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enoki181
2023-08-10 00:33:40
50433文字
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リプレイ
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【銀剣のステラナイツ/紫弾のオルトリヴート】十二支班1【リプレイ】
PCモチーフを干支で統一したオルトリのログ。ナンバリングは続くかもなのでつけてます。
俳優:まるさん、守部さん、黝さん、エノキ
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【第一章】
▼潮×ひいな
黒丑 潮:「さ、ひいちゃん。次どこに行きたいかしら?」
可愛い可愛いひいちゃんの為に選んだお洋服がふんだんに入った買い物袋をぶら下げながら、アタシは横を歩くひいちゃんに声をかける。
きっとこの子のことだから「潮お姉さんの気になる所でいいよ」とか言うかもしれないけれど、そんなこと言ったらアタシが頷いてあげないんだから!
女は自分の好きな服を着るものよ。ひいちゃんには似合うお洋服がいっぱいあるんだし遠慮しないでほしいわ!
アタシの可愛いひいちゃんは世界一可愛いんだから♪
花見 ひいな:「あわわ
……
おねーちゃん、紙袋がいっぱい
……
!」
普段のおねーちゃんは研究者さんで都市捜査官さん。
本当は実験したり、調べものしたり、毎日忙しいのに非番の日はこうやってお外に連れていってくれるの。
そのたびに新しいお洋服を買ってくれて
……
おうちにはもうクローゼットの中にいっぱいあるんだけど
……
うーん?
「えっと、えっと、ひいちゃんは
……
」
きょろきょろと辺りを見る。
曇り空の下で金色のイチョウが絨毯を作っていた。
「今の季節のお洋服はいっぱい買ってもらったから、来年着るものとか
……
?」
あ、どうしよう。そういうのは今の時期売ってないんだっけ?
黒丑 潮:「そうね
……
来年着る服も、買いに行きましょっか」
それだけ頷くとアタシはまた手に持った袋を持ち直してから前を向く。そんなアタシの顔は笑顔が貼り付けられたかのように変わらない。
ただ、なにかを隠すための笑顔(仮面)がそこにあった。
大丈夫。大丈夫。
まだひいちゃんは大丈夫だもの。アタシがいる限りこの子のことは守るって、ちゃんと生き返らせて、ちゃんと生きてもらうんだって決めてるんだから。
でもそれは誰の願い?
ひいちゃんはそう言った?聞いた?
これは
……
エ、
「あ、来年の今頃ならこういう秋色のお洋服も似合うんじゃないかしら?」
ふとショーウィンドウに飾られた服を目にしたアタシはきゃあきゃあと声を上げる。
ひいちゃんを彩る服には目が無いのだ。
そう、考えないようにした。
花見 ひいな:「どれどれ?あっ、かわいいね
……
!ひいちゃん、これ好きかも
……
!」
わがままを言ってないかな。おねーちゃん、困ってないかな。
おずおずとマネキンの隣に立ってみる。
いいなぁ。これ。今年の新作なんだって。
来年の今頃にはまた流行りも変わってそうだけど、ひいちゃんは来年もこれを着たいなぁ。
「
……
えへへ、そしたらおねーちゃんの分のお洋服も買っちゃおうよ」
「新しいのを着ると嬉しいし、おねーちゃんの隣にいるともっと嬉しいから」
黒丑 潮:「そうね、どうせなら何かお揃いの物も買っちゃいましょう?」
「ひいちゃんと一緒にお洋服選ぶの楽しいわぁ。ほ~んと、ずっとお休みだったらいいのに~」
そう言ってお店に入ったアタシはひいちゃんにお洋服を試着してもらいながら、次の服をあれこれと選ぶ。これはこれで二人でファッションショーをしているみたいでとても楽しいものね♪
そうしてお洋服を選びながら思ったことをポツリと溢した。
「隣に、ひいちゃんがずぅっといてくれると、アタシ嬉しいわ
……
」
花見 ひいな:試着室でくるくるしながら、お店中のお洋服に着替えていく。
ひいちゃんはお洋服よりも、美味しいお食事よりも、本当はおねーちゃんと一緒にいられるだけで幸せなのになぁ。
あれ?
どうして、おねーちゃんはひいちゃんにお洋服を買ってくれるんだっけ?
どうして、ひいちゃんはおねーちゃんのことが好きなんだっけ?
どうして、おねーちゃんって、ひいちゃんのことこんなに大事にしてくれるんだっけ
……
?
