【失笑の歌と蒼い月】終章B

一ページ目必読
※Ibパロ



【終幕】


意識と視界がハッキリする。絵画を目の前にして、ヒロは立ち尽くしている。前後の記憶が妙に朧気で、自分の名前すら瞬間的に思い出せない。


……?」


────はて、自分は何をしていたのだったか。

気が付けば自分は、絵画を見つめていたらしい。周囲を見れば、そこは美術館の一室。近くに人は見当たらないが、笑い声や気配で館内に一人ぼっちというわけでないことが分かる。

作品の題は、〈最愛〉というらしい。幸福そうな青年の絵。現代的なパーカーを身に着けて大きく笑う、金色の髪を輝かせる彼。不思議なことに、眺めていると涙が出そうになってしまう。

絵画から離れて、ロビーに向かう。館内時計が視界に入り、集合予定時間まで残り僅かということを気付く。慌てて早めに歩きながら、ヒロはその場を離れる。“一人で館内を回っていた ”とはいえ、のんびりしすぎたようである。心の内で反省しながら、彼は美術館を出ていった。