02.水面の下には何がある
病棟の廊下に並んだ椅子の一つに腰かけて、何処ともなく虚空を見つめる彼女は、ひどく辛そうな顔をしていた。
辺りを流れるひっそりと静かで冷たい空気は今の季節じゃ別段珍しくないものだけれど、皮肉にもこの場に似合いすぎている。
「君が一人でお見舞いに来るなんて思わなかったな」
「
……学校にいると、色々と面倒なので」
息が詰まるような耐え難い据わりの悪さをどうにかしたく言葉を紡いでみても、僕の胸の辺りに立ち籠めたもやは晴れない。当然
三琴の表情にも陰は差したまま。
君のせいじゃない。君は悪くない。
そう言いたくて言葉は今にも口から飛び出しそうだった。
けれどもそんな在り来たりのチープな台詞、言ったところで彼女の意識に届けられるより前にさっと霞んで消え失せてしまうような気がした。
辛気臭く淀んだ気配に尻込みして閉口した僕は、結局そうして自分の臆病さを一人噛み締めることしかできなかったのだ。
*
「よう、平和島」
「あ、
……花村先輩。こんにちは。
今日はお一人で?」
「おー、まあな。たまには俺も一人になりたい時が
……
……なんつって、ホントは悠のやつにも声かけたんだけどよ。ちっと忙しいみてーでさ」
「ああ、
……そうなんですか」
「菜々子ちゃん、早く良くなるといいんだけどな
……」
「
……ホント、ですよね」
「
……」
「
…………」
「そだ、ちっと占ってくれよ」
「、え」
「っと、わり、マズかったか?」
「あ、いや、そうではなくて」
「なくて?」
「
……その、ええと。いいんですか?良い結果になるとは限りませんよ」
「そりゃ、コエーけど
……先に聞いときゃ、『そんなもん、どうにかしてやる!』って気持ち
にもなれるだろ?むしろそんくらいドーンとデカい態度でいないとっつーかな」
「
……」
「変えられるんだ。どーせ決まってるモンなんだとかって、腐ってる場合じゃねえ」
「
……ふふ、すごいですね」
「な、なんだよ、そのミョーに生温かい視線。マジメに語っちゃった俺がちょっと恥ずかしくなってくんじゃねーか」
「いや、素直に感心する
……というか。良いことだなって思います。
……すごく。」
<了>
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