【案律小説集】

文字数少なめ(500~1500字程度)の案律小説をまとめました。




【雷】


外ではゴロゴロと雷が断続的に鳴り響いている。窓からピカピカとした光が差し込むたびに、隣に座る律がびくりと身体を震わせる。律は怖がりだ。雷も例外ではない。
しかしその後咳払いをして怯えたのを無かったことにしている。
明らかに肩が跳ねていたというのに。平気なフリをする律が愛おしくて思わず口角が緩む。

「雷の音がすごいな。だんだん近づいてきている」

オレがそう言えば、「ヒッ」と短く小さい悲鳴が横から降ってきた。ちらりと横目で見ると、手を膝の上でぎゅっと握りしめ、蒼白な顔で俯く律。カタカタと小刻みに震え、俯きながらも目線はきょろきょろと動いて忙しない。
そろそろ限界か、と腕を伸ばそうとしたとき。

ドーーーーン!!!

豪快な爆発音が鳴り響いた。いや、正確には雷の音だ。どこかに雷が落ちたらしい。音の方角からして、音羽町周辺といったところだろうか。念のため確認しに行くかと腰を上げると。

……! や、やだ! 待ってよ置いていかないで案内!」

悲痛な声を上げた律にしがみつくように抱きしめられ引き戻される。

「怖いから、一緒にいて……

ギリギリと締め付けるような力強さに相反して声はか細く弱々しい。
オレは分かったと答える代わりに、ぎゅうっと抱きしめ返す。ポンポンと震える背中を撫でると、少しずつ腕の力が弱まっていく。

「どこにも行かないで……
「大丈夫。ここにいるから」

怖いのに平気なフリをする律も、縋りついてくる律もどちらも愛おしい。そう思っていることが知られたら怒られそうだが。ふふっと思わず零れた声は雷の音にかき消された。