とある本丸怪談・弐

陽の届かない本丸
人魚と海辺の本丸
主の家では何も起こらない
52ヘルツの審神者



主の家では何も起こらない


「ただいま帰りました」
「お勤めご苦労様です」
この本丸の審神者は、盆の時期に必ず実家に里帰りする。なので、短刀達が持ち回りで護衛の任を務めている。今年は厳正なる抽選の結果、前田藤四郎に新幹線のお席がご用意された。
土産の銘菓を分けながら、話はやはり審神者の郷里のことになる。
「どうだったの?」
「ええ、去年、乱が話していたとおりでした」
そっかぁ、お疲れ様。気の毒げに言って、せめてもの労いにと前田の肩を揉んでやることにする。それならば自分は番茶と取っておきの水饅頭を取ってくる、と一昨年に番であった愛染が駆けていった。
「来年は、誰になるのかなぁ」
信濃が憂鬱な溜息をつく。皆、審神者のことは大好きなのだが、如何せんこの任だけは御免蒙りたくて仕方がない。特段、危険があるわけでも、タチの悪い親戚がいる訳では無いのだ。
ただ、何も無い。
主の家では何も起こらない。
「今年も聞いていたとおり、主様は誰もいないご実家で楽しげにお過ごしでした……
従兄様にお嬢様がお生まれだったご様子でしたよ。
「僕らには見えないけどね」
「ええ、見えませんでしたけどね」