hatonyannyan
2024-02-11 00:03:02
2561文字
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深海より星を喰む(後)

ようわからんパロの後編です これでおわり





一口も手を付けないというのに、バルナバスは三食きちりと豪華な食事を出してきた。バルナバスへの反抗心もあるがそれ以上にクライヴを躊躇わせたのは、寄港して物資を補給しているわけでもないのに新鮮な水や野菜が出てくることだった。明らかに異常だ。これが何で出来ているかなんて考えるだけで口にする気が失せる。
「存外強情なことだ」
「こんな得体の知れないものを口に出来るほうがどうかしている」
ふむ、とバルナバスは顎に手をやり考える仕草をした。癖なのだろうか。彼がそうする時は大抵ろくでもない話を始める時だ。
「これからザンブレクの港へ向かうゆえ、お前の好物を教えてはくれまいか」
港へ向かって、普通に物資を補給するわけがない。それより何より、
……どうして、ザンブレクなんだ」
「お前の祖国を滅ぼした仇がそこにいるのだろう?丁度私の復讐相手もザンブレクだ」
やはり、見られていた。ぎりりと知らず歯が鳴る。
「船を襲い、ザンブレクの末裔どもを我が兵に変えてきたが丁度いい機会だ」
……っ、やめろ……俺は、母上に死んでほしいわけでは」
母上だけではない。ザンブレクにはあの子も、ジョシュアもいるのだ。記憶の中にしかない幼い弟が化け物に首を飛ばされる様を幻視してしまって、腹の底からぞわりと何かがせり上がる心地がする。知らない。何だこれは。
「どんな顔をするのかと何度も夢想したが。……ああ、愛いな。それが他の男を想ってというところだけが気に入らぬが」
それもいずれ忘れさせてくれよう。バルナバスが近寄ってくるのを見て、クライヴは椅子を倒す勢いで逃げようとしたが、縺れた足では叶わなかった。
「それが恐怖だ。お前にとっての幸福の象徴が害されるとあれば、流石に平常ではいられぬか」
「やめろ、やめてくれ、あの子には何の罪も、」
頭を抱えて蹲るクライヴを、バルナバスがそっと抱きしめる。それだけで臓腑の内を喰い荒らしていた恐怖が波のように引いていって、心をいいようにされる感覚にクライヴの目から涙が落ちる。
「これが私に支配されるということ。気に入ったか?お前にはありったけの愛と安息をやろう。お前が長年欲しつづけて、けれど得られなかったものだ」
違う、欲しかったのはお前からの愛ではないとクライヴが首を振る。けれど心の内は温かく満たされていて、拒絶の動きにしてはあまりに緩慢だ。
「お前にひとつ、いいことを教えてやろう」
ベネディクタが探ってきたザンブレクの内情によれば、と上機嫌で、バルナバスは震える耳に囁いた。


「───お前の弟は、とうの昔に死んでいるぞ」