hatonyannyan
2024-02-11 00:03:02
2561文字
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深海より星を喰む(後)

ようわからんパロの後編です これでおわり




襲撃のために一時的に浮上した亡霊船、その甲板の上から燃え上がる相手の船とそこに群がる異形の化け物を見る。
生きたまま貪られ、その残りから新たな異形が生まれる。せめて人として死にたいと海に身を投げた者は、海中で待ち構えていた化け物のいい餌となった。考えうる限りで最悪の地獄だ。誰も亡霊王から逃れられはしない。そうして恐怖に屈した魂は、人ならざる兵へと変貌していくのだ。
「お前、本当に恐怖を感じないんだな」
「そんなことはない筈だが」
先程まで海鳥の姿をとっていた黒衣の女性───ベネディクタは、クライヴの返答に分かりやすく顔を顰めた。そんなわけあるか、と。
「目の前で船が化け物に襲われても顔色ひとつ変えないのに?どちらが化け物なんだか」
人でないものに言われたくはないと喉まで出かけたが、すんでのところで飲み込んだ。気性の激しい彼女に火が付くと面倒くさい。
彼女が語るところによると、ベネディクタは生前バルナバスの臣下だったそうだ。復讐を望み自ら亡霊王の呪いを受け入れ、海鳥の姿を与えられたのだという。
「とにかく、バルナバス様のお手を煩わせるな。私から言わせればお前はとうに化け物だぞ」
そう言うだけ言ってまた海鳥に姿を変え船から飛び立っていった。次の獲物を探しにいくのだろう、忙しいことだ。
「化け物、なのだろうか」
父である大公が殺され国が滅びて十三年。母に連れられ国を出た弟は元気にしているだろうか。奴隷というあまりに過酷な環境の中で、クライヴはそれだけを考えて生きてきた。自分と違って弟は母に溺愛されていたから、危険に晒されることはないはず。それだけが彼の支えであった。
いつの間にか人の叫び声は聞こえなくなっていた。もうそこには誰もいないのだろう。バキバキと音を立てて燃え上がる船が墜ちてゆく。沈む時はあっという間だ。船も、国も。