satoru_and_shun
2018-06-03 01:10:44
14149文字
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身勝手の代償 続き

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「瞬?おはよ……今日は早いな」

瞬から絶交を言い渡されてから一週間が経とうとしていた。
物音に目を覚まし、思い切り腕を上げて伸びると、体のあちこちで痛みを伴い骨が音を立てた。
というのも、この一週間、寝室から締め出されてしまったので、毎晩居間で一人寂しく寝泊まりしていたのだった。
ただ、この生活も一週間が経ち、ようやく絶交状態が解消される時が来た。そんな自分を迎えにきてくれたのだと思い、瞬の姿を捉えた。
しかし、瞬はこちらを一瞥すらせず、足早に玄関へ向かっていった。寝ぼけた頭で慌てて瞬を追った。

「あれ? 瞬、今日休みだよな?」

瞬は何の返事もなくすたすたと歩いていく。
どうやら絶交状態はまだ続いているらしい。

「余所行きの格好して、今日どこかへ出かけるのか?」

瞬の後頭部に向かって話しかけるが、まるでそれは壁に話しかけているようだった。
連日の寝不足により頭が全く働かず、理解できない状況にほんの少しの苛つきを覚える。

「なあ、瞬……いい加減……
「外」

久々に瞬が発した短い言葉を聞き、一気に目が冴えた。
嬉しさで舞い上がりそうになったが、相変わらず瞬の態度は素っ気ない。

「外って……待って、出かけるんなら僕も一緒に行くから」

僕の言葉を聞き、瞬は一瞬足を止め黙り込んだ後、こちらへ振り返った。
久々に瞬と目が合い、思わず口の端が緩んだ。

「デート」
……は?」

喜んだのもつかの間、突然告げられた言葉に目を白黒させるしかなかった。
デートってなんだ。
再び働かなくなった頭を抱えながらそそくさと廊下を歩いて行く瞬を慌てて追いかけた。

「瞬、何? 何て?」
「だから、今からデート」
「デート……? えっ誰と!?」
「早季」
「早季!?」

瞬は再び足を止めこちらを振り返り、自分が言った言葉にいちいち驚く僕を見て大きな溜め息をついた。
説明してやるのも面倒だといったところだろうか。

「埋め合わせだよ、君の」
「僕の?何で……
「あの日、早季に送ってもらって帰ってきただろう」
……ああ、頼んでないけどな」
「馬鹿、覚がそんなんだから僕が埋め合わせするんじゃないか」
「全く理解できない」
「理解できなくて結構」
「瞬、頼むから分かるように言ってくれ」
「いやだ」

瞬にこれ以上話すのは無駄と判断されてしまい、僕を無視して玄関で靴を履き出した。
すかさず裸足のまま玄関の扉の前に立って瞬の行く手を阻む。

「瞬、分かった」
「何が」
「分かったから、行かないでくれ」
「覚は何も分かってない」
「分かってる!」
「だって僕が今からデートに行くのも覚のせいなんだから、仕方ないだろう。そこ、どいてくれる?」
「分かった、分かった。とりあえず僕が悪い。それは認める。瞬、一旦座ろう、そこに」
「座らない」

靴を履き終わった瞬は、僕の眼前に立って威圧してくる。
僕の方がまだ背が高いとはいえ、下から睨みをきかせる瞬にたじろいでしまった。

「待ってくれ、とりあえず、早季は、ダメだ」
「何で」
「何ででも」
「覚が決めることじゃない」
「そうだな。けど、瞬も分かっているだろう? 早季と二人っきりになったら何されるか……
「覚、早季はそんな人じゃないよ。しかも女性に対して失礼だぞ」
「女性? 早季はな、女っていうよりはもはや……
「私が何ですって?」

玄関の扉が勢いよく開き、明らかに機嫌の悪い早季の声が玄関に響いた。
そっと首を捻って目線を後ろにやると後ろから朝日を浴びて仁王立ちする笑顔の早季の姿があった。

「早季!」
「ちょっと、どきなさいよ、覚」

早季は玄関前で立ち尽くす僕を隅へ押しやり、瞬の元へ駆け寄った。

「早季、こんな早くにどうして」
「瞬、迎えに来たわ。どうせこんなことになってるんじゃないかと思って……やっぱり正解だったみたいね」

早季はちらりと僕の方を見て鼻で笑った。

「さ、とっとと行きましょう」
「早季、わざわざこんなところまで迎えに来てくれてありがとう」
「いいの、気にしないで」

放心している間に早季が素早く瞬の腕を掴んで玄関から引っ張り出し、そのまま腕を組みながら歩いて行ってしまった。
すれ違いざまの一瞬、行ってきます、と瞬の声が聞こえてきた。

「あ、覚。今日は絶対邪魔しないでよね。ついてくるんじゃないわよ!」

瞬、と力なく呼んだが、瞬が振り返ることはなく、森へ消えて行く二人の姿をただ見送ることしかできなかった。
瞬は一体どんな気持ちで、今日を過ごすのだろう。早季といる方が楽しいのだろうか。
そんなことを頭の中で繰り返し考えていると、その場から動くことができなくなってしまっていた。