enoki181
2023-08-10 00:33:40
50433文字
Public リプレイ
 

【銀剣のステラナイツ/紫弾のオルトリヴート】十二支班1【リプレイ】

PCモチーフを干支で統一したオルトリのログ。ナンバリングは続くかもなのでつけてます。
俳優:まるさん、守部さん、黝さん、エノキ


【第二章】


▼潮×ひいな

黒丑 潮:「ちょっとアンタ、逃がさないわよ!」

張り込んでいた所に、目当ての人物が一人現れる。その男の手には【薬】があった。それと男を見ながらアタシは声を張り上げて男の目の前に立った。

アタシの可愛いひいちゃんにはちょっと離れたところで待機してもらってるから危険なことははないはずだけど♪
なんて余裕な顔で男に対峙していたら、アタシのことを見た男がいきなり大きな声を上げる。

「うわぁあああああ!!!おれは、俺は、チガウ!!」

半狂乱に叫ぶ男がアタシにタックルをかましてきた。突然の行動に、アタシはよろける。
そして男はそんな隙をついて逃げるように走り出した。

「ちょっ!!待ちなさい!!」

そう言ってアタシは男を追いかける。
だってそっちの方向には可愛い可愛いひいちゃんがいるんだから!!!

花見 ひいな:アンプルを持った男の人がこっちに走ってくる。
腕には龍の鱗みたいなものがいっぱい生えていた。
ひいちゃんは、おねーちゃんからここで待っててって言われていて……
えっと、えっと、動かないほうがいいんだよね?
男の人は周りの人を押し退けて、あっ、目が合っちゃった。

「きゃっ……!」
"こいつに手荒な真似をされたくなければ"……
な、何するの……!ひいちゃんは怖い人になんて負けないよ……

黒丑 潮:「ひいちゃん!!」

なんて事なの?!アタシの可愛いひいちゃんがあんな乱暴な男に捕まるなんて耐えられないんだけど?!ちょっと!誰に許可取って触れてるの?ほんと信じらんない!

アタシは二人の近くまで駆け寄って、男を刺激しないように銃を構えたまま対峙する。

「女の子に、しかも、アタシの大事な子に乱暴するなんて許せないわ!アンタなんてけちょんけちょんにしてやるんだから!」

そう言った後にアタシはひいちゃんに「任せたわよ!」と合図を送るように可愛くウィンクして見せた。

花見 ひいな:おねーちゃんのウィンクを合図に、体が自然と動いていた。
掴まれていないもう片方の手でポシェットの中から拳銃を出す。
ばん、ばん。
躊躇うことなく引き金に指をかけて男の人の顎を貫いた。
信じられないものを見るような視線が、いくつもこっちに向いていた。

「やったぁ……!」
崩れ落ちる死体を前に、ひいちゃんはおねーちゃんのところまで走っていくよ。
大事なお洋服、少し汚れちゃったかも。ごめんなさい。
でも、これぐらいならお洗濯で落ちると思うから……

黒丑 潮:「あ~ん、ひいちゃん本当にいい子~!」

駆け寄ってきたひいちゃんにアタシは抱きしめながらよしよしと彼女を褒めてあげる。やっぱり褒めて育てないと良くないものね!それにアタシの教えたとおりにひいちゃんはやってくれたんだもの目一杯褒めてあげなくちゃ!

「ご褒美に今日も甘い甘いお菓子をあげちゃうわね!はい!」

そう言って頭をよしよししながら彼女の大好きな飴を差し出す。
そして、血で汚れてしまったひいちゃんのお洋服を見てからアタシは明るく言う。

「あーん、可愛いお洋服が血で汚れちゃったわね。でも、お洋服なんてまた沢山買えばいいのよ、ひいちゃんは心配しないでね!」

そして今日もアタシはひいちゃんを甘やかすのだった。

その場に倒れる血だまりを作っている男は無視して。

花見 ひいな:「あっ……!ひいちゃんの好きなショートケーキ味……!」
これは、おねーちゃんがよくご褒美にくれる飴。
お仕事が終わるといつもこれをひいちゃんにくれるの。
……?そういえば、ここのところ毎日もらってるような……
ううん、嬉しいからそんなことは気にしなくていいよね。
お口に入れながらお喋りするのはお行儀が悪いから、今日の分はポシェットに入れておうちで食べるね。

「えへへ、おねーちゃんのためにも、次も頑張るね……!」
おねーちゃんの手をとって、今日はもう帰ろう。
お洋服を着替えなきゃだし、銃弾の補充もしなきゃ。
ふいに振り返ってみると、二人分の血の付いた足跡が残っていた。


