きみ)へ(アレン×クイン)【リプレイ】

GM:エノキ PL:まるさん
シナリオ※シナリオ集内 https://booth.pm/ja/items/4165528


●文通フェイズ/0日目

――微睡の中に、過去の記憶の夢を見る。

これは、魔王討伐前夜の記憶。

決戦を明日に控えた、夜更け。うまく寝付けず、じっと焚火を眺めていたときの記憶だ。

「アレン」

ふと、クイン・カレンデュラ――あなたの幼馴染の声が聞こえた。
クインはあなたの隣に腰を下ろし、眉尻を下げて苦笑する。

「僕、緊張してしまってうまく寝られなくて……
……アレンは、どう? 緊張してる?」

アレン:「してない、って言い切れたら良かったんだけど」

苦笑する横顔を、小さく爆ぜた焚火の炎が一層明るく照らす。
「明日に備えて眠らなければいけない」と言う事を頭では理解していても、その華奢な背に負った【世界の未来】と言う重責がアレンの瞼を下ろさせてはくれなかったようだ。
それでも、その表情に怖えは無い。夜空で染めたような深い紫の瞳は、眼前の炎のオレンジを映して黎明の色に輝く。

「兄さんも眠れない?ふふ、お揃いだね」

夜風に互いの身体が冷えぬようにと、アレンはやって来たクインの肩に寄りかかる。
幼い頃からそうしていたように、自然な仕草で。

「でも……これで、皆の笑顔が返って来るんだ」
「だから僕、負けないよ」

クイン:大きくなったな、とアレンの身を受け止めて思う。重さはもちろん、凛々しい横顔も。

……アレンは強くなったね」

苦笑が柔らかな笑みへと変わる。

「でも、一人で立ち向かおうとしないこと。アデラも、シンシアも、僕だっているんだからね。頼って欲しいって、いつだって思ってるよ」

義理の兄として励ましの言葉をかけながら、アレンの髪に指を通して梳いた。

アレン:触れる指先の熱を心地よさそうに受け止めながら、うっすらと瞼を伏せるアレン。それはどこか、母親の子守唄に微睡む幼子を思わせた。

「うん」
「ありがとう。……僕、兄さんが、皆が居るからここまで来られたよ」

剣だこですっかり固くなった手が、クインの頬に伸びる。

「じゃあ、戦いの前に一つだけ、甘えてもいい?」
……『昔みたいに一緒に寝たい』って言ったら、ダメかな?」

幼い頃はいつも、夜が来る度に二人で同じベッドに潜り込んで色んな話をした。そうしている内にどちらからとも無く眠ってしまう、それが常だった。
そんな平穏とは程遠い現状だが……否、程遠い状況だからこそ。
往時の穏やかな幸福を思い起こすように、アレンは義兄に甘えの言葉を漏らす。

明日の戦いが終わりさえすれば、また、二人で故郷で静かに暮らせる日々が戻って来ると信じて。

クイン:つい笑い声が零れてしまう。大きく成長した姿だが、幼かったあの頃が重なって見える。幼い頃から共に過ごしたアレンなのだと思い知らされると、心の奥底が擽られた。

「ごめん、ごめん……だめじゃない、いいよ」

謝りながらも未だに笑いは止まらない。
あの悔恨の晩――間に合わず魔王に街を滅ぼされてしまった日――だって、共に寝ることはなかったのだ。
忘れられたと思っていたのに。覚えていた義弟が可愛くて仕方なかった。

「明日は寝坊ができないから、ちゃんと起こさないとね」

穏やかに微笑みかけ、揃いのブレスレットがはまる手首を撫でた。
魔王討伐の前夜と呼ぶには、随分と穏やかな夜だった。

GM:共に眠る布団、微睡みの最中。あなたはクインの声を聞く。

「アレン。僕はね、絶対に決めていることがあるんだ」
「僕は……君の騎士として、絶対に君を守ってみせる」
「《魔王》なんかに、殺させない。絶対に君を守るよ。……約束する」

