しろくまたたくはくしゅんさん
2023-07-03 12:12:46
13191文字
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【アルカヴェ】あとは野となれ、

もしかしたらカヴェアルかもしれないくらいのアルカヴェな話。推敲はしてない

※捏造が多いよ





「あっははははははははははははははは!!!!」
「カーヴェ、笑いすぎ」
「ひぃい~~~!!、って、だってこんなことってあるか!?花が一番似合わない奴に、ひ、あははははははははっっッだぁ!!???」
「耳は聞こえてるんだから、当たり前だよ。アルハイゼン、あんまり興奮しない。
 それで、二人は花面病 かめんびょうについてどれくらい知ってる?」


 ある日、アルハイゼンが顔から花を生やして帰って来た。



 花面病。一年にひとりかふたりくらい、ビマリスタンに患者が訪れる。頻度と疾患の見た目から「奇病」ともてはやされ、生論派の研究対象となることもしばしばだ。
「種子もないのに人体から突然花が生えてくるんだ。そりゃあ珍しいに決まってる」
「過去には患者から出ているフェロモンに周囲が幻覚を見ているとされたけれど────こうやって、感触があるんじゃあねえ……
「ふ、むふ、むぅ」
「アルハイゼン、無理してしゃべらない。いい、絶対花をむしっちゃダメだよ?」
「むー…………
 花に面、と言う通り、この疾患は顔から首にかけて花が生える病だ。目、花、口────幸い耳までは覆われていないが、顔の大部分を花という花、葉や根に覆われている。わずかな隙間から呼吸やパイプからの水分摂取はかろうじてできるが、大きくは開けない。
「ちなみに、むしったらどうなるんだ?」
「根腐れを引き起こすか、根張りが良くなって────最悪、呼吸ができなくなって死に至る」
「ひえ」
 綺麗だから、煩わしいから、と勝手に引き抜いてはいけないことを肝に銘じる。ティナリは花と花のわずかな隙間からアルハイゼンの網膜、肌の状態や気道の確認をして、診察を終えた。
「治りそうかい?」
「すぐには難しいと思うよ。自然治癒しかないんだもの────それに、きっかけ、っていうのは難しいから」
「ああ、そう、それ。文献で読んだことはあるけれど、ロマンチックだよな」
「他人事だねえ。ま、確かに信じ固いけれど、『気持ちの花束をつくる』ことで治るなんて、不思議な治り方もあるもんだと思うよ」
「ふん」
 花面病の治し方はただ一つ。時間経過でもなく、薬を飲むでもない。素直な、自分の気持ちの花束を作ること。ただそれだけである。
「そんなこと……できるのか?アルハイゼンに……?」
 気持ちの花束という言葉が一番似合わない男だぞ、と言葉をつづけると桃色の大輪が咲き誇り、ぱんぽんと花びらが散る。
「うわぁ!?」
「はい、これ」
「冷静に植物図鑑を出さないでくれ!──ええと、芍薬……。花言葉は、『怒り』?」
 君、怒ってるのか?と尋ねると、ぱんぽん花を咲かせながらそっぽを向いてしまう。どうやら、感情と咲く花は対応しているらしい。
「というか、璃月地域の花も咲くのか。生論派が集まってくるわけだ。理想の花畑じゃないか!」
「興味深いのは確かだけれど、本人は不便してるんだしあんまり好奇心であれこれしないようにね」
「あ、ああ」
 ティナリに釘を刺されてしまった。釘を打つのは僕の仕事なのにな、と冗談を言う暇もなく、ティナリは僕たちに生活のてびきを説明してくれた。

 ・食事は固形物が食べられないので、液体栄養剤を投与する
 ・晴れている日は十分な日光浴をさせる
 ・水分は花に霧吹きでかけてあげるか、本人が直接パイプから吸い上げる
 ・本人の体調と花とのバランスをとること
 ・夜や日光の無い場所では行動が鈍くなるので無理して動かないこと

「こんなところかな?」
「ありがとうティナリ。ところで、アルハイゼンは目が見えてるのかい?」
 顔に花が生え始め、家に着くころには完全に花面 はなづらになっていた。けれど家の中を自由に闊歩しているし、なんならさっきの蹴りも正確に当ててきた。
「見える、というより────視覚はあるよ。ほら、妙論派でいう、センサー?みたいな」
「ん。なるほど!」
 メラックも自由に浮き、飛び回っているが障害物には当たらない。センサーがついていて、物理と温感で生命体とそうでないものもちゃんと認識できている。
「へえ~、面白いなあ!どんな風に見えているんだい?色で識別できているとか?それとも────」
「カーヴェ」
「あ……。ご、ごめん…………
 ティナリの諫める声色に身を縮こめる。こういうのが嫌だから、アルハイゼンはビマリスタンではなくティナリに頼ったのだ。本人は不便しているというのに────あ、
「ってことは、アルハイゼンは今、文字が読めない……?」
「うん」
………………
 ティナリの沈んだ顔に、アルハイゼンの沈黙が続く。それは、それは────────アルハイゼンにとってとても辛いことじゃないか。
「早く治さないと!」
「さっきも言ったけれど、自然治癒しかないんだ。すぐに死ぬわけではないし、こればっかりはきっかけを待つしかないんだ」
「でも、」
「生涯花面病を患った人はいない。不思議なことにね」
 ティナリは僕を落ち着かせるように、肩を抑え手のひらの熱をじんわりとわけてくれた。焦る気持ちが鎮まり、呼吸が落ち着く。
「ありがとう、ティナリ」
「どういたしまして」
 ティナリは栄養剤と飲用パイプを残し、玄関へ赴いた。
「また様子を見に来るよ。ビマリスタンに信頼できる学者がいるから、その人に紹介状を書いておく」
 その背中に何度もありがとう、と言いつつ見送った。本当に頼りになる友人だ。
 扉を閉め、果物より花の匂いが濃い広間に戻る。アルハイゼンはカウチに深く腰掛け、ぼんやりと座っていた。
 なんとなく、この家にやってきた日のことを思い出していた。僕はこいつに何ができるのだろうか?