【誕生日】

安栖と真琴の誕生日話+‪α。
誕生日を知らなかった真琴が自分で考えて行動する話。






番外編



実はもう一人誕生日の方がいるという、失われた設定が存在する。
これは供養の意味を込めたとても短いお話。















「灯様、こんにちは」

4月1日、昼過ぎ。真琴は一人で音羽神社を訪れていた。ここに来る理由はいつだって傷ついた心を癒してもらうためだった。でも今日は違う。
真琴は手に持っていたカスミソウのブーケと手紙を神像の前に供える。

「灯様も今日誕生日だって萬さんに聞いたの。だから、これはプレゼントとお手紙。今までの感謝を込めて。ずっと見守っててくれてありがとう。そしてお誕生日おめでとう」

真琴は精一杯の笑顔を浮かべると、神像に提げられたランタンにそっと触れる。触れた途端、心がぽかぽかと温かくなっていく。このぬくもりのおかげで今まで生きてこられた。途中、絶望から立ち上がれなくなってしまったけれど、灯様と安栖が救い出してくれた。
ふたりがいなければ、誕生していなければ、今の真琴はいない。
生まれてくれてありがとう。数日前まで誕生日に必要性を感じなかったというのに、今はそう素直に思えた。
真琴は満足そうに神社を後にした。その背中を近くの木に寄りかかって見つめていた灯様――案内はゆっくり神像に歩み寄り、供えられたブーケと手紙を拾い上げた。

「誕生日を祝われたのは随分と久しぶりだな。ありがとう、真琴。そして真琴も誕生日おめでとう。……安栖もな」

ブーケを抱え直して踵をかえす。手紙は部屋に帰ってから読もう。
案内はランタンをカラコロと揺らす。その音に気づいたのか、鳥居の下まで来ていた真琴が振り返る。霊力が無い真琴には案内の姿が見えない。だが音の意味を察したのか、真琴は優しい微笑みを浮かべた。