【誕生日】

安栖と真琴の誕生日話+‪α。
誕生日を知らなかった真琴が自分で考えて行動する話。






春特有のぽかぽかした空気に包まれる頃。

「誕生日……?」
「ああ、安栖様から聞いたんじゃよ。真琴ちゃんの誕生日が4月2日だと。おめでたいのう」

真琴が音羽町のよろずやで日用品を選んでいると、近くで棚の整理をしていたよろずに誕生日の話題を振られた。
誕生日、生まれた日。意味は知っている。だが、それが何だと言うのだろう。真琴は浮かんだ疑問に首を傾げる。

「誕生日……の日は何かあるんですか?」
「む? そうじゃのう、一般的にはその人の誕生を祝うためにプレゼントを送ったりケーキを食べたり……祝い方は人それぞれといったところじゃのう。祝い方に形式なんて無い、自由じゃ」

萬はジェスチャーを交えながら楽しそうに話す。
真琴は誕生日を祝われた記憶が無い。両親は記念日に全く興味が無いし、話題に出されたことすら無かったのだ。だから単語の意味は知っていても、何をする日なのかまでは今まで知らなかった。
だが誕生日とは楽しいものらしい。確かにプレゼントやケーキを貰ったら嬉しいかもしれない。
……あれ、ケーキ? もしかして数日前に安栖がケーキの好みを聞いてきたのは……

「あ!!」
「えっ!? ど、どうしたんですか?」

突然萬が声を上げた。隣でいきなり大声を出された真琴はビクッと肩を震わせる。

「ああ、急に大声を出してすまないね。真琴ちゃんの誕生日前日、4月1日は安栖様の誕生日じゃったことを思い出したんじゃ」
「おとうさんの誕生日?」
「そうじゃ。連日で誕生日とはよりおめでたいのう」
「誕生日……

真琴は誕生日を祝われたことも、誰かの誕生日を祝ったことも無い。
だからどうすればいいのか分からない。それでも祝いたいと思った。萬の話を聞いていると楽しい日なのだという感想を抱いた。
それなら。真琴は早速頭の中で計画を立てることにした。その様子を萬は穏やかに見つめていた。






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「おとうさん、明日行きたいところがあるの。夕方なんだけど時間空いてるかな?」
「空いてるぞ。どこに行くんだ?」
……秘密」

リビングでテレビを見ているとき。CMに入ったタイミングで真琴は世間話をするように聞いた。安栖から即座にOKの返事が返ってきて、真琴はわずかに口角を緩めた。断られたらどうしようかと不安だったから、肩の荷が下りるような安心感に息をつく。これで明日雨が降らなければ大丈夫。
秘密と言われた安栖は目をぱちくりとさせていたが、真琴からお出かけに誘われることが珍しくて嬉しくて顔を綻ばせた。