とある本丸怪談・弐

陽の届かない本丸
人魚と海辺の本丸
主の家では何も起こらない
52ヘルツの審神者



52ヘルツの審神者


備後の六千番本丸の日課は、審神者用トランジスタラジオの周波数を合わせることである。52ヘルツ、それが本丸と審神者を繋ぐ唯一の数字だ。
「おっはよーございまーす!今日も元気にしてますか?こっちは誰ひとり1本たりとも欠けずに元気ですよ」
鯰尾藤四郎が特注トランシーバーを通して話しかければ、ラジオからは審神者のおおらかな声が返ってくる。今日も元気そうで、鯰尾はとても満足である。
「今日は、あの一七零番本丸のさにわさんと俺が遊びに来てくれるんですよ」
あそこの燭台切さんの作る萩の月的なもの、すごく美味しいんですよ。短刀達もみんなワクワクしちゃって!
弾むような声音から鯰尾も楽しみにしているのが伝わったのか、審神者からも楽しそうな波長が返ってくる。
「うちみたいな波長が違う本丸とも仲良くしてくれて、本当に変わった本丸さんですよね」
ま、さにわさんが狸って時点で、うちとどっこいどっこいですよね!鯰尾の笑い声に合わせるように、トランジスタラジオからは鯨の声が響くのだった。