【誕生日】

安栖と真琴の誕生日話+‪α。
誕生日を知らなかった真琴が自分で考えて行動する話。





翌日の朝。

「おはよう真琴。そして誕生日おめでとう。はい、誕生日プレゼント」

目を擦りながらリビングに入ってきた真琴に安栖は穏やかな笑みを浮かべながら、綺麗に包装された箱を手渡す。まだ眠気が残っていた真琴はぼんやりとしながらも受け取った。誕生日プレゼントってこんなに大きい箱に入れるものなのかと思いながら、一旦近くのソファに座る。安栖も隣に座る。
緊張しているのか、浮かべた笑みがどこかぎこちない。しかし真琴は箱を開けるのに集中していて気づいていないようだ。

……! わぁ……!」

リボンを解いて箱を開けた。真っ先に目に飛び込んできたものを見て真琴は歓喜の声を上げる。

「ペンギンさん……!」

安栖からの誕生日プレゼント。それはペンギンのぬいぐるみだった。
以前にテレビで動物番組を見ていた真琴がペンギンに強く興味を惹かれていたのだ。本当は水族館か動物園に連れて行って実物を見せるのが一番のプレゼントになるだろう。しかし安栖には音羽村から離れられない事情があった。
実物が無理ならせめてぬいぐるみだけでもと、萬に頼んで取り寄せてもらったのだ。

「ありがとう、おとうさん!」

ぎゅうっとぬいぐるみに頬ずりしながら真琴は幸せそうに笑った。
弾けるような笑顔を至近距離で見た安栖は、思わず泣きそうになり、咄嗟に昨日のように真琴を抱き寄せる。
正直不安だったのだ。喜んでくれなかったらどうしようと。本当は実物を見せてやりたいのにそれが出来ない自分が情けなくて無力で、自信が無かった。でもこんなに喜ばれたら、自分のした選択も間違っていなかったのだと思うと、嬉しくて仕方ない。

「喜んでくれてよかった、ありがとう」
「? どうしておとうさんがありがとうなの?」
「大した意味は無いよ。あと今日はケーキもあるからな。この前真琴が選んでくれたチョコケーキ。事前にケーキ屋さんに頼んであるから、昼前に取りにいってくる」

感情や気持ちを悟られないように、話題を逸らす。下手な逸らし方だと思ったが、真琴はペンギンのぬいぐるみを抱きしめたまま「ケーキ……!」とまたさらに笑顔になった。

「わたしも一緒に行きたい」
「いいぞ。じゃあ先に朝ごはんを食べよう。用意するからその間に着替えておいで」
「うん!」

真琴は大きく頷くと安栖の腕から抜け出し、パタパタと部屋を出ていった。もちろんぬいぐるみも連れて。

「真琴があんなに嬉しそうなのは初めて見たかもな」

安栖は眉を下げて笑う。さっきは安堵と感動で思わず泣きそうになってしまった。が、今は代わりに温かいものが胸いっぱいに広がるのを感じていた。昨日といい、今日といい、真琴には救われてばかりだ。真琴にそんなつもりは無いかもしれないが。

「さて、今日は真琴の誕生日だ。真琴にとって最高の一日になるように気合いを入れないとな」

安栖は伸びをして、立ち上がる。
今日も良い天気だ。




(終わり)


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