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夜明 奈央
2024-05-06 08:34:22
9574文字
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中太小説
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君の寝顔が見たい(全年齢版)
中太宅のベッドが壊れて一緒に寝たりベッドを買ったりする話
後日談
*全年齢程度の行為および事後描写があり
R-18版
2024年3月17日初出
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一緒に寝るようになって2週間程が経過したある夜のことだった。珍しく夜が明ける前に目が覚めた。最初は自然に目が覚めたかと思ったが、すぐに突き刺さるような視線を感じた。敵意はないが、じっくりと観察されているようだ。太宰だった。一緒に寝るようになってから毎朝の恒例となっていたが、辺りはまだ、真っ暗だった。
「今、何時だ?」
「えっと
……
4時過ぎだね」
太宰は枕元の時計にさっと目をやって答えた。その声は常と変わらずはっきりとしていて、俺のような寝起きの気配は感じられなかった。そこでようやく、太宰がずっと起きていた可能性に気がついた。
太宰は日頃からあまりよく眠れないようだった。本人はもうほとんど諦めていて、“眠るため”に何かしようとはしない。何もしなくても眠れる時もあるので、適当に夜を過ごして眠れるのを待つのだと言っていた。本を読んだり、酒を飲んだり、無意味に外を彷徨いたり。
そうしてようやく寝られても、些細なことですぐに目を覚ます。俺の帰宅が遅くなった夜、そっと玄関の扉を開錠する音だけで容易に目を覚ましてしまっていたことを、忘れたつもりはなかった。
それが最近はどうだ。俺と一緒に寝るようになってから、いつだって俺と同じタイミングでベッドに入っていた。その後、ナイトランプを付けたりベッドから抜け出したりということはしていないようだった。絶対にしていないとまではいえないが、少なくとも俺が起こされるようなことはなかった。まさか眠れないままずっと俺に抱きしめられていたのだろうか。
気づくのがずいぶんと遅くなってしまった。俺としたことが、自分で思っているよりもずっと浮かれていたのかもしれない。
「ずっと起きてたのか?」
「そんな夜もあるよ」
「昨日までも、毎日?」
「悪あがきしたって無駄だからね」
どうせいつかはバレるとわかっていたのだろう。変に誤魔化そうとはしなかった。太宰の目元に手を伸ばす。目の下をゆっくりとなぞるが、そこに隈があるかはよくわからなかった。暗闇であるし、元より寝不足でもあまり顔に出ない奴だ。だからこそ、今まで気づかなかったのだが。
「俺と、一緒だからか
……
?」
「布団が変わったら寝られないのは、いつものことだよ」
質問の答えははぐらかされてしまった。けれど強く文句を言わない理由はわかった。太宰にとってはここで寝ても新しいソファやベッドで寝ても、寝られないのは同じなのだ。だから早く買えと急かすことをしなかった。
最近は毎日この家で寝ていたから、社員寮に戻ったところで馴染みがあるとは言えないだろう。冬は隙間風が酷いと言っていたから、どうせ寝られないのなら社員寮よりはこちらの方がマシなのかもしれない。
今までのソファベッドでは、ちゃんと寝ていたことを知っている。毎日ぐっすりとまではいかなかったかもしれないが、朝起きてリビングに行ってもまだ寝息を立てていることは何度もあった。そして俺がどんなに物音を立てないように気を遣っても、太宰はいつだってすぐに目を覚ます。
いくらこの布団に慣れたところで、そんな太宰がこんなにも近くに人の気配があって、寝られるとはとても思えなかった。
「ベッド、買うか。手前用に、新しいやつ。あと手前の部屋も作ろう」
「どうしたの? 急に」
「俺が一緒じゃねぇ方が、よく寝られるだろ」
「そうは言ってないけど」
「一緒に住んでるんだし、部屋ぐらいあった方がいいだろ」
そろそろけじめをつけるべきではないかとは思っていた。俺たちの会話といえば軽口ばかりで、真面目な話をずっと避けていた。ずっとそうやってコミュニケーションを取ってきたから、今更そんな話をするのは小っ恥ずかしくて、ずっと先延ばしにし続けていた。明確に言葉にすることで、断られるのが怖かったというのもある。こんなきっかけがなければ、これからだって先延ばしにしていただろう。“一緒に住んでいる”ということについて、同意を得ずに既成事実としたことぐらいは大目に見てほしい。
太宰は困ったような嬉しいような、曖昧な笑みを浮かべた。肯定も賛成もしなかったけれど、否定も反対もなかった。一緒に寝たいとも、ソファでいいとも、部屋はいらないとも。
太宰が他人の気配に敏いことは知っていた。本当ならもっと早くに、専用の部屋を用意してやるべきだったのだ。
我ながらそこからの行動は早かった。翌日には部下に指示をして、太宰用のベッドと、ついでにソファも手配した。太宰に希望を聞いてもまともな答えは得られなかったので、すぐに納品してもらえる中で最も高級な物を選んだ。値段と品質が必ずしも正比例しているとは限らないが、それなりの相関があることは間違いない。
物置になっていた部屋には業者を呼んで、整理と掃除をさせた。大した物もなかったからほとんどは処分して、一部の捨てられない物だけを他の場所へ移動させた。
3日後にはそこは太宰の部屋へと生まれ変わった。その気になれば、本当にすぐだったのだ。まだベッドと寝具しかないが、それ以外は徐々に使いやすいように変えていけばいい。
しばらく振りに、俺は1人のベッドで寝ることになった。まだ1ヶ月も経っていないというのに、1人のベッドはあまりに広くて心許ない。抱きしめられる太宰の身体がないと、手持ち無沙汰な気さえしてくる。
太宰だって、今日いきなりよく眠るということは難しいだろう。新しいベッドに新しい布団、部屋まで新しいのだ。慣れるのにどのくらいかかるのかは知らないが、1日でも早く、きちんと眠れる日が来るといい。
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