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無窓居室
2023-05-24 02:58:38
7146文字
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その他
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fkmtジャンル切れ端つめ合わせ
十数年前に書いていたらしいfkmt漫画の二次創作が発掘されました。
全て未完でもう構想も忘れてしまっており、穴だらけのままの見苦しい状態ですがせっかくなのでここで供養させて下さい。
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虚数世界
──もしかすると、零も何らかの事情で家を出ているのかも知れない。自分と同じように。
……
同じように。この自分の思考を涯は訝しんだ。これは願望ではないのか?零が自分と同種の人間であって欲しいというのは。馬鹿らしい。
整域
公園の花壇には散り残りの秋桜が萎えた茎に引っかかっていた。桜には少しも似ているように見えないこの花の和名を涯に教えたのは零だ。彼は常軌を逸して何事にも詳しい。
涯にとってはどうでも良いばかりの知識だった。一体、男が花の名前など書けて何になるだろう?しかし涯は一週間前この場所で、咲きそろった花を眺めながら彼の言った文字を憶えている。聞いたときには明日には忘れるだろうと思いながら、それは口にした時の零の表情や声の抑揚や、その時のとりとめのない会話と共に自分のそれなりに深いところに染み付いてしまった。
涯にとって零の存在はいつも、そういった不可解な、幾らか不本意で屈辱的な強制力をもって纏わりついてくる。
対号
学校があるので、二人が会うのはいつも夕方より遅くだった。ただし学校というのは涯の側の事情で、彼は零が昼間や休日に何をしているのか知らない。3、4歳上という事は高校に通っている年齢だが、行っていないと言われても納得はいく。
零が特に意図的に、自分を謎めかせようとしているとは思わない。部屋に誘われモデルルームのような2DKに通された事もある。しかし考えてみればそこが零の自宅であったという確証が有る訳ではない。ダイニングのテーブルには壮年の男女の写真があったが、それが零の家族だという断定もできない。涯はそれを問う性質ではない。零も自分からは話さない。要するに2人は普通に接している限り、ごく常識的な点ですら分かり合えない者同士だった。
(※中略)
──仲間を助ける──、それは涯にとっては考えられない無礼な事だった。年上に対する僅かな遠慮と、反抗心の伺える語調で涯は言った。
「それは、施すことになるんじゃないか。仲間なら対等であるべきじゃないのか」
「仲間ってのは一心同体さ。ならばその一人である俺の能力は
……
それによる利益は、全員で享受したって何も問題ない。だろ?」
大袈裟な言い方だけど、と照れたように零は言う。冗談めかした口調はわざとだろうか。理屈ではなくその信条に圧されて涯は黙った。零は特に気を悪くした様子もなくペンを持ち直す、涯が半ば本気で憤って何の答えを求めたのかには気付かない、それは涯にすら分からない。
「あんたは、昔から'そう'なのか?それとも、何らかの努力や意図でそうなったのか?」
「え、何だよ急に
……
ちょっとしたコツさ、こんなの」
恐らくパズルの解法を問われたと思っているのだろう。零は肩を竦めて無邪気に笑った。
「あんたは、仲間のためなら死ぬんだろうな」
不穏な言葉にも、零の瞳は明るさを損なわない。
「そうならないように全力を尽くすけど」
明らかな肯定が涯に一瞬だけ、多感で傷つき易い想いを抱かせた。不似合いな感情に涯は軽く狼狽える。
仲間達がいかに不甲斐なく、浅薄で、もし彼を裏切り悲しませたとしても零は彼らのために命を懸ける。あるいは仲間でなくとも。自身が怒り、軽蔑し、唾棄する者達のためにすら零は死ぬのだろう。
涯にとっては余りに遠い考えだった。遠すぎて何も言えない。
ただ彼に少しも近付かないまま、彼によって一時でも弱くなってしまう自分を疎ましいと思った。
2023/05/24(再掲日)
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