2022-12-07 20:19:51
27936文字
Public 小説(pixiv公開済)
 

異世界であなたとお茶を

公式オフラインイベントにて。
オフで会うことに惑い悩むプレイヤーと、その相方と。世界の選択と、お茶を淹れるということ。

オンラインゲーム「ダンスマカブル」のプレイヤー(オリジナルキャラ・名前無し)視点での仮想メタなエピソードです。
ネットゲーム用語・スラング、ネットミームなどを特に解説なく使用しています。ご注意ください。
シリーズ化していますが、各話は独立しておりますので、単品でも問題なくお読みいただけます。

FOCUS:エーテルネーア、ミゼリコルド、ロイエ
※ミゼリコルドが作中で「いじられキャラ」認定されています。気になる方は閲覧をご遠慮ください。
※一番くじブックレットの掲載内容・SSのネタバレを含みます。

ダンマカWEBオンリーから四ヶ月……どんだけって感じですが、書きたいものを書けるだけ、だらだらと詰め込みました。シリーズで一番の捏造妄想っぷりとなっておりますが、おつきあいいただける方はどうぞよろしくです。


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 鈍色に沈む室内で、ふたりだけの会話が長く、長く続いていく。アークを想い、ナーヴを憂い、世の有り様はより佳くあれと望むふたりの対話。
 どこまでも交わることはなかった。

 組織ではなく人間として、主従ではなく友人として、理解ではなく共感を得たいと願った言葉は、薄暗がりの部屋にそのまま溶け落ちていく。
 彼は知らない。彼らの罪が似て非なるものだと。
 彼は気づかない。零れた茶はもとには戻らない。

 何も知らぬまま、彼は、手を差し出した。伸ばされた指先は、握りかえされることはなく――かわり、薄刃がひらめく。迷うことなく、ひと突きで命を奪える場所へ。
 刹那、金の光が走った。鋭い金属音が響く。
 潜んでいた女神像の背後から飛び出し、ふたりのあいだに身を滑り込ませたロイエの左腕、冴えて硬い金属の義手が、ミゼリコルドの手から刃を無造作に叩き落とす。床に落ちて鈍く光る刃をそのまま長靴で踏みつけ、流れるような動作で銃を抜き、ミゼリコルドの眉間へと押し当てた。ユニティオーダーの隊長にのみ、聖堂内でも携行の許される、小さな儀礼拳銃だ。
 背に庇ったエーテルネーアの名を呼び、身の無事を確かめる。低めた吐息のような、けれどはっきりとしたいらえを聞いて、ロイエは小さく息をついた。そのまま、対峙するミゼリコルドを強く見据える。
 乱れた前髪の下、青い瞳は憎悪に滾っていた。だが、憎しみよりも濃く満ちるのは、苦いものを舐めたような、強すぎる陽に灼かれたような、そんな理不尽への憤りの色だった。
 まるで、手酷く傷つけられた幼い少年のように。
 しかし情に引かれてはならない。銃口を額に突きつけ、片時も目は離さぬまま、背後に声をかけて処遇を尋ねる。
 エーテルネーアが、一歩、前へと出た。
 押しとどめようとするロイエの腕にそっと触れた手は、幽かに震えていた。装身具の細い鎖が、ロイエの義手に落ちかかり、あえかな音を立てる。
 小さくかぶりを振り、おとがいを上げる。さきよりはしっかりとした足取りで、踵を床に打ちつけ、さらにもう一歩進んだ。
 憎しみで射る瞳を受け止め、目を逸らさず、彼は言った。

 零れた茶はもとには戻らない。
 それでも、また淹れて、また注ぐ。
 何度零れても、何度でももう一度、やりなおす。

 あの日のお茶会のように、穏やかな時間も、きっと。いつかは。

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