この言葉に何と返したのか。それとも、返さなかったのか。
どうしても思い出すことができなかった。



●文通フェイズ/1日目

……そして、あなたは目を覚ます。

その瞬間、周囲がわっと泣き出すのが見えた。
今君を覗き込み、泣きじゃくっている銀髪の少女は、魔王討伐パーティの仲間……シンシアだ。
どういう状況だ、とぼんやりとする中、シンシアは泣きながら声を絞り出す。

「よかった、よかった……! 覚えていらっしゃいますか? アレン様は凱旋式で刺されて、3日も昏睡なさっていて……お目覚めにならなかったら、本当にどうしようかと……!」

――その言葉と共に「あの日」の景色が不意にフラッシュバックする。



青空の下、笑顔の民衆。周囲に促され、勇者として、人々に手を振りかえす自分。

「アレン」

そんな中――クインに名を呼ばれたのだ。

いつものように振り返った瞬間、目の前を銀の刃が閃き、あなたの左腕に激痛が走る。
赤い血が、青空にぱっと散っていった。

――クインに斬りつけられた。それを理解するのに数秒かかった。
その間にも、左腕からあっという間に痺れが広がり、立っていられずに膝をつく。

叫びながら駆け寄ってくる周囲。悲鳴。怒号。
その人混みの中、クインは警備兵に押さえつけられ、拘束されていく。
クインは、じっと何かを堪えるような顔でこちらを見つめて、その顔がぼやけて、揺れて……

そこで、あなたの意識は途絶えた。



そこまで思い出したところで、同じく魔王討伐パーティの仲間である、王女アデライードがやってきた。
彼女は「よかった。ちょうどクインから手紙を預かってきたんだ!」と言いながら駆け寄ってきて、人払いを行う。

アデラによると、ここは王城の一室らしい。
アデラ、シンシア、アレン……つまり、魔王討伐を共に行った気の置けない仲間だけが部屋に残された後、アデラは「まず、これだけは伝えなくちゃいけない」と切り出した。

▼アデラからの情報

・ 今から「4日目の正午」にクインは公開処刑される。民衆の前で、国を上げての英雄である「勇者」を殺そうとしたのだから、仕方のないことだという。
・ クインは、いまだに犯行動機を黙秘し続けている。
・ だがアデラやシンシアは、何か事情があるのだと思っている。情状酌量できるように国の上層部にかけあおうと決めた。
・ だが、アデラやシンシアが何を話しかけても、クインは黙秘を続けている。
・ そんなクインが唯一意思表示をしたのが、今回アデラがクインから預かった手紙である。

上の通りに説明した後、アデラはあなたにお願いをしてくる。

「とにかく、これがクインの気持ちを知る唯一の手掛かりなんだ」
「私たちも、横で読ませてもらってもいいだろうか?」

アレン:アデラから受け取った手紙。
封筒の宛名の文字は間違いなく兄さんのそれだ。

ああ、あれは、やっぱり夢じゃなかったんだ……

左腕が訴える痛みと傷口が持った熱。それらが、僕のぼんやりした思考を幾らか鮮明にしてくれる。
傍らのシンシアとアデラを見回してから、僕は重い唇を動かす代わりにひとつ、首を縦に振った。

GM:そんな流れで、綴り人はクインからの手紙を開くことになった。
そこには、こんな文面が書かれていた。

ーーーーー

拝啓、愛しいアレンへ

あなたのことが、大嫌いでした。
ずっとずっと、嫌いでした。

此度の件について、申し開きは致しません。望んだことをしただけなのですから。
ただ、ひとつだけお聞きしたいことがございます。
私があなたに負わせた傷は治りましたか?

