【案律小説集】

文字数少なめ(500~1500字程度)の案律小説をまとめました。




【ミルクパズル】


白いピースを指でつまんでじーっと眺める。眺めるだけではなく、くるくると回転させたり、かざしてみたり。
そんな律の様子を視界に入れつつ、案内は散らばる真っ白なパズルのピースをぱちり、ぱちりと埋めていく。
三十分ほど前、押し入れの整理をしているときに、昔とある霊から貰ったミルクパズルを発掘したのだ。少しホコリを被っていたが、さほど劣化しておらず綺麗なままだった。
懐かしいなと思いながら机に広げると、部屋でくつろいでいた律が「何それ」と興味深そうにやってきて、現在に至る。
最初は絵柄がついていない真っ白なパズルに関心を寄せていた律だが、普通のジグソーパズルより難しくて今はもう飽きかけている。そもそも普通のジグソーパズルすらあまりやったことが無いのだ。案内が簡単にコツを教えてくれたがいまいち分からず、無意味に指でつまんだり眺めるのみ。

「律。最後の一ピースはお前がはめてくれ」
「え?」

そうしていると、今まで無言だった案内に急に話しかけられた。見ると机に散らばっていたパズルのピースはあるべき場所へ戻っていた。その中で一箇所だけぽっかりとした空間があった。きっと今指でつまんでいるピースの居場所だろう。

「いつのまに……

信じられないものを見るかのような目でパズルに視線を送る律に、案内は何も言わず穏やかに微笑んでいる。
ゆっくりと向きを合わせてそおっと指で押し沈める。ぱちり、と気持ちのいい音と共にミルクパズルが完成した。

「完成したな」
「うん……

案内が笑みを深くしている一方で、律は浮かない表情で曖昧に頷いた。パズルを最終的に完成させたのは律だが、他のピースを集めて埋めたのは全て案内だ。喜ばしいことなのだろうが、一緒になって喜べなかった。

「今度は絵柄付きのジグソーパズルを一緒にやろうか」
「え」
「確かあの世の雑貨屋に様々な絵柄のパズルが置いてあったはずだ。見るだけでも楽しいと思うぞ。時間があるときに買いに行こう」

屈託のない笑顔で朗らかに語る案内は律の頭を撫でる。

「わっ、なんで撫でるの……
「この数十分退屈だっただろう。すまなかった」
「別に謝らなくていいよ。僕が自分から興味を持って自分から飽きたんだし。……それよりさ、僕はいつでも時間は空いているから。その、雑貨屋? 連れてってよ。案内が暇なときにさ」

申し訳なさそうに目を伏せる案内に、律は早口で畳みかけるように言った。案内は少しの間、目をぱちくりとさせたのち、にっこりと目を細めて律の髪をくしゃくしゃと撫でた。

「だから! なんで撫でるのっ! 髪ぐちゃぐちゃになるからやめて!」
「はははっ、悪い悪い。嬉しくてつい」

ぷんぷんと怒る律に案内は肩を震わせて笑った。