とある本丸怪談・参

現地調達する本丸/
とある首無しの顛末/
満開の桜の/
うちの犬が何かを育てている。



とある首無しの顛末


演練場で身元不明の遺体が発見された。成分分析から、審神者ではなく刀剣男士であることは確定している。該当する刀の候補は最大で八十八、明らかに違う身の丈の刀種を除けばさらに絞られるはずだが、そうは問屋が卸さなかった。首と腰から下がないのだ。おかげでおおよその身長すらも分からない。胴体の太さからひとまず短刀は除外されたが、脇差、すなわち肥前忠広かにっかり青江の可能性は否めない。打刀からは大倶利伽羅が早々に除外された。
現場に駆り出された警備部の面々は、甚だ困り果てた。そもそものこの警備部、場外乱闘を力ずくで抑えるのが主な仕事であり、頭を使う捜査なんざからっきしなのだ。
「少なくとも、兼さんではないと思うよ」
「そ、そうか……。堀川が言うなら確かだな……
「じゃあ、短刀と粟田口の脇差と俺と大倶利伽羅以外、と」
「さすがに槍や薙刀連中も違うんじゃないか」
「そもそもさぁ、本体はどこに行ったんだよ?」
「ここにあれば一発で誰の残骸か分かるのにね」
「あ、爪とか塗ってない?」
「それ、普段手袋してる連中だったら分からなくない?」
井戸端会議もとい捜査会議に白熱していると、端末に本部からの連絡が入った。遺体の身元について、通報があったのだという。
「半年前に引退した元審神者が、自分のところの刀ではないかと言っている」
その審神者は肺を患った為に前線を退くことになったが、本丸を閉める際に、とある刀が残ると言い張ったのだそうだ。管理者のいなくなった本丸は、数ヶ月かけて自壊する。その刀は、どうせ還るならば思い入れ深い本丸と最期を共にしたいと訴えた。審神者とその刀はよくよく話し合い、結局は刀の希望通りで合意となった。審神者は別れの際まで泣き、刀の手を握り、辛ければすぐにでも政府に連絡して安らかにお役目を終えてくれと願った。刀は微笑み、本丸は閉ざされた。
では、それが何故にこの首足無しの骸であると思ったのかと言うと、訪いがあったのだと言う。
「何が来たって?」
「だから、その首足無しが、挨拶に来たんだと」
早朝、元審神者の寝室を訪れたのだ。もう直に本丸は崩れ落ちる。遂には自分も消える。だから、暇乞いの挨拶に来たと言って。
「だから、多分、本丸に帰る途中に脚に限界がきて崩れて、それだと動けないから首だけが飛んで帰ったんじゃないかって」
「平家かよ!?」

事実確認は必要なので、件の本丸へ行くことになった。まだギリギリで存在は保たれているらしい。
「ごよーあらためであーる」
「あーる」
自壊に巻き込まれぬように奥へと分けいれば、広間の真ん中に彼は居た。
「来たか」
「ああ。この身体は、アンタのものでいいんだな?」
骨喰藤四郎の膝の上で、成程確かにそれは首だけであった。生きていた時と変わらぬ美しさで、三日月宗近は「ほう」と息を漏らし、ゆっくりと目を閉じた。
三日月宗近の首と骨喰藤四郎が還るのを見届けて、警備部は本丸を後にした。この建物も、数日中に完全に消え去るだろう。

さて、事件は片付いた。元審神者もその後が気になるだろうと、三日月と骨喰の最期を伝えに行った。
「骨喰……藤四郎……、ですか?」
私の骨喰は、粟田口の兄弟達と共に、私が本丸を出ると同時に還った筈ですが。
結局、あの三日月の首を膝に抱いた骨喰藤四郎の出処は、分からぬままであるという。