今でもあの日のことを思い出します。
傷が治ってしまったのではないかと不安を覚えます。治っていないよう、願います。
もう少し深く斬りつければよかった。二度と剣など持てぬよう、あなたの腕を抉ればよかった。
私があなたに負わせた傷が、膿んで、崩れて、その肌に永遠の痕として残りますよう。
それだけを願っております。

クイン・カレンデュラ

ーーーーー

……手紙を読み終えた瞬間、部屋に沈黙が降りる。
……え?」
アデラとシンシアが血の気の引いた顔で、同時にそう呟いたのが聞こえた。

シンシア:「え……え?」
アデラ:「何かの間違いだ、だってクインは……

……これは一体どういうことか。本当にクインの手紙なのかも疑わしい程、あなたの記憶にあるクインと、その文面の印象は乖離している。
けれど筆跡は、確かにあなたが知る幼馴染……クイン・カレンデュラその人の筆跡なのだ。
長い長い沈黙の後、アデラが絞り出すように口を開いた。

「アレン。できれば、クインに手紙を書いて、事情をもう少し聴いてやってくれないか。クインも何か混乱しているのかもしれない」
「いやさ。こんな手紙見せられて書けってのも、酷だってのはわかるよ。でもさ。このままクインが処刑されたら、それこそ嫌だろう。こんな、わけわからないまま……

アレン:アデラの言葉に、ぐわん、と頭を揺さぶられるような気がした。
手紙の中身も勿論、想定外なもので衝撃だった。だけど、それ以上に

(兄さんが、処刑されてしまう……

その事実が、改めて伸し掛かって来たからだ。
違う。兄さんは、こんな事を言う人じゃない。
この傷だってそう。きっと、きっと何か理由があるはずなんだ。
僕は、最後まで兄さんを信じるよ。信じさせて、お願い。

問題なく動かせる右手で、左手首のブレスレットを撫でる。僕の温もりを移して仄かに温かなそれには、兄さんの瞳の色と同じ優しい紅のガラス玉がはめ込まれていた。僕と兄さんの、絆の証だ。

しばし視線を落とした後で、僕は顔を上げ。

「紙とペンを、持って来て貰えないかな」

目の前の二人を真っすぐ見据えてそう告げた。

GM:こうして、あなたは手紙を書くことに同意した。

ただ、何を書けばいいのか……。なにか、ヒントはないだろうか?
とはいえ毒の後遺症があって、あなたは出歩くことを禁じられている。そのうえ、鎮痛剤のせいでひどく眠い。なにかできるとしても、部屋の中で、アデラかシンシアに話を聞く程度が限度だろう。

【行動の選択】
・シンシアに話を聞く

アレン:アデラは「わかった、今持って来よう」と答えて一旦部屋から出ていく。
残ったシンシアの方を寝台の中から見つめ、僕はまだどこか夢でも見るような心地で彼女に問いを投げかけた。

「ねえ、シンシア…………
「何でこんな事になっちゃったんだろう」
「僕、どうしても分からないんだ。兄さんが、何故こんな事をしたのか……
「どんな事でも良い。僕が寝ている間に起きた些細な事でも、僕達が旅をしていた時の話でも構わないから」
「何か、気が付いた事や妙な事って、無かったかな?」

シンシア:「アレン様……

同調して悲しげな顔を浮かべ、寝台へ近寄る。

「アレン様がお眠りになっていた間のことは、先ほどアデライード様が申して下さいましたので……
「私はてっきり、アレン様とクイン様の間にしかわからない何かが起こっているのだと。そう思っていたのです」

そうして、静かに以下のことを語り出す。

・クインはあまり表には出さないけど、とてもデリケートで、気持ちを抱えこみやすい性格だ。
・ 自分も内向的だから気持ちはわかる。今だって、神殿に何かを隠されてるみたいで不安だし……
・クインとは、こうやって不安なことや心配事ができるたびに、ふたりで相談し合ってた。
・でも、クインはいつも最終的に「それでも、僕はアレンがいるから頑張れる」と笑っていた。
・だからシンシアは、綴り人とクインが喧嘩して、ああいう風に拗れたのかなと思っていた。
・そういうわけじゃないなら、どうして突然あんなことを

