🔷【安寧の灯『序幕』】





中学生になって真琴はようやく中学校に通わせてもらえるようになった。それまでは家で専属の家庭教師に勉強を教えてもらっていたのだ。
制服はセーラー服……ではなく学ラン。頭には包帯、顔には絆創膏とガーゼ、体には湿布と怪我人のような見た目は相変わらずだった。そんな真琴に話しかける勇気があるクラスメイトはいなかった。仮に話しかけられても幼い頃から大人たちに囲まれて育ってきた真琴に答えられる話題は無かった。

完璧な人間であるようにと常にテストは100点満点を求められた。真琴は両親の期待に応えるため努力を惜しまず、学校でも家でも勉強に明け暮れた。寄り道は灯様に会いにいくことを除いて一切しなかった。テストも内申点も全て満点で完璧だったが、両親は一度も真琴を褒めなかった。

真琴が中学3年生になった頃。
両親がケンカすることが増えた。夜遅くまで激しく口論し、翌日「あんたのせいで零一さんに怒られたじゃない!!」と母親に八つ当たりで暴力を振るわれる。この頃には女らしい仕草や関心を抱いたらどうこうではなく、単純にストレス発散のサンドバッグとして暴力や暴言を振るわれることが日常化していた。
真琴はいつしか心と感情を殺すようになった。そうすれば何もつらくないから、痛くないからと。