日向前主将との再会に花宮もついてきた話

花宮真、日向順平、学園アリス、黒子のバスケ

あいつは天才だ。聞かされる前から知っていた。あいつは天才だ。そう吹聴することもした。あいつは天才だ。疑うべくもない、天才だ。そう、知っていたのだ。あいつは天才だと、いざ〈それ〉だと聞かされる側に回っては、動揺を知ることもしたのだけれど。「あいつは天才やから、な」

クロスオーバーです。複数の作品の世界観を融合しました。


  四

 思いのほか、味のする夕食になった。
 ひとりで親子丼を食べ始めた花宮は、ひとりでテレビ番組を見た。日向は何も言わなかった。それならば、後輩にも言うことはない。テレビの画面の向こう側で、ニュースキャスターは他県の火災を話し続けた。大盛りの親子丼は、あたかも大前提のように温かくてうまい。
「今晩は親子丼の予定だったんですか」
「それか明日の晩にと思って、そいつに言いつけたんだが」
 食卓に会話が生まれなかったわけでもない。
 花宮ににらまれて日向は、へえそうだったんだと、表情で語った。表情で語った後は、眉を寄せた。
「魚は何だったんだ」
「テメェが明日の朝に焼くんだよ」
「聞いてねえぞ」
「今聞いたな」
 花宮は、それで再び親子丼を口に運んだ。白米の上に、玉子とねぎが乗っている。
 アルバイトの話もした。ちょうど四日前にバイト先が決まったところだった。だから、まだ働いてはいないのだと、日向は苦笑する。そして、ちらりと花宮を見た。高校生たちは、いやまさかと思った。けれども、そのまさかである。
「花宮、さんも、一緒なんですか」
 花宮は素知らぬ顔でニュースを見ていた。
 高校生たちは、おもに二年前を振り返って、現在の日向と花宮を見て、絶句するよりほかにない。
 同じアルバイト、同じアパート、同じ食事、同じ大学、同じ部活動。そういえば高校生たちは花宮の学部を知らなかった。だが、ここまできたら逆に、違ったときこそ驚くことになるのだろう。——案の定、聞けば驚かない返答になったわけだが、今晩の高校生たちは、尋ねることなく食事を終えた。
 帰路につくべき時間だった。

 高校生たちは、お邪魔しましたと言って、玄関を出た。花宮には、ごちそうさまでしたと伝えた。花宮は振り向くことも見送ることもしなかった。日向は一緒に外に出て、駅まで歩くことにした。
「悪かったな」
 共用エントランスの外で、真っ先に日向が言った。
 後輩たちは首を横に振った。
「ごはん、おいしかったです」
「僕たちに言えることは、何もありませんから」
 ただ、聞いておきたいこともある。
「先輩方はご存じなんですか」
 日向は、うなずいた。
「俺から話した。木吉にもだ。——おまえらにも、会ったときにでも話すつもりだった。今日、俺の口から」
 とんだ告白になってしまった。悪かったと、日向はもう一度だけ言った。それから来た道を振り返った。視界に見慣れた風景が広がった。日向は、もう適当にだって駅まで歩ける。
 先輩と後輩は、バスケットボールについて当たり障りのない話をして、駅前で別れた。

「まさか、あんなことになっていたとは」
「僕も驚きました」
「うん、さすがに」
 高校生たちは駅に入って、口々に言った。とんだ再会になってしまった。
 遠出して、そこに卒業した先輩がいた。そのこと自体は素直に喜ばい。思わぬ再会だったが、進学先は都内である。こういうできごとは予想できた。だからこそ実家を出ていたことには驚きもしたのだけれど。まさか、さらなる驚きが彼らを襲うことなど、誰にも想像することはできなかった。
 まさか、あの因縁の相手と、あれほど生活を共有することになっていたとは。昨日今日に始まった食事風景ではあるまい。明日の朝、あのキッチンで先輩が魚を焼くのだろう。結局、彼の料理の腕前はわからなかった。しかし今晩の様子を思えば、あの花宮が背後に立って嫌みに監視する光景があったとしても、違和感を抱くには値しない。
 おそらくは、ひと月以上も続いていた。
 同じアルバイト、同じアパート、同じ食事、同じ大学、同じ部活動。バスケットボール部の、マネージャー。
「あの人、本当に辞めてたんだな」
 高校生は、別のことが気になって、声に出していた。
「あんなやつなのに、バスケやってる人間として聞くと、もったいない気がしちゃうんだな」
「あれでも木吉先輩と同格の選手でしたからね」
「なんで辞めたんだとは思わないけど、なんでマネやってんだ?」
「去年はバスケ部に入らなかったって話だったもんな」
「大学ではバスケ部に入ったのか」
「去年も入ってたけど、マネとしての入部だった、とか」
——去年から故障してる、とか?」