【シスライ】願わくば好き思い出が増えますように

シスルとライオスで悪食王と黄金郷の守護から解放された魔術師のお話。
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「シスルがいなくなった?」

長引きそうだった謁見が思ったより早く終わり一段落したライオスのもとにヤアドが焦燥感に彩られた面持ちで扉を開け現れた。縺れた足がバランスを崩させ床に突っ伏すも、ヤアドは構わず昼食を部屋に運んだ時の様子を口早に語る。
開け放たれた窓から消えていく銀糸の髪と褐色の影。反射的に駆け寄り窓の外を見下ろせば、苦しそうに歪められたアザミ色の目と目が合うも、すぐに姿を消してしまったそうだ。
「なるほど、俺たちも手分けして探そう。人手は多いに越したことはない」
玉座隣で補佐していたカブルーとアイコンタクトを交わした後、嘗て魔物だった頃に脱ぎ捨てた抜け殻のローブを翻しライオスが腰を上げる。
そして、以前よりシスルと関係のある黄金郷の人々が率先して彼の捜索がはじまった。
城内は誰も彼もシスルの名前を呼び探す声に溢れ、純粋に心配する様子を横目で見つつライオスも小柄なエルフの姿を探した。
「彼は黄金郷とそこに住まう者たちを護るため迷宮の主でいた。その国と民を捨て何処かへ行ってしまったとは考えにくい。そもそも城下町に出るにもそれなりにいる人目を避けるのは困難だ。ならば、まだ城の敷地内にいるはず」
思案に耽りひとり歩くライオスの足音が固い石畳から柔らかな土を踏み締める音に変わる。木洩れ日が揺らめく水溜りの上を歩き、木々のざわめきに耳をすませた。
「彼は長生きだが些か精神年齢が低いように思える。それは単純に外見の判断から来るものなのか分からない。ただマルシルたちと比べ幼く見えた。そして、ヤアドが言っていた彼の反応を考えれば──」
まだ己が幼かった日々を頭蓋の奥で思い出す。
父親に叱られ子供らしい捨て台詞を吐き家を飛び出した。何も考えず飛び出したがため行く当てもなく、ただただ意地になり帰りたくない気持ちばかり膨れ上がる。
膝を抱え泣きべそを掻き、それでも心配して探しに来てくれるのを期待して然程遠くない場所に身を顰める。
「たとえば、身を隠すのに丁度いい茂みの中とか」
がさり。ライオスの手が茂みを掻き分けた刹那、おっかなびっくり身を縮こませたシスルが其処にいた。
「見つけた」
裏表も何もない。本当に見つけたと明るい表情を浮かべるライオスにシスルは身構えた。