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普賢のまわりの人たち
いつかあの日の星空を
2023年9月17~18日開催のWJ版封神演義・夢作品限定ウェブオンリー「夢の国のデンキヒツジ」に合わせて書いた夢SSです。
舞台は普賢が崑崙山に来る前にいた小さな村。夢主はその村の地主の一人息子です。
普賢がどうやって崑崙山に来たのか、そして
みんながみんな、仙人道士になりたがったわけではなかったのでは、というのも想像してみました。
夢小説ってどんなものか、いまいちよくわかっていないので、こんなのは夢じゃないと思われるかもしれませんが、その場合は「モブ目線の普賢の話」としてお楽しみいただけますと幸いです。
「大丈夫、きみはここにいて」
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窓から風が吹き込んだ。蠟燭が一瞬あかるくなってかき消えた。とうとう燃え尽きたらしい。震える手で手紙をたたみ、胸に抱いて寝台に横になった。もう起き上がる力は残っていない。
まどろみのなか、ふと人の気配がして目を開けた。ぼんやり暗い視界の向こうで、だれかが傍に立っているのがわかった。だれだ。医師か。
(久しぶり)
呻きで喉の奥が震えた。その声を覚えていた
——
彼だ。
(病気だと聞いたんだ。具合はどう?)
まるで堰を切ったように、あとからあとから涙が頬を伝った。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。おれが行かないと言ったから、逃げ出したから、きみが行くことになってしまった。ほんとうはおれが行くはずだったのに。
書いたばかりの手紙を握りしめ、子供みたいに声を上げて泣いた。彼はしばらく何も言わなかった。背に添えられた手はあたたかかった。
(ごめん。僕はきみに、こんなにも辛い思いをさせていたんだね)
彼はぽつりと言った。
(きみに行けと言われたとき、僕はチャンスだと思ったんだ)
独り言のように囁きながら、なだめる手が背をさすり続ける。
(僕は知らない世界に行きたかった。選ばれたきみがうらやましかった。追いかけたのだって、最初からきみと代われないかと思ったからだ。だから、あれは僕にとっては都合がよかった。でも、)
彼はいったん言葉を飲み込んだ。
(村に残ったことで、きみはとても苦しんだでしょう。いつまでも後ろ指を指されたり、ご親族との関係も悪くなったと聞いている。ほんとうは、あんな形で僕が勝手に決めるんじゃなくて、ちゃんと話し合いをするべきだった。あのとき僕はまだ子供で、そこまで考えが及ばなかった。
——
ごめんなさい)
どこまでがほんとうかわからない。気休めのための嘘かもしれない。それでも彼の告白は、何十年も胸の奥底に重く溜まった澱を、ゆるりと溶かすには充分だった。
あれから、辛いことはなかったのか。後悔していないだろうか。
彼は(大丈夫)と答えた。
(僕はこっちに来てよかった。やりたかった勉強もたくさんできたし、とてもいい友達にも出会えたんだ。ほんとうにありがとう)
皺だらけの手を握るそれは、あのとき肩を叩いてくれた手とすこしも変わらなかった。彼だけが時間を止めてしまっていた
——
これが仙人になるということ。
震える手でくしゃくしゃの手紙を差し出した。もう読める状態ではないそれを、彼はためらいなく受け取り、ありがとうと言った。笑っているかどうかはわからなかったが、声はあかるかった。
深く安堵し、震える息を吐いた。ふと、彼の後ろにもう一人だれかいるように見えた。幻かもしれない。いや、いい友達と出会えたと言っていたから、その人だろうか。村でずっと一人だった彼に、こんな場所にまでいっしょについて来てくれる友達ができたのだ。
濡れた頬を、彼の指が拭った。視界は暗く、もうほとんど目は見えなかったが、あのときと同じ、やわらかな声が耳に届いた。
(またいつか会える。そのときはもういちど一緒に星を見よう)
閉じた瞼の向こうに、あの日の夜空が広がった。
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