▼流星×花矢

三ツ星 流星:ヤード本部。資料室。
いくら何かが起きてなくとも、この街が平和であるはずがない。
過去の事件ファイルを読み解きながら来たるその時に備えるのが優秀な捜査官というもの。
少なくとも、僕はそう思っている。
いくら優秀なフォージと言えども花矢くんには少し退屈かもしれないな。
教科書のひとつぐらいは持ってきてやるべきだったか……

花矢:カヤはお兄ちゃんのよこで、お兄ちゃんが見やすいようにバラバラのファイルを日づけのじゅんばんにならべてる。
カヤはお兄ちゃんみたいにむずかしいカンジはよめないの。でも、おてつだいはがんばるからね。

お兄ちゃんにわたす次のファイルをひらいた時、カヤはとあるシャシンに目がいっちゃった。
お兄ちゃんのジャマしちゃダメなのはわかるけど、でも、どうしても気になっちゃって。

「ね、ね、お兄ちゃん」
「このシャシンのお兄ちゃん、お兄ちゃんとちょっとにてるね?」

三ツ星 流星:「ん、どれ」
「これ、父さんじゃないか。書類でしか見たことなかったから実際に顔を見るのは初めてだ……
父さんなんて言ったが、遺伝子の提供をしてくれた人物なので血の繋がりはない。
それどころか、僕はほとんどそのクローンと呼んで差し支えないだろう。
ファイルの記録では22歳。今の僕と同い年だ。
現在、どこにいるのかはわからない。

「7年前の階層崩壊を最後に、研究所で消息を絶っている……

花矢:「おとーさん……この人が、お兄ちゃんのおとーさんなんだ」

じっとシャシンを見る。そのよこに、お名前と数字が書いてある。22ってこれ、年かな?
でも、7年前に22ってことは……

カヤはさんすうとくいなの。
だから、ゆびをおって、足して、引いて。
……どうかんがえても、このシャシンのお兄ちゃんが、お兄ちゃんみたいな大きいこどものおとーさんには思えない、ってことがわかった。

「それって、ほんとのおとーさんなの?」
って聞こうとしたけど、もしかしたらなにか、ジジョウがあるのかも知れないよね。
あんまりお兄ちゃんに聞くと、お兄ちゃんがかなしくなるかも。

「そっか……でも、見つかんないってことは、どこかにいるかもでしょ?会えたらいいよね!だって、お兄ちゃんみたいなユーシューなソーサカンなんだからさ。きっとどこかで、生きててくれてるよ!」

お兄ちゃんにわらってほしくて、カヤはがんばって元気な声を出す。

三ツ星 流星:「……
「花矢くん、君は……足し算も引き算も得意な子だったね」
「えらいね」
この時、僕はどんな表情をしていたのか。
父さんも、母さんも、優秀な捜査官だった。
だからこそ、その死を嘆いた人の手によって僕のような人間が造られたのだろう。
会いたくないと言えば嘘だ。
しかし……
この街を救う英雄は、二人も三人もいらない。

「皆、本当は無事で、元気にやってるはずだよ」
「どこかで会えたらいいね」
作り笑いを浮かべながら、君の励ましにそう返事する。

花矢:「……そう、だね」

どうしよう。
カヤ、なにかわるいこと言っちゃったかな。お兄ちゃんのおかお、こわい。
わらってるのに、わらってないの。お口のはしっこが上を向いてるだけなの。

そのよこに、カヤとそっくりのおねえちゃんのシャシンもあった。だけどカヤはもう、お兄ちゃんに「ねーねー見て見て!」なんて言えなかった。

ごめんね、お兄ちゃん。
カヤがユーシューなフォージだったら、お兄ちゃんこまらせないのにね。

カヤも、カヤも

お兄ちゃんみたいな英雄だったら、よかったな。

三ツ星 流星:君の視線の先に、母さんと思われる写真があった。
母さんの表情は君によく似ていた。
僕はそこで……
僕の血が呼び寄せた花矢くんの正体に気付いてしまった。


▼巳影×ハジメ

巳影:「……二人組のブライト容疑者が現在、一般捜査官に危害を加え逃亡中。こちらの区域に向かった模様、だってさ」

回って来た無線を車の中で聞き終えると、僕は左足のホルスターから銃を抜き

「射殺許可は近々下りると思う。捜査官権限で君にこれを渡しておくよ」

助手席に居たハジメ君の膝の上にそれを乗せた。
自身の愛用の銃はショルダーホルスターの方に格納されているし、予備の銃も右足に装備している。彼にこれを渡した所で僕の装備が薄くなると言う事はない。

「念のために使い方は教えておいた方が良いかな。生前はナイフしか使ってなかったでしょ」

ハジメ:「マジ?いーの?」

通信中は静かにお仕事の邪魔しないよーにしてましたよ。
イイコにさ。そのゴホウビかのごとく置かれた銃を手にして、なんとなく握ってみる。うおおお!慣れない!

