2022-12-07 20:19:51
27936文字
Public 小説(pixiv公開済)
 

異世界であなたとお茶を

公式オフラインイベントにて。
オフで会うことに惑い悩むプレイヤーと、その相方と。世界の選択と、お茶を淹れるということ。

オンラインゲーム「ダンスマカブル」のプレイヤー(オリジナルキャラ・名前無し)視点での仮想メタなエピソードです。
ネットゲーム用語・スラング、ネットミームなどを特に解説なく使用しています。ご注意ください。
シリーズ化していますが、各話は独立しておりますので、単品でも問題なくお読みいただけます。

FOCUS:エーテルネーア、ミゼリコルド、ロイエ
※ミゼリコルドが作中で「いじられキャラ」認定されています。気になる方は閲覧をご遠慮ください。
※一番くじブックレットの掲載内容・SSのネタバレを含みます。

ダンマカWEBオンリーから四ヶ月……どんだけって感じですが、書きたいものを書けるだけ、だらだらと詰め込みました。シリーズで一番の捏造妄想っぷりとなっておりますが、おつきあいいただける方はどうぞよろしくです。


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 灰色の街並みが、朝の光を享けて、ゆるやかに目を覚ます。
 小さな路地にまであまねく届く陽射しは、アークの繁栄の象徴であり、天子のもたらす恩寵の最たるものでもあった。
 聖堂のテラスから街の目覚めを見晴るかし、ミゼリコルドは嘆息した。ゆっくりと振り返って、そこに立つユニティオーダーの隊長を睨めつける。
 尊ぶべきは秩序であり、秩序からもたらされる美である。その真理について説いてやったというのに、ユニティオーダーの隊長ことロイエは、ときおり胃をさすりながら要領を得ない生返事をするのみだった。無骨な軍人には、なかなか理解の及ばないところなのだろう。詮無いことだが、彼はアークを造る神経節のひとつだ。脳が命ずるところを忠実に果たすよう、きっちりと躾てやるべき頃合いかもしれない。
 ミゼリコルドの思案するところなど知らぬまま、定例の報告を終えたロイエは長靴の踵を返し、そそくさと立ち去ろうとする。そこへ折良く――見かたによっては折悪しく、かもしれない――茶器を手にしたエーテルネーアが通りかかった。
 ロイエの名を呼ぶ。それから、誘いの言葉をかけた。
 ひとすじの邪気もなく、ただ、ひと時をともにし親交を深めたいという気持ちだけがあふれた、実直な声音で語りかける。
 あなたとお茶を、と。
 細い指で茶器を掲げ持つ。手の甲に施された聖印が、僅かに引き攣れた。
 固辞はゆるされない。ゆるされるはずもない。

 そうして、ふわふわと気の抜けた、と同時に張りつめて緊張感の漂う、奇妙なお茶会が始まった。
 危うい雰囲気をはらみつつ、表立ったところは和やかに、他愛のない会話が、朝の爽やかな空気に茶の湯気を溶け込ませながら、どこまでも続く。
 貼り付けた笑みを崩さぬようにぎりぎり保っているものの、ロイエの顔色はすこぶる悪い。一方のミゼリコルドは、すべらかにかろやかに舌を動かしており、如何にも絶好調だ。笑顔の裏側でもつれ絡んだ糸のようなふたりのやりとりを、エーテルネーアが、茫洋とした笑みを浮かべて見守っている。透きとおって穏やかな瞳からは、内心はうかがい知れない。
 忌憚なく話すようにと所望され、むしろ追い詰められた顔をするロイエに、気づいているのかいないのか。
 エーテルネーアの言葉に追随し、愉しげにロイエを追い詰めるミゼリコルドを、察せているのかいないのか。
 ナーヴ教会のトップの思うところは、何もはかれない。何者もはかり知れない。

 破れそうな紙一重のところ、エーテルネーアの善意の圧とミゼリコルドの邪念の欲、そしてロイエの忍耐により保たれるやりとりは、果てなく続くかと思われたが。
 ミゼリコルドがついと立ち上がり、所用につきと断りを入れ、その場を離れようとした。

 場は暗転する。

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