頭の中が濁った何かでぐちゃぐちゃとして、それ以上のことはわからなかった。
でも。
「春の日も、夏の日も、秋の日も、冬の日も、ひいちゃんはずっとおねーちゃんの傍にいるよ」
ショーウィンドウにあったあの新作のワンピースを着て、あなたの隣に寄り添った。
▼流星×花矢
三ツ星 流星:穏やかな昼下がり。
ここ最近は大きな事件もなく、世界平和のための僕が台所なんかに立ってる有様だ。
非番の日というものはあまりにも退屈すぎる。
僕だけでも週7で出勤させてほしい。
……
そうこうしている間にアップルパイが焼けたようだ。
「花矢くん、できたよ。冷めたら分けてあげるから、まだ触らないように」
花矢:「はあーい」
カヤのお兄ちゃんはとってもつよくてかっこいい「エイユウ」。だけど、お休みの日はコックさんなの。
たぶんお兄ちゃんは、ホントはおしごとしたいんだと思う。
でもね、カヤが「おやつたべたい」って言うと作ってくれるんだよ。
だから、カヤはおやすみのたびにおねだりするんだ。
りんごのパイを作ってるあいだは、エイユウをお休みできる。こうしたら、お兄ちゃんにお休みとってもらえるから。
ヤードのみんなも言ってたもんね、お休みはだいじだって。
「ね、ね、あといくつくらいかぞえたらいい?」
三ツ星 流星:「ええと、本、本
……
ああ、型から外して
……
」
「具体的な秒数はわからないが、もうちょっとだな。レシピ通りに作ったから美味いよ」
花矢は休日のたびにオヤツだかなんだか、甘いものを作れとねだってくる。
フォージの士気のためだ。
僕は完璧だから料理ぐらいできるし、それぐらいどうってことない。
今回のアップルパイも初めて作った割にはかなり上出来の類だ。
「皿とフォークはもうテーブルに並べた?」
花矢:「もちろん!カヤはユーシューな『そーさかん』のフォージだからね!おしごとはバッチリなのです!」
ふふん、ってむねをはるよ。
お兄ちゃんが作ってくれたアップルパイ。上のカゴみたいなあみあみを作るのは、カヤもおてつだいしたんだ。
おりょうりなんてやったことないけど、お兄ちゃんとするおりょうりはたのしいの!
ーーでももし、カヤがほかのフォージの子みたいに、しぬ前のことをおぼえてたら。
お兄ちゃんになにか、おいしいもの作ってあげられたのかな。
「ねえ、お兄ちゃん」
「カヤね、お兄ちゃんのとこに来る前のこと、おぼえてないんだけどさ」
「お兄ちゃんはカヤと会う前、どんなことしてたの?むかしはガッコーに行ったり、お友だちとあそんだりしてた?」
りんごのパイがさめるまでの間は「てもちぶたさん」だから、そんなことをお兄ちゃんに聞いてみる。
三ツ星 流星:「はは、えらいえらい」
フォージは備品だ。
ヤードは託児所でもなければ僕は兄でもないし、彼女だって妹でも何でもない。
それでも不思議と、この数カ月の間に情のようなものを覚え始めていた。
まぁ、僕の血液から生まれた存在だ。
多少の愛着は出てくるだろう。
「
……
」
沈黙に耐えきれなかったのか?
余計なことを聞いてくると思ったが
……
どうせ誰かに言いふらすわけでもないし、いいだろう。
「僕は
……
」
「学校は行ってないし、友達なんていないよ」
花矢:「
……
お友だち、いないの
……
?」
「ガッコー行かなくてよかったの?みんな行くって言ってたよ」
それに、お兄ちゃんはヤードにおなじ「そーさかん」の人がいっぱいいるのに。
お友だちじゃないのかな、なんでお友だちになれないのかな?
三ツ星 流星:「
……
ちっ」
「花矢くん、僕の人生は学校が全てじゃないんだ。友達が全てじゃないんだ」
「そういう育ちの人もいる、ってことだよ」
僕に学校はいらない。
何故ならフォージと同じように、知識が刷り込まれた状態で生まれてきたからだ。
僕に友達はいらない。
このヤードにおいて他者からの理解など必要ないからだ。
「さ、切り分けるよ。紅茶に入れるお砂糖とシロップはそこにあるからね」
花矢:「そっかあ、じゃあカヤとおそろっちだねえ」
だってカヤもガッコー行ってないし、お友だちいないもん。ヤードの同じ班のフォージの子は、あんまりおしゃべりしてくれないし。
けど、お兄ちゃんはホントはカヤとちがうよね。
カヤは1年しか生きられないけど、お兄ちゃんは来年もそのまた来年もあるんだから。
あ、でも。
「じゃあ、カヤがお兄ちゃんのお友だちになる?」
りんごのパイを切ってるお兄ちゃんに、カヤはいっぱいのえがおで言ってみた。
べつの班のフォージの子が言ってたよ。お友だちはずっといっしょにいる子のこと、なんだって。
じゃあ、お兄ちゃんがカヤをずっとおぼえててくれたら、カヤはずっとお兄ちゃんといっしょだよね?