「生きてたときは映画でしか知らねーや……いやさー、普通オレに渡す?いーの?何するかわかんなくない?」

これでも生前は殺人鬼って呼ばれてたんですけどー?なんて笑って見せる。

巳影:「君、そう言う事はしないでしょ」
「だってコレを容疑者に向けず無差別に一般人に向けた日には、君が処罰対象になるんだから」
「せっかく運よく貰えた1年間のボーナスステージなんだしさ。最後の一日まで楽しんだ方が得じゃないか。そうだよね?」

彼は浅慮な人間では無い。よって、自分に破滅をもたらすような馬鹿な真似はしない。そう言う意味で、僕は彼の事を信頼している。
ーーまあ、これを信頼と呼んでいいのかは分からないけれど。

ハジメ:「ふーん……やっぱ変な奴」

くるんと拳銃を回そうとしたら、コラッて怒られた。そういうとこしっかりしてんのな。
ま、殺しの道具を杜撰に扱っちゃ怒られる、当たり前のことだ。いらん処罰を受けたいわけでもない。
まあしかし、これ使って殺しをやるのはオレの趣味じゃない。最期の命乞いも聞けやしないだろ。使い方による気もするけど……めんどそうだし。

二人で車から降り、その容疑者ってのを探す。はじめての得物に浮足立ってキョロキョロするうち、変なのを見つけた。

「アレじゃん?どーすんの?数は不利だし、分断して一対一に持ってくのがいいよな。お前ってちゃんと走れんの?ヒョロそーだけど」

巳影:「そうだね。……とりあえず、あっちの茶髪は任せていいかな?もう片方の鉄パイプ持ってる方は、僕がやるから」

そう答えた後で小さく肩を竦め、僕は少しだけ口元に笑みを浮かべる。
こんな風に誰かに笑い掛けるのなんて、いつぶりだろうね。

「あと、心配はご無用。これでも4年間、捜査官を続けて来た身だよ」

とっ、と軽く地を蹴り一気に距離を詰める。
錯乱した男は「どけ、優男!!」なんて叫びながら横薙ぎに鉄パイプを振り回すが、それが僕の顔面に命中するより先に素早く屈む。
そのまま無防備な足元を払えば、バランスを崩した容疑者はあっけなく尻餅を搗いた。

「勝負あり、だね。ここで死ぬか凍結牢に入るか、好きな方を選んでいいよ」

ショルダーホルスターから抜いた銃を男の額にぐり、と押し付けて温度のない声で容疑者に告げる。

昔なら容赦なく殺してたけど、今は一応聞く事にしているんだ。
どちらも実質的な死なのは同じだけれど、凍結牢なら出て来られる可能性は億が一くらいはあるからね。

男は汚い涙を流した後で、凍結牢を希望した。
これにて一件落着、と。

さて、ハジメ君の方はどうかな?

ハジメ:「おー」

軽々と動く後ろ姿に感心の声を上げる。やるじゃん?
相棒の働きをしっかり見ときたいんだけど、こっちが賑やかなうちにオレも済ませとくかぁ。

逃げ出し始めた茶髪を追いかけ……うん、やめよ。そう思い立って方向転換する。
このへんはコンテナの集まりで、建物の高さがそんなじゃない。近くにたまたま梯子つきのコンテナもあって、ひょいとそのてっぺんに上る。
これで茶髪野郎の動きが丸見えだ。オレはこうして……よし。決めた方向に奴を誘導するため、音が反響するようにと銃をぶっ放す。なかなかいいんじゃん?にんまり笑って走り出す。

「オラァ!」

決めていた通りにコンテナの上を渡って、やってきた茶髪の背中に蹴りと共に降り立つ。
銃の安全装置を掛けたまま、グリップのとこで頭を殴った。脳震盪を起こした奴にもう一発!
これでぐったり気を失った男に満足する。前は微妙に意識があるうちに歩かせて、さも介抱してますって感じで人気のないとこに連れてバラシてたんだよな。今はどーしたらいいんだろ。

