不破
2024-04-29 23:28:25
6471文字
Public 空戦
 

#19


 小さな呻き声。ぱたぱたと路を塗らした血の臭いに、唸るエンジンが吐き出した排ガスの臭いが入り交じる。後輪を空転させながら走り出した車に目を細めて銃を下ろし、フュゼは短く息を吐いた。

「ちょ、ちょっと! フュゼ! なにがどうなってるの!?」

 車の向こう側から響いてくるニオの言葉に舌打ちをしながらコルベットのドアを開く。
 おそらく、この女はなにも察知しなかったのだろう。とはいえ、それは自分も同じだ。空気感の中に違和感はあったが、刃の先端が自らの背に触れるまでは気の所為を疑う程度のものだった。余程優れた暗殺者か、気配を消し去る手段を持った何者かだろうが、咄嗟の反撃に対応出来ず血の臭いを残してしまっている時点で後者だろう。蹴り倒した際に顔を見たはずだが、走り出した車に乗り込んだ人物の顔を思い出すことが出来ない。

「狙いがてめえなら今頃くたばってたろうな」

「どういうこと!? 狙われたっていうの!?」

 慌てた様子のニオに呆れた調子で言いながら運転席へ乗り込むと、助手席に乗り込んできたニオが、わけがわからないと言いたげにドアを閉めながら言った。エンジンに火を入れながら舌打ちをし、ハンドルの奥のパドルシフトを操作してギアを1速に入れると、アクセルを踏み込んだ。