これならカヤもさみしくないし、お兄ちゃんもさみしくないよね!
三ツ星 流星:「ふふ
……
」
このフォージ、僕を憐れんでいるつもりか?
僕の出生はほとんどフォージに近いし、何なら去年まで培養槽の中で調整中だった。
だからといって僕の背負った運命を、選ばれた者の使命を共有できるはずがないだろう!
友達なんて言葉で惑わして!
「ありがとう、花矢くん。今は気持ちだけもらっておくよ」
「離れ離れになる前提の友達なんて寂しいだけだからね」
「僕達は捜査官とフォージ。それが一番、いい関係なんだ」
皿に大きく切ったパイをひとつ乗せて、僕は微笑んでみせた。
花矢:「
……
そっかぁ、わかった」
やさしいなあ、お兄ちゃんは。
ヤードの人たちも、「ジュンショク」しちゃうことはたくさんあるし、フォージのみんなも1年でバイバイだもんね。
でもね、カヤはお兄ちゃんのことだいすきだし、お兄ちゃんのことわすれないよ。
きっときっと、さいごまで。
おさらの上にのっかった、大きなアップルパイ。
フォークをたてにして、つきさして、ぱくり。
「ふふ、あまーい!おいしーい!」
ミツのたっぷり入ったりんご。さくさくのパイ生地。
ーー二つに切り分けられたそれのどちらが甘いかなんて、「私たち」にはまだ分からない。
▼巳影×ハジメ
巳影:「何で君、殺人鬼なんかやってたの」
何の予定も入っていない非番の日。
暇潰しにと投げかけた問いが、二人きりの静かなリビングに響く。
暇潰しで聞くには余りにも不適当な内容かも知れないけど、それを慮る気持ちなんて7年前にどこかに置いて来た。
どんな答えが返って来ようがきっと大したリアクションは返せないし、そもそも返事すら特に期待していない。
ただほんの少し、興味が湧いただけだった。
僕と同じく、我欲で人を殺めた人間に対しての好奇心とでも言おうか。
ハジメ:「あー?気付いたら?」
リビングのソファにふんぞり返り、相変わらず表情筋の働かない相棒を見据える。
「ハツモノは特別だとして、一人殺したら二人目も一緒じゃん?」
殺してきた奴らの顔を思い出し、指折り数える。アレコレ覚えてたり、なかったり。最期んときの顔はどれもこびりついってっけど。
「テメェもそうだったろ。逆にさぁ、一人目とか覚えてんじゃねーの?どんなだった?」
オレの話を続けてやってもいいが、なんかまぁ癪だ。オレだけベラベラ喋るってのが気に入らない。吐くならそっちからだろう。
巳影:「一人目
……
一人目ね」
「ブライトだったな。ごくありふれた、殺人衝動に駆られたタイプの」
「凍結牢まで連行するのが困難だったし、完全に龍化する前だったから、射殺許可が出たんだよ」
「脳天を狙ったんだけど、初めてだから外してね。仕方ないから心臓を撃ち直した。以来、頭は狙わないようにしてる。やっぱり的は多少大きい方がヒットしやすいし」
……
喋り過ぎたな、と口を噤む。
別に誰に聞かせる話でも無かったのに。
しばしの沈黙の後で、再び口を開く。
「二人目からは一緒、という件に関しては同意するかな。それ以降は、ただの『数』としてカウントするだけになった」
ぴったり49まで数え終わったら、そこで終いにするつもりだったから。
自分も、世界も、何もかも。
ハジメ:珍しくたくさん喋るもんだから、静かにその声を聞いてやる。その後すぐ黙っちまったけどさ。
「なー、フォージもカウントしてる?それとも別カウントにすんの?」
「もしくは、自分のフォージは殺してないとかなんとか。ブリンガー様はそういう理屈言ったりする?結局一緒だけど」
ニヤリと笑った。面白いよな、でっかい組織で殺しやってるなんて。
巳影:「しているよ。最後に僕が銃口を突き付けて殺す事に変わりは無いからね」
「だから
……
少々君の扱いには困っている所だ」
ソファに座った足を組み替え。
泥水みたいな安物のコーヒーで舌を湿らせてから、目の前に掛けた少年にレンズ越しの視線を向ける。
「僕はもう、復讐を終えてしまった。正直言えば、いつ死んでも良いと思っている」
現在のフォージである彼が来るまでの一ヶ月の間に、僕の悲願は達成されてしまった。犠牲になった同胞と同じ人数の屍を積み上げてしまった。
だから僕にはもう、生きる理由が残されていない。
故に、悲願を達成した後で生まれて来た彼を殺す事にさして興味が無い。