「ミカゲー?終わったー?」

悩んだ結果、大きな声で相棒の名を呼んだ。
静かなのはあっちもミカゲの勝ちで終わってるからだ。四年間捜査官を続けてたんだっけ?じゃあ、信用してる。名前を呼んだら答えてくれるはず。

巳影:「うん、終わった。……見せて貰ったよ、鮮やかなお手並みで」

なんて言いながら、形だけの拍手を贈ってみる。
僕は殺人鬼をやっていた頃の彼を詳らかに知っている訳ではないけれど、どうやら思った以上に切れるようだ。
俯瞰し、追い詰め、一撃で仕留める。まるで肉食獣の狩りだ。
一族と山で狩りをしながら暮らしていた頃の事を思い出して、少しだけ懐かしい気持ちになった。

「もっと向こう見ずに掛かっていくかと思ったけど、意外だね。あと、発砲して殺さなかったのはもっと意外だ」
「何か、理由でも?」

ハジメ:「あー、一旦大人しくする癖がついてんだ。殺るなら意識戻ってからがいい。ちゃんと怖がって命乞いして欲しいじゃん。そのへん、銃は強すぎんだよ。趣味じゃない」

こんな語るのは始めてだ。当たり前だけど殺しのことなんて秘密だったし。コイツは案外ちゃんと聞いてくれんじゃねーの、って思う。どうもその通りっぽいから喋りすぎちまう。

「そっちも鮮やか?だったっぽいじゃん。全然汚れてねーの」

相手の白い服に視線を走らせてケラケラと笑い、拳銃を返すために差し出した。

「殴るのにはちょうどよかった。また貸して」

巳影:「……なるほど」

殺人鬼的な道理に共感はしないが、理解はした。そう言う理屈ならああ言う戦い方にもなるか。
今までフォージと肩を並べて戦った事なんて無かったけれど、こう言うのも悪くない気がする。容赦ない戦い方に怖じられた事はあったけど、賞賛を貰ったのも初めてだしね。

「お褒めに与り恐悦至極。こちらも助かったよ。次に共闘する事があったらまた、頼むかも」

差し出された銃を受け取り、ホルスターへと戻す。

少しだけ頬が緩んだのはきっと、郷愁がそうさせたんだと思う。


▼カンビ×ヨル

カンビ:ヨルはなんで今更泣くんだ。ずっと口答えしなかったじゃないか。けれど、これが本当の彼女なら。抑え込んでしまっていたなら。フラグメント・バレットを使わなくたって、彼女は犠牲になっているじゃないか。
フォージって、ブリンガーって、僕たちって、何なんだろう。

……考えたって仕方ないじゃないか。僕の母だって犠牲になったんだ。
父も階層崩壊時に死んだ。こちらは遺品が見つかっている。母は何も見つからなかったのだ。
最後の目撃証言で、母はヨルの近くにいたことがわかっている。
ヨルは人間じゃない。階層崩壊以前に恐れられていた龍だ。森の奥深くに伝承が残っている。

ヨルの手を引いて、僕はその場所へ来ていた。
木々が生い茂って暗い。水に満たされたその真ん中にぽっかりと陸地があった。壊れた何かがあるけれど、祠だろうか。

「ここなら何か思い出す?」

ヨル:「なに?ここはどこ……?」

カンビに連れてこられたココは何だろう?何か思い出す?と言われても今の私にはただの世界から切り離されて壊れた空間にしか見えなかった。

ここに私の何が関係するというのだろう?
カンビは私から何を聞きたいのだろう?

私の手を引くカンビの手が、何故だかひどく冷たいような、怖いような気がして。私の奥底にある嫌なものが暴かれていくような、何とも言えない感覚になった。

「荒れ果てているように見えるけれど……ここが一体何だというの?」

この、取り残されてしまった『世界』に何があるというのだろう?

カンビ:無感情に努めてヨルの顔を見下ろす。
これは演技だろうか。本心だろうか。
……わからない。一年近く一緒にいたのに、僕は彼女が何もわからない。

悔しくて悲しくて。けれど、今の僕がそう思う資格なんてなくて。

――

ヨルには答えず、変わりに変身の言葉を呟く。
無理矢理言わせて、彼女は僕の前から消えた。厳密には、僕を包む力になった。
ああ、何度も助けられたのに。今の僕は恩を仇で返している。

