2023-04-26 19:58:45
4288文字
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或る画家の秘密

蜜柑さん(@mikan02171)のツイートから


ある、魔法族の画家がいた。
ひとところに留まらない人だったが、それなりにパトロンや買い手には恵まれた、そんな画家がいた。

――ところで私はミュシャが好きです。


「あら、つまらないわね」

令嬢の言葉に無言を返す。今の私に言葉は求められていない。
絵に描かれた少年は、魔法をかけるなり杖を取り出し、目の代わりを得てふらふらと歩き去ってしまった。いや、行く宛はないはずなので絵の奥のどこかしらへ隠れただけなのだとは思うが。ともかく、取り残された女たちは令嬢と同じような顔で大変つまらなさそうにしている。
安堵のほかに湧き上がってきた感情が、ある種の優越感だと気付くのは簡単だった。人なんて、男なんてケダモノのようなものだと決め付けて、品のない週刊誌のような景色を見たがった挙句望んだものが見られないなんて、大変素晴らしい。現実は単純に複雑で、意味も理由もなくただそうあるだけ。偏見に塗れて世界の全てを見た気になっているだけの人間は滑稽で堪らない。最も、そういう人たちの見たい絵面を捏ねては金にするのも我々であるが。

「まあ、いいわ。案外不能なのだったりして。明日からはポートレートをお描きになるのでしょう?折角紹介したのだからちゃんとこなして頂戴ね」

お世辞にも、可愛いと言うには嫌味が強い笑みのまま依頼主が部屋を出る。合わせて退出し、やっと肩の荷が下ろせた気分だった。見たいものが見られなかったから減額とかはないらしい。
明日からは、ご令嬢の伝手で紹介された若手ながらに名を上げてきた画家、というやや誇張された釣り書き相応に真っ当な仕事ができるというわけだ。