【案律小説集】

文字数少なめ(500~1500字程度)の案律小説をまとめました。


【歪んだ愛と困惑】


「君は僕をすぐ殺すよね。少しは躊躇してほしいな」
…………

黒く塗り固められたナイフを深々と突き立てられながら眉を下げる。毎日毎日会いに行っては数分も経たないうちに殺される。すぐに再生して復活できるとはいえ、刺される痛みには慣れないし慣れたくない。
僕を冷たく暗い瞳で見下ろす案内は何も言葉を発さない。僕が怪異に堕ちたばかりの頃は泣きそうな苦しそうな、罪悪感に塗れた表情をしていたのに。「すまない……」と心の底から申し訳なさそうにしていたのに。
……気に入らないな。

……!」

僕は気づけば案内の首を両手で絞めていた。身体が消えゆくのを感じながらも渾身の力を込める。残された時間が無さすぎるから道連れにはできないけれど、せめて苦しそうな顔だけでも見せてほしい。それさえ見ることができたら良い収穫になる。
……なのに。

「どう……して……

嘲笑いながら消えようとしていた僕は目を見開き、困惑した。
案内が笑っていたからだ。子どもの成長を喜ぶ親のような優しい微笑み。状況にそぐわない表情の穏やかさに脳内で混乱が起きる。
どうして。どうしてそんなに愛おしそうな表情を……。違う。違うんだ。僕が望んだのはそんなのじゃない……いやだ、やめて。僕なんかに優しく微笑まないでよ……
視界が涙で滲んだ瞬間、目の前が真っ暗になった。