【サリ東】サリ東小説詰め合わせ×4

サリーさんと東雲さんのお話詰め合わせセット。ねつ造ご都合主義満載。

『個数が多い方が良かれと思い』




出勤前の隙間時間に大家さんを探せば、彼女も俺を探していたようで双方姿を確認するなり歩み寄った。
「ほい、ヴァレンタインのやつ」
「ざっす」
黄色のリボンを巻かれ透明なフィルムに包まれたチョコレートマフィンが手のひらの上に乗る。一目見て分かる市販のものとは違う手作り感。どちらが勝り劣るも無いが、やはり手作りされたものは特別な気持ちになる。
「今年はツヅミと一緒に作ったんだぜ」
「──キッチン大丈夫デしたか」
「おう! ハンドミキサー回転してる時に上に上げちまって中身豪快に飛び散らさせたくらいだな」
カラカラ笑う大家さんを見てから手のひらに乗せられたマフィンを見遣る。見える見えるぞ、慌てふためく大家さんと絶叫する管理人さんの姿がはっきり見える。部屋中に飛び散った残骸を一瞥後、管理人さんの鋭い眼光に大家さんが一瞬たじろぐも、顔を見合わせるなりプッと笑いだす微笑ましい光景が見えた、気がした。
「で、くれや」
漂っていた意識を戻して、催促する大家さんに手に提げていた紙袋から目当てのものを取り出し乗せる。
「いつもお世話にナっておリます」
ザガっと大家さんの手に乗せた徳用チョコ(300g)。アルファベットが描かれた四角い小さなチョコは皆個包装なのでお茶請けやちょっと小腹を満たすのに丁度いい。
っと、大家さん以外の方々にも渡していかないと出勤時間になってしまう。直接手渡しで回っていかないと。
「おい」
踵を返して他の人たちを探しに行く俺を呼び止めた大家さんは顔を思いっきり顰めていた。
「まさか、他の連中もコレじゃねえよな」
「コレ大家さンだけで、他の方々はコッチ」
大きな紙袋から取っ手付きの小さな紙袋をひとつ掴んで見せたら大家さんの眉間に深い渓谷が刻み込まれる。
何か変な事をしただろうか。嗚呼、そうか。
「渡し損ねたのがアリました」
刹那、大家さんの夜明けを告げる瞳が期待に満ち、すぐさま光が消えていった。
「コレ、ウチのスーパーの安売りチラシ。売り上げ貢献お願いしマす」
徳用チョコの袋が隠れる形でチラシを被せた。その時の大家さんの何か言いたくて言い出せない唸る姿に小首を傾げた。欲しいものが無かったのだろうか。だとしたら唸るのも分かる。
黒髪と金髪の境目を眺めていたら一人納得したのか大家さんが苦笑する。
「お前らしいよ、ほんと」
「ざっす。あ、今管理人サん何処にいるカ知ってますカ」
「あー、ウチの部屋にいんぜ。来る?」
「行きマす」
用意した分を直接手渡しがてらチョコレートマフィンのお礼諸々言わねば。背中を向け歩き出す大家さんに付いて歩き、徐にポケットの中身を確かめ彼女に声を掛けた。
振り返る大家さんに見えるようロリポップを差し出す。
「良かったらコレも」
どうぞ。そう言えば、大家さんがカラリと笑い受け取ってくれたのだった。