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夜明 奈央
2024-05-05 13:16:10
7963文字
Public
中太小説
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一歩ずつ
ポトマ時代はただの相棒だった中太が付き合い始め、戸惑いつつ少しずつ距離を縮めていく連作短編
※pixiv掲載時より一部改稿の上、全年齢にしています。
2022年8月15日初出 2024年5月5日改稿
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抱きしめられたい
扉の開閉音が聞こえ、そちらへと意識を向けると、下着姿の中也が水の入ったペットボトルを持って入ってきた。それを枕元に置くと、寝台の端に腰掛けて太宰の顔を覗き込む。
「水飲むだろ?」
喉は乾いていたのでこくりと肯くと、太宰が起き上がるのを介助して、ペットボトルの蓋を開けてそっと渡してくれた。受け取ってそれをゆっくりと飲み下す。乾いた身体に染み渡るようだった。中也はそれを隣で急かすことなく見守っている。3分の1程残して返すと、心得たとばかりに受け取って脇に避ける。
「シャワーどうする?」
「もう少し休んでからにする」
「なら俺先に浴びてくるわ」
そう言うと太宰の米神に優しくキスを落として、先程とは逆に横になるのを手伝う。太宰は部屋から出て行く様を黙って見送り、扉が閉まって足音が遠くへと消えたのを確認してから、大きなため息を吐き出した。
中也は普段から世話焼きで面倒見が良い方であるが、事後はそれに輪をかけて優しい。優しいのだが、太宰が求めているものとは少し違っていて、それが目下の悩みである。まだふわふわと定まらない意識をどうにか正常に戻そうと、意識して呼吸を深くする。
行為が終わると、中也はいつもてきぱきと太宰の身体についた汗やなんかの体液を拭き、甲斐甲斐しく水を飲ませ、シャワーに行く程の余裕もないようであれば蒸しタオルを持ってきてくれたりする。それがダメだとは言わないが、太宰としてはできればもう少し余韻を楽しんでほしい。
と、いうか。相手はとっくに正気に戻っているのに、自分はともすれば熱がぶり返しそうなのを必死で堪えている状況が、ただただ居心地が悪い。射精すると冷静になるというのは同じ男として理解できるのだが、後ろでイくとそうはいかない。たぶん、中也は受け身の経験がないから知らないのだろうが。男を抱こうとするならちょっとぐらい勉強しなよ、と思わざるを得ない。
なんとか真面に動けるようになってきた頃に中也が戻ってきて、入れ違いで太宰がシャワーに向かう。きっとこの間にシーツも替えてくれる。あんなどろどろの寝台で眠りたくはないのでそれは大変にありがたいのであるが、なんだかなぁ、と思うのだった。
「
……
っ、ぁっ、私、もう」
「ん、俺も」
繋いだ手を握りしめ、中也が太宰の中でびくびくと震えるのを感じる。はあはあとお互い荒い息を吐き出す。中也が啄むようなキスを落とすのでそれに応えていたが、やがて太宰の呼吸が落ち着いてきたのを見計らって離れていった。
いつものように、繋いだ手がすぐに離れていこうとするのが不満で、ぎゅうと力を込めた。すると「太宰?」と訝しむ声が聞こえて、ハッと我に返った。慌てて手を離そうとしたが、今度は中也が離してくれなかった。
じっと見つめられて、逃げるように目を閉じるとそこにそっとキスを落とされた。それから上に乗っていた中也が太宰の隣に身体を横たえ、引き寄せるようにして抱きしめられた。繋いだ手はそのままに、反対の手が背中をゆっくりと撫でている。それが心地良くて目の前の胸に擦り寄ると、くすくすと嬉しそうに笑う声が聞こえた。
釣られて目を開けると、予想したよりずっと穏やかな顔が目の前にあって、キスが降ってきた。ただ寄り添って、抱きしめ合うだけの優しい時間が流れていた。
「ねぇ」
すっかり落ち着いて、疲労感と心地良さに眠気が混じり始めた頃、太宰は身動ぎして声を上げた。
「私、本当はずっと、こういう時間を過ごしたかったよ」
中也は背中を撫でていた手で太宰の後頭部をぽんぽんと優しく叩き、「そうか」と言った。
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