日向前主将との再会に花宮もついてきた話

花宮真、日向順平、学園アリス、黒子のバスケ

あいつは天才だ。聞かされる前から知っていた。あいつは天才だ。そう吹聴することもした。あいつは天才だ。疑うべくもない、天才だ。そう、知っていたのだ。あいつは天才だと、いざ〈それ〉だと聞かされる側に回っては、動揺を知ることもしたのだけれど。「あいつは天才やから、な」

クロスオーバーです。複数の作品の世界観を融合しました。


  三

 なりゆきで日向元主将先輩の家を訪ねたら、因縁だらけの花宮が帰ってきて、
「きちんと状況を説明してくれるんだろうな、順平くんよォ」
 元主将先輩を「順平」と呼んでいた。

「ご友人の方、ですか」
 高校生たちはものすんごい衝撃を受けて、ものすんごいことを尋ねていた。ものすんごい変な質問をした自覚はものすんごくあった。彼らは、日向と花宮の、ものすんごい因縁をものすんごく知っている。
 高校生だった日向には、強い信頼で結ばれるチームメイトがいた。日向と同学年の、すなわち現高校三年生たちにとっては先輩の。木吉鉄平という、実に頼もしい人物である。
 この木吉が一年生の夏のインターハイで負傷退場した。端的に言って、選手生命を脅かすような怪我だった。木吉はこの退場から一年以上にわたって療養、のち二年生の冬のウィンターカップのために復帰したものの、同じ怪我のために大会後は再び療養を余儀なくされた。それもアメリカで。木吉は、ついぞ復帰しないまま、日向は高校を卒業した。
 それで花宮が何かというと、——実は木吉の負傷には犯人がいる、という。
 ソファに二名、クッションに二名、ローテーブルを囲んで見守られて、日向はクッションにあぐらをかいた。やはり、首を横に振った。
「部屋が隣なんだよ」
 キッチンから小気味のよい調理音が聞こえてきて、日向は示唆するようにそこを見る。日向の部屋のキッチンに、我が物顔で立つ花宮がいる。
「こっちは五〇六号室。あっちは五〇五号室」
 はああ。高校生の深い息。そんなことがあったのかと、思うことはできても、納得することはできないけれど。いや当然ながら、この高校生たちを納得させる義務などは、日向はおろか花宮にもないのである。けれども日向は、もう少しだけ彼らの疑問に答えてくれた。
「親がな」
「ははあ」
「つながってた」
「ははあ」
 高校生もキッチンを見た。よく知っていて、よく知りもしない花宮だ。知識のうえでは、この高校生たちより一学年上で、すなわち日向と木吉とは同学年で、
「大学も一緒で」
 はああ。日向の深い息。
「バスケ部のマネージャーで」
 はああ。
 花宮が蛇口を開けた。水の音。日向が黙る。高校生も黙る。先輩の現状がますます不安になる。一方で、少し前に聞かされた、先輩の現在のチームメイトの名前を順に並べて、安心することもした。蛇口はすぐに閉じた。静かになった部屋で、日向も言った。
「心配すんな。うちは、霧崎第一みたいにはならないからさ」
 これは、かつての日向の言葉だが。木吉はバスケットボールに最も誠実な人間である。と、するならば。花宮はバスケットボールに最も不誠実な人間である。
——ところで、花宮が何作ってるかわかるか」
——どちらかと言うなら、和食、じゃあないでしょうか」
——なるほど、そうかもな?」
 さて花宮は、後に一人前の親子丼とともに五人の前に現れて、空いたクッションのひとつに、どかりと座った。