銃弾の残りを確認すると、バレットは残り二つ。
膝元までの水を搔き分け、中央の陸地まで辿り着く。

歩いている間に結論を出した。水に向けて弾を放つ。
……二つとも。
これでもう戻れない。

空になった銃をしまい、変身を解いた。

ヨル:「あ、ああぁ……

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

全ての記憶が濁流の如く私の全身を駆け巡るように支配する。

私はその衝動に人の姿を保てず、思わず自分の本来の姿、龍の姿に変わってしまった。白い鱗に覆われた龍の姿をカンビに晒す。

これでは私もロストブライトではないか……いや、もう時間も何もかも残りわずかだったのだ。隠すこともできないしもう何も知らなかった頃には戻れない。
記憶をなかった事にはできない。

「カンビは……これで、満足?」

そうして私は何も移さない瞳をカンビに向ける。
きっとこの子はあの子達の子供だ。だって二人にとてもそっくりなんだもの。

ああ、生きていたんだ。
そう安堵するとともに私は絶望した。

カンビ:「え……

――誰だ、これは。

呆然とその姿を見上げる。
バレットを撃つと別人のようになるとは聞いたことがあるけれど。ヨルは本当の姿を晒すだろうと思っていたけれど。
予想以上の神々しさに身が震える。人間じゃないことの本質をわかっていなかった。

……い、や!まだだ!お前、お前は!知ってるだろ、僕の母を!どうした!どうやって殺したんだ!」

それでも叫ぶ。
彼女が殺したのだと決めつけながら。

ヨル:「…………そう、ね……私の中で一緒に死んでしまったわ」

そう言うと同時に、私は本来の姿から大人の女性に姿を変える。
彼女は崩壊の時に負った傷が酷く、あまりにも子供に見せるには酷いありさまだった。だから、彼女が望んだんだ。

『私を食べて欲しい』と

彼の方は何とか原形をとどめていたものの、深い傷を負い、簡単に死んでしまった。

それが悲しくて、私は二人を抱きしめながら散っていった。せめて二人がこれ以上苦しまないように。それが死んでいて、もう感覚もないのだとしても、それでも私は……

離したくなかった。

「ねぇ、カンビ……私は悪い龍なの世界を恨んで、人間も恨んで……

「それでも、貴方の両親だけは愛おしかったの」

愛なんて持たなければ楽でいられた。
苦しまずにいられたのにね。

本当に馬鹿な龍だ。

カンビ:「う、そだ……

勝手に膝が落ちる。

「やめて、母の、おかあさんの、声で、顔で……言わないで……僕の名前を呼ばないで……

ヨルが母の姿を取れるのは、会ったことがあるからだ。それは確かで。でも、これが本当だって限らないじゃないか。
信じたくないのに。その姿で言われてしまったら、疑うなんて考えがなくなってしまう。
もし母の姿をしていないとして。世界への恨みを、僕の親への愛を。どちらも語る彼女の言葉が嘘だとは、今は思うことができなくて。

「それって、ねぇ……君はほんとうは母と父の恩人で……僕はそんな君を……いま……ぜんぶ……つかい、つぶして……?」

銃を見つめる。そこに弾は残っていない。全て僕が撃ちきった。
このあとは、そう。班に連絡をして。応援を要請して。ロストブライトを討ってもらえばいいって。

「うそ、うそだ……ああああああああ!」

悲鳴が森の中に響く。

ああ、もう戻れない。

ヨル:「カンビ……おいで」

泣き崩れるカンビにふっと優しく微笑むと、私はそう言って彼を自分の腕の中に招こうと両手を広げる。

私が貴方の母になろう。
愛情を感じられず育ったカンビには母からの愛がなく育ってきたはずだ。
だから、少しの間だけでもいい、この子に私の愛を……

「後悔なんてしてはダメよ。貴方は本当は知りたかっただけだものね?いいのよ、私が全部終わらせてあげるから」

カンビ:「うん……

……ヨルの腕の中に収まると嗚咽が落ち着いた。
声色と同じように、触れてみた体温がとても暖かい。まだ生きているんだ。

「ヨル、まって……僕がやる。君を殺させはしない、終わりにさせはしない」

それが何を意味するのか、わからないわけじゃない。何度も世界を救ってきた。まだ残った家族に妹がいる。胸が痛んだ。それでも。

「まだ願いが叶うかもしれないじゃないか。ねえ、覚えてる?ラストブライトの話。昔、お父さんが輝く龍を見たことがあるって。聞いたときにこの話を思い出したんだ。おかあ、さ……

顔を上げる。確かに母の顔があったけれど……そうだ、違うんだ。

……ごめん、君はヨルだ。もう間違えない」

顔を拭う。視界がはっきりした。
そうだ、戻れないなら戻らないまで。世界ごと捨ててやろう。

「ヨル、まだ間に合う。来た捜査官の輝きを奪って、そして、君をラストブライトにする。だから、もう少し待っていてね」