enoki181
2022-08-26 20:59:30
11732文字
Public リプレイ
 

【ストリテラ】ルートイレヴンは眠らない(夕星×上原)【リプレイ】

俳優:成海さん、エノキ


▼ドリームランドにて
 ドリームランドの入り口では、写真に映っていた少女が待っていました。
 ふたりの姿を見つけると、「あなたたちが、パパの言っていた秘書さんですか……?」と、おずおずと問うてきます。
 どうやら依頼人たる彼は、ふたりの秘書が荷物を届けてくれると伝えていたようです。

夕星晋 : アタッシュケースの中身は水濡れもなく無事だった。
ぬいぐるみのクマがきゅっと潰れて悲しそうな顔をしている以外は。

「ええ。こちらがお父様からの贈り物ですよ」

少女は大事そうにぬいぐるみを抱える。
秘密も知らずに。

もともと、クマの耳にはメモリーカードが取り付けられていた。
中身は知らないが、よくないものだろうとはピンとくる。追手の数を考えると、まあ。
それは今、背中の切れ端から体内に埋め込んである。元の場所からは少しだけ見つけにくい所に変えた。

いつか彼女が気付く時はくるのだろうか。
父親の遺していったものに何を思うのだろうか。

「何か不手際があればこちらまでご連絡ください。対応させていただきますので」

この後も使い続けるだろう連絡先を渡しておく。

上原珠天 : その光景を何度か瞬きをして見る。

……え?

少女は自分たちに頭を下げて、恐らく母のいるところに戻って行った。
残されたのはずぶ濡れの男二人。

……珍しいですね? アフターケア保証なんて」

夕星晋 : 「壮大なトラブルに見舞われたんで、なぁ」

お前のせいで、って空気を出して笑顔。

上原珠天 : 「ああ……すみません…………

夕星晋 : 「俺はいいんだけど」

愉快な気分で、ぎゅっとシャツの水気を絞る。
最後以外の追手はあのメモリーカードを狙いにきたんだろうさ。けれど、何も知らないならそのままでいい。

あの少女も、知らないままで居続けるなら、それで。
もし知ったとして、俺を頼るのだろうか。何を頼むのだろうか。
復讐か。それとも、自分の手で復讐するための手助けか。
何時になるかわからないそれに、そっと笑みを深めて。

夕星晋 : さて。
もう一人の部下に連絡させたうちの実家から、そろそろ代わりの車がやってくるだろうか。

「あ、車種の希望とか伝えときゃよかった?防弾は入ってると思うんだけどなぁ」

上原珠天 : 「え……もう新しい車来たんですか」

流石だなあと感心する。
希望だなんて恐れ多い。乗ることができるならそれで全然構わない。
……さて、次の仕事だ。
今度も失敗は絶対に許されない。
それが終わったら……職探しだなあ。

「あ」

そういえば、と思い出す。

「支部長、橋の外に突っ込むとき何か言ってましたよね……?」

全くそれどころではなくて何を言われたのか理解することができなかった。
大事なことだったらまずい。聞いておかなければ。

夕星晋 : 「へぇ、それ?」

口の端を吊り上げる。
聞こえなかったならそのままでいればいいのに。
“好奇心は猫をも殺す”という言葉を知っているのだろうか。

「今言ったら、お前がアクセル踏む足もハンドル切る手も、ぶれそうなんだよな」

知り合いに殺されかけた時より、俺の告白なんかで普通でいられなくなってくれよ。
そういう、俺の希望でしかない。

ま、恐らくそんなことはないだろう。
先ほど橋から飛び落ちて死にかけたのに、もう車のハンドルを握ろうとしているのだ。
妹を助けるためとはいえ、普通じゃないだろう。

「無事帰れたら教えてやるよ」

夕星晋 : 「それとさ。もう支部長じゃないんだわ」

上原珠天 : 「は、はあ……そうですか」

どうやら急ぎの言葉ではなかったらしい。
それならまあ、大丈夫なのかな……

「支部長じゃない、そうでした」

つまるところ呼び方を変えろと言うことだ。支部長で馴染んでしまっているから今後も間違えてしまいそうだが……

「えーとじゃあ夕星さん、よろしくお願いします」

夕星晋 : 「ん。いくか」

この先のことはわからない、何も決めていないが。
こいつが誰かに殺されそうな危険のある場所にいくなら、着いていくしかないだろう。
俺の知らない所で死なれるなんて、一番寝覚めが悪い。

車が一台やってくる。
あの部下が運転しながら、窓を開けて手を振っている。
「しぶちょー!うえはらさーん!」と大きな声を出しながら。

「うるせぇ、デカい声だしてんなよ」

ヤレヤレと眉を顰めながら、上原と二人で歩き出す。
夜が終わり、朝を迎えた世界の中を。