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無窓居室
2023-01-10 01:41:59
6622文字
Public
午餐 その後
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午餐 その後
原作BTWと釣り回の後しばしば👹を食事に誘う😈の話。
2〜4p目に暴力およびダメージ描写、性的な仄めかしがありますが具体的なものではないはず。
全体的に😈👹だと思いますが3p目だけ👹😈
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レースのカーテン越しに陽の光の差し込む部屋でアカネはブラックの給仕を受けていた。
こういう場合にしか目にしない彼の服の白い袖もそろそろ見慣れる。
招待者の名前に似合わない瀟洒な洋館は人里離れた場所にあり、ここが魔界なのか異界なのかそれとも別世界なのか判然としない。アカネにとってもどうでも良いことだった。
「他の連中は来ないのか」
ゆうに数十人は入るだろう食堂はがらんとしている。中天にかかる寸前の太陽から逃れようとするような、薄く頼りない陰を落とす一輪挿しの花だけがアカネ以外の客らしい。
「皆さんそれぞれの世界の主人公をされてる身ですから、何かとお忙しいのでしょう。さとくん達も今日は学校です。平日のこの時刻は実は大人の時間なの、知ってました?」
人間の大人の行動様式などアカネは知らないし興味もない。食うなら子供の方が柔らかくて舌触りが良いと思う。そこそこに空腹だった。
「二人きりですね」
くだらない冗談を残して厨房へ消えたブラックが皿を持ってやって来る。
相手にできるのがこの悪魔一人なのは残念だったが、肉の色味は食欲をそそった。ワインに見立ててグラスに満たされた生血の紅とレアステーキの赤とが真白いテーブルクロスの上へ差し込まれた。
「さとくん達が一緒のときは念のためによく火を通しますが、今回はアカネさんのお好みに合わせました」
アカネが来たときからシェフにギャルソン、ソムリエの真似事までして楽しげに立ち働いていたブラックはここで初めて腰のロングエプロンを外し、客人の向かいの席に座った。服装がいつの間にか普段の詰襟に戻っている。
「いただきましょう、冷めないうちに」
常に上がった口の形とは関係なくいつも愉快そうな男だと思う。凡てにおいて貪欲な悪魔が唱える食前の挨拶はそこだけが敬虔そうに聞こえる口ぶりで、かえって放埒な感じがした。
ブラックにしばしば食事へ招かれるようになったのは、例のマスターSとの戦いの後そう経たない頃のことだ。始めはあの戦いの祝勝会や事後処理についての話し合いを兼ねていたのが、次第に季節の行事や各世界の近況報告を挟むようになり、今では全くの気まぐれに便りが来る。
最初は全員が集まっていた顔ぶれも次第に都合のつく者だけになり、しばしばこうして物好きな幹事と比較的自由の身のアカネだけが差し向かいで昼食をとることになるのだ。
料理はいつもブラックが用意する。いつか食材の狩りを人間界でやったときには人間の街を一つ半壊させてしまったらしく、さすがにそれ以降は集まるたびこの人の住まない土地へ案内されている。
アカネとしてはそんな派手な狩りをしなくても手近で二、三人攫って来てくれれば良いのだが、悪魔の友人でよく一緒に招かれるのが人間の子供達であることを考えると都合が悪いのだろう。他の世界からの客達もほとんどが人間かその近縁種と親しい間柄にある。共食いが禁忌であることは鬼のアカネにも理解できた。
この機に人肉を用いる訳でもないとすれば無駄に人の住む場所を荒らしていつか餌になるかもしれない資源を消耗するのは、たとえどうせ後で悪魔が魔法で元に戻すとしても、アカネにとっても避けたいところだ。
帰結として二人は閉ざされた秘境に水入らずで同じ肉の味を噛むことになっているのだ。ちなみに本日のメインは巨大なワイバーンの腿らしい。
「アカネさんはナイフの使い方がきれいですね」
だしぬけにブラックが言い出したのでアカネは目を鋭く細めた。とぼけた表情から相手の思惑は読めない。
「バカにしてんの?」
「上品だとは言ってませんよ、きれいなんです」
作法上けっして熟達しているとは言えないアカネの肉の切り方は、手際の鮮やかさのせいで動作としては極めて洗練されて見えるのだった。
ブラックは優雅な仕草で無礼にもフォークで客を指す。
「その手つきで裂かれたら獲物は痛みを感じないでしょうね。ナイフの代わりにあなたの爪や牙なら尚更です」
「試してあげようか」
腹の満ちたアカネが好戦的に片頬を上げた。
招待状が届いたときから、それはいつも届くたび、本来の目的はこちらの方だった。現世ならざる人のいない世界での逢瀬もお互いの力を存分に振るうため。
「食事はもう充分で?」
「いつでもいいよ」
ブラックは静かにテーブルナフキンで口を拭った。アカネは血に濡れた唇の端を顧みもしない。
ナフキンの下から、その布より白く鋭い歯が並ぶ笑みが露わになった瞬間、鬼の娘が椅子を蹴って悪魔へ飛び掛かる。背中の翼を広げた悪魔は屋根を破り、矢のように空へ上昇した。
太陽は真上を少し逸れたばかりで白金のような輝きを湛えている。
夜はまだ遠い。
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