「話が少し逸れるが
……
君は、これからどうしたい?」
「もしバレットを落とすのが嫌なら、僕が死ぬと言う手もあるけど」
「その場合、君は厚生班に引き取られて穏やかに余生を過ごす事も出来る」
多分、彼はその道を選ぶんじゃないだろうか。
自分の身を削ってまで守りたい世界でも無いだろうしね。
ハジメ:「は?バカじゃん?」
思いっきり顔を歪めて吐き捨てる。
「穏やかな余生ってのにさぁ、オレの趣味の『殺し』が許可される可能性ってある?いくらフォージだとしてもさぁ、ムリじゃん?そんならテメェと暴れた方がマシだわ」
「バレットとかよくわかんねーけど。嫌でもねーよ。オレがドドメ刺してるってことじゃん?ホントはオレが直でやりてーけど。だからズルいよな、ブリンガー。オレも生きてたらなぁ」
そう言って足をブラブラさせる。
「まー、オレが死んだ方がこの世の為ではあったんじゃん?それも、まぁ、いいよ。済んだことだ」
「けど、テメェが死ぬのはちょっとなー。オレがスカッとしねーし。もうちょい生きててよ」
巳影:彼の言う通りだ。彼に快楽由来での殺しが許可されることは、まず無いだろう。
ここで「じゃあ手慰みに、僕を今ここで殺す?」とでも提案してあげられたら良かったんだけど。
多分そんな事したら穏やかな余生どころか殺処分一択だ。都市捜査官を手に掛けたフォージなんて、引き取り拒否されるに決まってる。
だとすれば彼の言い分を聞くのも悪くない。
彼はもう、僕の復讐の対象では無いのだから。
この少年が限り有る命を生き切るまでだけ、僕も隣で生きてみよう。
「わかった。じゃあ、1年だけ一緒に生きようか」
「それにしても、殺人鬼に『生きろ』なんて言われるとは思いもしなかったな」
ーー死ねとなら何度も言われて来たけれど。
包帯やガーゼで隠した頬の下の鱗を撫ぜつつ、少しだけ視線を彷徨わせる。
もう少し早く彼に出会っていたら、誰かに生を望まれる事を「嬉しい」と思えたのかもな、なんて考えながら。
ハジメ:「だって、オマエ殺してもオレが殺されるじゃん?穏やかな余生こそムリムリ、オレが退屈で死んじゃう」
ケラケラ、笑い声が部屋に響く。オレだけの一人分。
「せっかく生きんなら楽しもうぜ。なあ、相棒」
▼カンビ×ヨル
カンビ:九月、まだ残暑の厳しい時期だった。
ヨル
――
今のフォージと出会ったのは一年前。その時の暑さはどうだっただろう、覚えが薄い。
もうそろそろ彼女は寿命、限界だ。その前に好きなことをさせなさいと、ヤードから休みが与えられた。
「ヨル、君のための休みだよ。何がしたい?」
起きてきた彼女に尋ねる。
……
答えの予想はついているけれど。
ヨル:むくりと起きて、いつものように主(あるじ)さまの元へととことこと歩いていく。
すると、あるじさまは言ったのです。
『何がしたい?』と
だからヨルは言いました。
「主さまのお好きなことでかまいません」
「ヨルはそれでよいのです」
カンビ:ああ、ほら、予想通り。この一年ずっとこう。フォージがブリンガーに従順なのは珍しいことじゃない。不満に思ったことはない。
……
今までは。
「ヨル、こちらにおいで」
手招いて、ひとつふたつ、言葉を交わす。二人だけの合図だ。ヨルは光となって僕に吸い込まれ、目の前から消えた。
代わりに、ホルスターに下げた銃が重くなる。確認すると実弾が五つ装填されていた。
大事にしてきたヨルの欠片たち。フラグメント・バレット。
深呼吸をして、壁に銃口を向ける。
引き金を二回引くと、破裂音と共に、ふたつの穴が開いた。
「
……
ヨル。僕は済んだ。さあ、君の番だ。したいことはある?」
変身を解いて、彼女と目線を合わせる。
ヨル:主様がフラグメントバレットを使った。
どうしてそんなことを?なんで先程の私には言えなくて、戻った時には私のバレットは残り3つになっていた。
大切な、大切なフラグメントバレットなのに、どうして?私の残った時間は限られている。だけど、カンビは何を思ってこんなことをしたのか?今まで側にいた私だけれど、それがわからなくて私は思わず聞いてしまった。
「なんで、どうして
……
?」
「カンビ
……
?」
どうして?と問いただすように彼の両腕をきゅっと掴んでしまう。
「あれ
……
?」
でも、何故私はこんな事をしているのだろう?こんな思考をしているのだろうか?
