しろくまたたくはくしゅんさん
2023-07-03 12:12:46
13191文字
Public
 

【アルカヴェ】あとは野となれ、

もしかしたらカヴェアルかもしれないくらいのアルカヴェな話。推敲はしてない



 アルハイゼンはそのまま丸一日、起き上がってくることは無かった。多肉植物ばかり生やしたせいで体から水分が抜けており、花面病とは名ばかりで花のほとんどはつぼみとなって眠ってしまっている。葉もかさつき今にもかれそうだったが、翌朝になって花が咲き始めると看病していた者たちはみな安堵のため息を吐いた。
「ああ、一山超えたね。これでもう大丈夫でしょう」
「すみません、ありがとうございます」
「カーヴェ、すこし寝なよ。僕が見てるし」
「ううん。大丈夫さ」
 三徹なんていつもしているんだし、気が抜けたときはうとうとさせてもらっている。十分な休息とは言えないが、アルハイゼンの目覚めを待ちたかった。無理させたのは僕だし、謝罪をしないまま眠るなんてことはできない。
 そのうち、ふわ、ぱふ、と花が勢いよく咲き替わり始める。意識が戻った証拠だ。
「アルハイゼン、おはよう……!」
「む、ぅ」
 起き上がり、ティナリの言葉にうんといいえを繰り返した後、脈や花の深くにある皮膚の状態を確かめられ診察が終わる。ベッドに座ったままのアルハイゼンに寄ると、手を握る。
「ごめん。アルハイゼン……。君を守ることができなくて」
 彼の手の甲に額を当て許しを乞う。振り払われてもいいようにあまり力を入れず握った指先が、むずがゆそうに動いた。そのまま横殴りされたって構わないと目を閉じ判決を待った。指先がこめかみから頬へ滑り、顎から顎の先へと流れると、ゆっくり持ち上げられる。大量に振りくる花弁と昼前の日差しで、目の前が色にあふれる。
「────理想の夫婦を想像しろ、と言われたとき」
 落ち着いたトーンの声。声帯をちゃんと使うのが久々でやや掠れているが、紛れもなくアルハイゼンの声だった。花をかき分けたいのに、次々と顔から降ってくるものだから追いつかない。赤、黄、白、青、桃、黒、緑、ありとあらゆる色が視界を覆っていく。
「あ、アルハイゼン?」
「思考をめぐらせ一番最後に思いついた想像が果たして俺の理想なのかと思った。この花面はあまりにも愚直で、杞憂だったが」
 瞼の上を優しく払われ、瞳が調光し、ようやく顔を見ることができた。久しぶりに見るアルハイゼンの顔。花の中から僕を見つけると、口の端を上げる。
「君宛だ。受け取れ」
「ん、え……?」
バラ あいしているひまわり きみだけだ桔梗 えいえんにジャスミン おれのもの
「は……、?はァ!?」
 突如始まった愛の告白に目を白黒させながら、僕の手には言葉と共に一本また一本と花が増えていく。最後にすべての花を握らされ花束が完成すると、アルハイゼンは「それで、君は?」と尋ねてきた。
 顔が真っ赤になって、正常な思考は絡まり、ただ手元の花を握りしめながら返事を思い切り叫んだ。アルハイゼンの顔が近づいてきて、ぎゅっと目をつむった脳裏でこういうとき稲妻で使う言葉があったな、なんて思い出していた。たしか──あとは野となれ、

花となれ!