とある本丸怪談・弐

陽の届かない本丸
人魚と海辺の本丸
主の家では何も起こらない
52ヘルツの審神者

陽の届かない本丸


その本丸の刀は陽を見たことがない。景趣を夜に固定しているわけではない。夏の昼間にしても向日葵畑にしてもその他のものにしても、陽は昇らず空はただどこまでも黒かった。一応、月星は出ている。太刀や大太刀にとっては視界の足しにもならないが。
陽が無ければ作物も育たない。他所が赤茄子やら何やら収穫している一方で、こちらはカイワレ大根しか採れやしない。市場に流せば大層美味いと飛ぶように売れた。その金でフルスペクトルLEDライトを購入して、なんとか他の野菜も採れるようにした。これには燭台切もにっこりであった。
不便もあるがそれなりに上手くやってきた。とは言え、陽が昇らないままいる訳にもいかない。蜂須賀虎徹が代表して政府に問い合わすことになった。しかし政府の回答は『環境設定に異常なし』の一点張りであった。そんなはずは無い。だって、この本丸は稼働日から四六時中年がら年中夜闇に包まれている。
これはおかしいと、蜂須賀は審神者を問い詰めることにした。執務室の襖を開ければ、そこは外より尚も暗い闇であった。
「主、君の仕業だね?」
蜂須賀の問いに、闇の奥で審神者が蠢いた。