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無窓居室
2023-01-10 01:41:59
6622文字
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午餐 その後
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午餐 その後
原作BTWと釣り回の後しばしば👹を食事に誘う😈の話。
2〜4p目に暴力およびダメージ描写、性的な仄めかしがありますが具体的なものではないはず。
全体的に😈👹だと思いますが3p目だけ👹😈
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大広間は客のざわめきで満ちていた。
招く人数に合わせてだろう、魔法の類がそれ以外のどういった手段でか、城ほどにまで広げられた大きさの館に絶えず談笑が響いている。
客の多くは子供達だ。アカネには関心がないが人間界で何か祝い事のある日らしい。異世界の顔ぶれも久し振りに全員が集まってとりとめのない話に花を咲かせていた。
「ねえブラック、あれ何!?」
子供達の群れの中から大きな声を上げたのはさとしだ。ブラックの友人で、アカネがきさらぎ駅でほぼ手中に収めながら食べ損ねた少年でもある。名前を覚えてしまった。
もったいつけたスーツ姿のブラックが広間に飾られた剥製を解説し始めた。最近、本当に狩に凝っているらしい。
「
……
こちらはキマイラ、これはコカトリスです。シーサーペントもなかなか美味しいものですよ、骨が多くて捌きづらいのと毒抜きが面倒ですが」
説明するうちにも窓の外では有翼の獣や竜が飛び、水晶張りの床の下には怪魚が横切っていくので供達は歓声を上げる。アカネは自分が連れて来た青鬼がテーブルの端でカメラ型のブラックの使い魔とじゃれ合っているのに気づいた。それは別にいい。青鬼の友達は青鬼が好きに選べば良いことだ。
アカネを戸惑わせるのは、もはやこれだけの人間の子供を前にしても自分は食欲を感じないことで、すんでのところで食い逃した少年すら人肉ではなく「さとし」という知己として認識してしまっていることだった。
腹が減っていないわけではない。この場へ来るとアカネの食欲は人間の肉よりブラックの手による給仕を求めるようになっていて、それが混乱に拍車をかける。
「アカネさんも見ますか?ロック鳥の尾羽」
いつの間にかブラックがアカネに話しかけている。口調には年端もいかない男の子がお気に入りの女の子に自分の釣りや昆虫採集の成果を語るときに似た熱がこもっていた。
アカネの預かり知らないことだ。だが分からないなりに察しはする。
いつも一人で勝手に愉快になっているように見えた男が、明らかに自分を意識して饒舌になる光景は不思議だった。
「無駄に殺すのは好きじゃない。狩るなら羽や爪まで食え」
「羽
……
揚げれば食べられますかね」
考え込む仕草もどこかあどけなく見える。そんな素振りに油断して良い相手ではないのに。
「アカネさんは責任感が強いんですね。鬼さん達のリーダーだからでしょうか?オレちゃん、あなたに提案があるんです」
にこやかに語られると与しやすい相手扱いされている気がしてくる。頭にくるが掴みかかる前に話は聞いてやろうと思った。その程度にアカネはブラックとの会話に慣れてしまった。
「きさらぎ駅から人間界への路を閉じ、逆に魔界と繋いで魔界の生き物を主な食料にするのはどうでしょう。魔界生物の血肉が鬼の舌にも体にも合うことは充分お確かめいただけたでしょう?」
人を食えなくなった鬼は飢えて死ぬ。自分がそうなったらそれはそれで良いと思っていた。
ブラックの誘いに乗ったのも、その流れで異世界の住人らと接点を持ったのも、人間達と交流したのも自分の意志だ。思うままに生きて死ぬ。まったく悪くない。鬼の群れのことが心残りだが後を引き継ぎたがる者はいるだろう。
力が弱まればブラックも自分に興味を失うはずだとアカネは思っていた。もしかすると、だから今日、自分はここへ来たのかも知れない。予感される終わりの前に、一目この男の姿を見に。
しかしブラックから発された言葉はあまりに予想外のもので、アカネは思わず逃避的に広間の様子へ目をやった。どんな場合でも逃げを打つことなど生まれて初めてだ。
「人身御供の習慣があった時代ならいざ知らず、現代ではあそこに足を踏み入れる人間は少ないはず。ご覧の通り魔界なら乱獲しなければ食糧は潤沢です。魔界へと空間を繋ぐのに大した力は要りません、もしよかったらオレちゃんのデビルツールをお貸ししてもいい
……
あなただけでなく鬼の皆さんにとって悪い話ではないと思いますが?」
「何でおまえがそんな事まで世話を焼くんだ」
ブラックが自分を見つめて話していることが分かるのでアカネは視線を戻すことができない。子ども達が席に着きはじめたテーブルの奥側の席では、さとしが一人の女の子に話しかけようとしている。
「オレちゃん当分人間界でのエンジョイライフを続けるつもりなので。ガールフレンドが人喰い鬼だと困るんですよね」
とんでもない勝手だ。しかし悪魔の誘いなんて結局はそういうものなのだと、知りながらここに居る意味を思う。
ひめ、と呼ばれた女の子の気をさとしは盛んに引こうとしているようだ。しかしひめの方は旭川朝陽に夢中で取り合わない。少し前なら視界に入っても関心を払わなかっただろう情景の機微を、理解できてしまう自分をアカネは発見せざるを得なかった。
「交渉の際には必ず契約書を交わす主義ですが、今回は特別に口約束でいいです。録音代わりに会話は証人のカメラちゃんに撮ってもらってますが」
気付けば青鬼との遊びに夢中に見えたブラックの使い魔がこちらを見ている。レンズにはしっかり今までのやり取りが映っているのだろう。ぬかりのないことだ。かかった獲物を逃す気はないらしい。
「沈黙は合意とみなしますよ」
厨房では晩餐の支度ができているようだ。漂う人間とは違う肉の匂いに、アカネは目眩に近い空腹を感じた。
夜まであと少し。
2023/01/10
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