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ツキシキ
2023-07-01 21:41:32
14235文字
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★Line(ウディタ)まとめ
4作品。WOLF RPGエディター製のフリーゲーム「Line」の二次創作。
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お題:馬鹿なことをする(βルートクリア前提・ルーナ視点)
※(夢の中で)シャーニに対するグロテスクな表現あり
____________
壁も床も天井もなく風も日も夜もない空間に居たので、夢なのだと思う。
かろうじて重みはあった。掌に重く馴染むこの武器は、お姉さまが絶対に手放すなと仰ったものだった。
『私達の味方は私達だけだ。だから絶対に手放すな。誰一人として信用するな』
お姉さまの声はいつだって鮮明に私の脳に響く。そう、私にはお姉さまだけ。そのお姉さまはどこへ?
何もないと思い込んでいた空間には、点々と色があった。手に掴む刃の窪みから滴る血かと思っていたけれど、そちらは既に渇いてこびり付いていた。
ならこの赤は何か?
ぽつぽつと散らばるのは、残骸だ。
見覚えがある。
千々を越えて阿僧祇と飛んでも気づける自信がある。
「お姉さま
……
」
気づいたとたん、トッ、と足が一歩踏み出した。
搔き集めよう。
粗雑に捨て置かれたお姉さまを、掻き集めよう。
細切れのお姉さまはまるでいつか殺した少女の骸のようだった。だからやっぱり明らかに死んでいるのだけれど、集めてパズルのように綺麗に嵌め込めば元に戻る気がした。お姉さまが死ぬなんてことはあってはならないことなので。
手で摘み取ると肉片が崩れたり細い管が糸を引いてちぎれたりした。集めるのは困難だった。ぎゅっと握りしめればもう元に戻すことはできそうになかったから、そっと掌にのせて零さないようゆっくりと歩いた。片手に持ち直した武器が異様に重たくて、手放さなければお姉さまを掬いきれない気がした。でも、でも、お姉さまの言葉は絶対だから。
『馬鹿なことしてるねー』
『無意味なのにねー』
視界の端で黒いものが横切った気がした。白いものが横切った気もした。兎に似ていた? 私が見つめるべきは赤いお姉さまの肉片のみなので気に留めないことにした。
集めれば集めるほど、片手に積み上げたお姉さまはどんどんと零れていった。指先からずるりと零れ落ちるたびにお姉さまの一欠片が奪われていく気がした。
「
……
か、ないで
……
」
唇から自然と言葉が零れた。落下したお姉さまの欠片を追うようだった。
私は服を破いて袋を作ることにした。お姉さまから頂いた大事なものだけれど、約束を破るよりはましだろう。お姉さまと違って不器用な私では破れほつれの粗悪品しか作れなかったけど、一応、一か所にお姉さま達を集めることはできた。
片手で武器を引きずって、袋にお姉さまを詰めて、布に沁み込んだお姉さまの髄液はどう回収すればいいのだろうと思いながら解決は後回しにして、賢いお姉さまがそこはなんとかしてくれるはずなので、私の脳は木偶の時計なので、つまり役立たずは歩くしかなくて、歩いて、落ちている肉片に骨と歯が混じり始めた頃、だんだんと両手が痺れていった。
「
……
いかないで
……
」
妙に空間は広かった。細かくされたお姉さまはあちこちに飛び散っていたから、ずいぶんと歩く必要があった。手足が限界を訴えていた。視界の向こう、天地がくっつく遠くの遠くまで、まだお姉さまの赤が散らばっていた。
すこし、指先から力が抜けた。
「お姉さま、どうして」
死んでしまったの。
あ。
言ってしまった。
正気がやってきてしまったわ。
だから螺子を飛ばさなければ。
お姉さまが死んでしまったことを私は認知してしまった。
思考をぼかして遠くへ飛ばす。
お姉さまが殺されるなんてことはあり得ない。お姉さまは強いし器用だし賢い。いつだって私の傍にいて、私を導いてくださる。それなら、今、ここで細切れになっているということは、あり得ない。絶対の意志がなければあり得ない。
ではそれがお姉さまの意志だとしたら?
私の世界の絶対であり定められたものだとしたら?
────『やっと気づいたねー』
私の行いに、これから続く生に、重ね積み上げて作り直したお姉さまの残骸に、私なんかに、意味など欠片もないのでは?
◇◇◇
「ルーナ!」
お姉さまの声ではっと光が差し込んだ。
風がありお姉さまの声があり草木と血潮の鉄さびが香る、いつも通りの、私達に優しくない、憎むべき世界だった。
「うなされてた。悪い夢でも見たのか?」
「
……
いいえ。おかしな夢を見ました」
「なら大丈夫だな。私達の毎日が可笑しいのはいつものことだろ」
「ええ。お姉さまがそう仰るのならば」
お姉さまがいないと私の頭はずいぶんと愚かになってしまうらしい。もう朧となって消えかける夢の片隅で、肉片を搔き集める自分を思い出して、自嘲を込めて目を伏せる。
私がお姉さまの傍から離れた時点で答えは明白なのに。
どうしてあの世界の私はあんなにも愚かな行いをし続けていたのか?
はやくしんじゃえばよかったのに。
……
馬鹿なことをした。
「ルーナ、食えるか?」
差し出されたパンはいつも半分だ。衣食も獲物も辛苦も狂いも半分こ。
「はい、お姉さま。何も問題ありません」
答えると、お姉さまはほっと息をついた。お姉さまの安心は私の安心で、何も言っていなくても全てが伝わるような気がした。
だから、思った。
また同じ夢を見たら今度こそは間違えないよう、お姉さまの望む形できちんと死のう、と。
~END~
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