GM:話を聞き終えた時点で、綴り人は体力が限界になります。
これ以上話を聞いていては、手紙を書いている余裕はなくなってしまうでしょう。
自分たちとはまた明日話せるから……とふたりに促され、綴り人は手紙を書くことになります。

▼傷の具合について
手紙では綴り人の傷の具合について尋ねられています。
基本的には「少なくとも初日時点では毒の影響は強く残っており、体力が極端に落ちている」事は確定していますが、傷自体の治り具合はPLが任意で決めてください。
もちろん、傷について返信に書かないことも可能です。

アレン:シンシアの話を聞き終えた所で、アデラが戻って来る。
もう少し話を聞きたいところだけれど、毒のせいでまだ身体が重い。残った体力は、手紙を書く方に回した方が良さそうだ。

毒の後遺症で震える手を叱咤し、僕はアデラから手渡されたペンを握る。
シンシアに支えられて上半身を起こすけれど、机に向かうことすら難しくて。
サイドテーブルになかば突っ伏すようにしながら、僕は思いの丈を書き綴る。


ーーーーー

前略 愛しい兄さんへ

まずは、文面でのお返事になってしまう事を謝らせてください。
本当は実際に会って話せたら良かったんだけれど、情けない事に、とても起き上がれそうに無いんです。顔を見て話し合いが出来たら、何か僕達の間に誤解があったとしても解く事が出来たかも知れないのに。
肝心な時にいつも間が悪い僕で、ごめんなさい。

兄さんが本当に僕の事を嫌いなのか、或いは何か理由があってそんな言葉を伝える事しかできないのか。
今の僕にはそれは分かりません。
けれど、僕はそれでもやっぱり、クイン兄さんの事が大好きです。
大嫌いだと綴りながら、「愛しいアレン」と書き出してくれる兄さんのことを大切に思っています。
ずっと嫌いだと告げながら、それでも幼い頃から横に居てくれた兄さんのことを愛しています。

あなたが僕の左腕に残した傷は、きっとあなたが望んだとおり、一生僕の左腕に残ると思います。
僕はもう二度と、剣を持つ事は出来ないかも知れません。

けれど、畑を耕す鍬や草刈り用の鎌くらいなら問題なく持てると思います。指を動かすのは問題ないようですから、魚や鳥を捕まえる網を編んだり、農作業に使うロープを綯うことも出来るでしょう。
起こった事は変えられませんが、未来は変えられると僕は信じています。
だから、僕は出来ることであれば、お互いの心身に傷を刻むより、兄さんとあの村に一緒に帰って、二人で穏やかで幸せな日々をひとつずつ刻んで行きたい。
心から、そう望んでいます。

お願いです、兄さん。
僕の何がしかの行動があなたにそんな悲しい決断をさせてしまったのであれば、その原因を僕に教えてください。
僕がその非を改められるか、きちんと兄さんの意に沿う形で償う事ができるかは分かりません。だけれど僕は、このまま兄さんが死んでおしまいなんて嫌です。

兄さんは「望む事をしただけ」と言います。申し開きはしない、とも。
だけれど、僕の腕のみならず心までも抉りたいと言うのが兄さんの本当の願いであると言うのなら。

僕は、兄さんが抱えた痛みも全て受け止めたいのです。


あなたの兄弟 アレン・ヴェルヴェーヌ

ーーーーー


ペンを置いたところで、ぐわん、と世界が回転する。
ああ、もう一言くらい、付け足したかったのにな。
牢の中は寒くないかとか、ちゃんとご飯は食べられているのかとか。

アデラとシンシアが悲鳴のような声で僕を呼ぶ声が遠くから聞こえたのを最後に、僕の意識は深い闇の中へと落ちて行った。

GM:なんとか視界の端でアデラが手紙を手に取るのは確認できた。しっかりとクインに届けてくれることだろう。
そう感じながら、あなたの意識はゆるゆると落ちていきます。