先程まで掴んでいた手を離して、私は自分の両手を見つめる。
そこには、その行為には、私の意志が存在した。
「なにが、したい
……
?私、私は
……
」
そう言ってカンビを見つめたまま、どう答えていいかわからず言葉は途切れてしまった。
カンビ:
……
成功だ。
『フラグメント・バレットを消費させるとフォージの性格が変わる。生前の記憶が戻ることもある』
そんな話は捜査官の間じゃ有名だし、僕も前のフォージで覚えがある。
今までは無駄に消費させる気はなかった。僕がヤードに入った目的にフォージは関係ないから。なるべく綺麗なまま送ってあげようと思っていたんだ。
「好きなことしていいって君が言ったから」
ヨルの両手を包む。僕の手の方が冷たいのは緊張からだろうか。
「ヨルの昔の話が聞きたいんだ。
……
ねぇ、昔、僕たちって会ったことないかな?」
なるべく穏やかに言葉を返す。そんな記憶は僕にはないし、きっとヨルにだってない。だけど、これにそっくりの顔を見たことがあるんじゃないか。
――
僕にそっくりの母を、ヨルが殺している可能性がある。
それを聞き出したかった。
ヨル:「だからって、こんな
……
」
彼に握られた手が冷たい。
なんでこんなに冷たいんだろう?彼の目も今何を考えているのかわからない。だからだろうか?私は少しだけ彼が怖くなった。
だけどその手を振り解けなくて、そのまま繋いだままでいてしまう。
そして、以前に会ったことがあるか聞いてくる彼に私は首を傾げる。
「い、いいえ
……
わからない、記憶といったって私が貴方のフォージになってからの記憶しか
……
」
どうして、そんなことを聞いてくるの?
カンビ、貴方は何を考えているの?
カンビ:「そう
……
じゃあ、もうひとつ失くそう」
震えを抑えようと指に力を込めた。大事な相棒だった彼女をなんでこんなに傷付けているんだろう。
でも、けれど、これだって演技かもしれないじゃないか。こんな弱々しい存在なわけない。ヨルは世界を滅ぼしかねないと危険視されていたんだ。母がその付近で最後に目撃されていたって情報もやっと掴んだ。
今すぐ殺すんじゃなくて、真実を喋らせてから殺す。そう決めたじゃないか。
ヨルの返事を聞く前にまた変身し、銃弾をひとつ撃つ。
「フォージになる前のこと、何か思い出した?」
戻って顔を合わせる。これで思い出さなかったら
……
僕の思い違いか?嫌な可能性に、眉間へと皺が寄った。
ヨル:「わからない、わからない
……
!!」
「あるのはこの世界が憎いということだけ、私が世界を、人間を呪っていたという事
……
!」
ああ、思い出した。私はこの世界を心の底から呪っていた。そして人間が嫌いで、世界も女神も全部いなくなってしまえば、苦しんで死んでしまえばいいと思っていた。
「なんで?どうして??私にこんな気持ちを思い出させるの??」
ああ、世界が憎い憎い憎い憎い憎い!!!!
でも、どうしようもないほどこの一年を過ごしてきた記憶に打ちのめされる。
愛おしい。
カンビと過ごしたこの時間は『人形』であった私でも、穏やかで幸せな時間だと思った。
なんで私は世界を憎んでいるのだろう?どうして私は仲間やカンビと過ごしてきた世界が愛おしいんだろう?
「カンビなんて、嫌いよ
……
」
気付くと私は泣いていた。
どうしようもなく、ただ泣くしかできなかった。
カンビ:彼女の荒れ狂う激情に驚き、黙り込んでしまう。人形のようだったヨルの裏側にこんなものを抱え込んでいたなんて。
僕が呼び起こしてしまった。忘れたままだったら、穏やかに死んでいけたかもしれないのに。
「
……
うん、嫌っていいよ。何と言われようが思い出してもらう。変わらないから」
僕は謝らない。そんなこと、僕が言うことじゃない。何を犠牲にしてもいいって決めたんだ。
ヨルの鳴き声に胸を痛めながら、ごめんを口にしないよう顔に力を込めていた。
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