01.白羽の矢を受け一矢報いる
白鐘直斗を救出し、ジュネス屋上でバンド演奏を披露し、勉強会を経て中間テストを打破する。
そんな特捜隊の面々を遠目に眺める
三琴の日々はというと、彼らとは相反して何一つの騒ぎも無く非常に穏やかなものだった。
最初のひとつについては言うまでもない。
バンド演奏は楽器など音楽の授業でしかやったことがなく自信も気概も皆無な自分がやることではないと、誘われた時丁重にお断りした。
勉強会は参加しようか迷ったものの、直斗が加入した今教える役の人手としての自分の必要性は薄れたように思うし
――そうでなくとも出来ることならりせは鳴上、完二は直斗についてもらいたかろう、ならば教える側の数を絞って少しでもその機会を多くもたせるべきだ
――そう考えるのは自然なことであると、
三琴は思ったのだ。
結果として夏休みが明けてからはイベントごとの悉くを辞退し、
三琴はゲームシステムになんら関わりのない、所謂モブである他の一般生徒と違いないくらい平穏に過ごしていた。
別段注意してこうなったわけではないのだが、まあ接触がない分には問題などないはずと思い、彼女は何も起きない日々にすっかり溶け込んでいた。
……だから、まさか中間テストの結果発表以外で自分の名前が廊下の掲示板に貼り出されることになるとは、夢にも思っていなかったのである。
「なんか私すんごいとばっちりだと思うんですけど」
「何言ってんだよ。平和島だって超有名人じゃん?」
「いや別に有名人を出す企画じゃないですからミスコンて」
「そうだよ、
三琴ちゃんの言う通り
――っつか、そんならあたしは関係ないじゃん!」
りせに声をかけられ屋上へと赴いた昼休み、やいのやいのとそれぞれ騒ぎ合う特捜隊のメンバー。その女子側に混じりつつ居た堪れない思いで全く尤もなツッコミを入れる。
「悪かったぁね関係なくて!」
――それに加勢してから一拍置いて叫ぶ千枝の声を耳に、どうしてこうなった、と
三琴は頬を掻き口端を引きつらせた。
(参ったな
…私服でつっ立ってりゃいいって話ならまだしも、水着審査の追加がなあ)
元より率先して大勢の人前に出ることなどない
三琴としては、壇上に立つというだけでも気が進まない話。ハードルが高いどころの騒ぎではないし、そもそも何故ナチュラルに自分が参加者へ含まれているのかと言いたいところである。
けれどそこを訴えたところで、皮肉なことに
三琴にはもうそれが愚痴にしかならないであろうことがわかっていた。
「私チキンですし、あんまり恥かきたくないんですよね
……しかも負けるとわかっている戦はちょっと」
「んなことねーって、絶対いい勝負になる
――……あーイヤ、ちげーな。
平和島大人しい方だし、こーいうのあんま好きじゃないだろうなってのもわかるけど
……本っ当にスマン、後で必ず埋め合わせすっから、この通り!」
苦々しく逃げるように嘆き紡いではみるが、肩を縮め手を合わせてこちらを拝む花村に参加を撤回させることは実際もはや不可能だ。
既にりせは積極的な様子だし、どんなに本意でなかろうと他の三人もここで押し切られる。結局は全員がきちんと参加するし、当日急遽実施される水着審査にだって(約一名やむなく辞退とはいえ一応は)各々律儀に対応するだろう。
――シナリオとしてはそう決定されているのだから。
「
…………その言葉、覚えておいてくださいよ」
なにせ
三琴にとっては此度のミスコンが本当に負ける戦とわかっている。
訳も分からず何故か唐突に巻き込まれてしまった今の彼女にできるせめてものことはといえば、戦が終わったあとの報酬について確約を取ることだけだった。
<了>
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