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冥土うさ
2026-07-01 13:27:51
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「ただいま留守です」
FF14二次創作 / 光の戦士♂ / 凪ってるヒカセンのみなさんへ
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玄関を叩く軽い音がした。
工具を置いて扉を開けると、そこには見慣れたララフェルのお嬢さんが立っていた。
「光の戦士さんはいらっしゃいまっすか?」
開口一番だった。
こちらの顔を見たタタルは、すぐに返事を待つ体勢になる。
少し考えてから答える。
「留守だよ。」
タタルはきょとんと目を瞬いた。
「扉に札がかかっていただろう?」
木製のプレートには『PLEASE DO NOT DISTURB』の文字。今朝、自分でかけたものだ。
「いやいや、見ましたけど
……
。」
タタルは札とこちらを何度か見比べた。
「あれ冗談じゃなかったんでっすか?」
思わず笑みが溢れるが、タタルは納得していない様子で腕を組んだ。
「疲れてるんでっすか? 体調とか、どこか悪いとか
……
」
「いいや、全く。」
「じゃあ、どうして留守なんでっすか?」
その問いに少しだけ考える。だが、上手い答えは見つからない。
「
……
さあ。」
結局、曖昧な返事しかできなかった。
タタルはじっとこちらを見上げた。
「本当にわからないんでっすね?」
「ああ。」
返事を聞くと、タタルは肩の力を抜いた。
「ふぅん
……
。」
納得したような、していないような相槌だった。それ以上追求するつもりはないらしい。かわりに、提げていた紙袋を差し出してくる。
「では、留守番さんに差し入れでっす。」
受け取りながら、首を傾げた。
「光の戦士じゃないのか?」
「留守なんでっすよね?」
「そうだな。」
すると、タタルは満足そうに頷いた。
「じゃあ、留守番さんでいいでっす。」
思わず笑ってしまう。タタルもつられたように笑った。
穏やかな空気が流れた後、彼女は少しだけ視線を落とした。
「本当は、少しだけ安心したんでっす。」
「何が?」
「その
……
ちゃんとお休みできてるんだなって。」
紙袋からほんのりと甘い香りが漂う。焼き菓子だろうか。
「お休みしてるわけじゃない。」
そう返すと、タタルは呆れたように肩をすくめた。
「そういうところでっす。」
受け取った紙袋を掲げてから礼を言うと、タタルはにっこりと笑った。
「ふふっ、どういたしましてでっす。」
そこでふと、タタルの視線がこちらの脇を通り越していく。振り返れば、作業途中の棚が目に入った。
「もしかして、棚を作っていまっした?」
木材や工具が広げられたままになっていた。削りかけの板にはまだ紙やすりの跡が残っている。
タタルは感心したように目を丸くした。
「家具作りまで始めたんでっすねぇ
……
。」
「まだ途中だ。」
未完成の棚へ目を向ける。歪みはないが、棚板の高さはこれでいいか、まだ決めかねていた。
「相変わらず凝り性でっすね。職人さんに頼む方が早そうでっすが?」
「そうだろうな。」
腕の良い職人に頼めば、意匠を凝らした見事な家具が出来上がるだろう。それでも、自分で作るほうが性に合っていた。
「じゃあ、どうして?」
「作るのは嫌いじゃないからな。」
その答えに、タタルはどこか納得したように頷いた。
それから興味は別のものへ移ったらしい。視線の先には庭の花壇がある。
「お花も植えたんでっすか?」
花や葉には、雨の名残があった。陽光を受けた雫が小さく光る。どれも近所のお年寄りから譲り受けた花だ。
「綺麗でっすねぇ。」
吸い寄せられるように花壇へ近づくタタルを見ていると、小屋の方から聞き慣れた鳴き声が響いた。
「あ!」
今度はそちらへ視線が飛ぶ。
「相棒さんでっす!」
「昼飯の催促だな。」
「見てもいいでっすか?」
「ご自由に。」
タタルが手を伸ばすと、チョコボは素直に頭を下げた。羽毛を撫でる小さな手を横目に、好物の実を昼ごはんに混ぜる。
「相棒さんは元気そうでっすねぇ。」
袖をくちばしで遊ばれながら、タタルが笑う。
「ああ。食欲もある。」
「留守番さんも。」
不意に向けられた視線に首を傾げた。
「そうか?」
「そう見えまっす。」
タタルは迷うことなく頷いた。こちらが首を傾げる理由の方がわからない、とでも言いたげだった。
「それじゃあ、お邪魔しまっした!」
「ああ。」
「ちゃんとご飯食べるんでっすよ?」
「わかった。」
「シャワーも浴びて、ちゃんとお布団で寝るんでっすからね!」
「はいはい。」
「本当にでっすよ!?」
「わかったよ。」
思わず笑ってしまう。だが、タタルは笑い返してはくれなかった。腰に手を当てたまま、じっとこちらを見上げている。
これ以上長居させては説教が始まりそうだ。
「少し待っていてくれ。」
首を傾げたタタルをその場に残し、家の中の作業机の引き出しから小さな木彫りの人形を取り出した。
「これ。」
「わあ
……
!」
タタルが両手で受け取ったそれは、少し不格好なカーバンクルだった。
「作ったんでっすか!?」
練習用だ。左右の耳は微妙に揃っていないし、細かな削り跡も残っている。飾るにはまだ早い出来だった。それでも、タタルは何度も角度を変えて眺めていた。
「とっても可愛いでっす
……
!」
タタルは宝物でも扱うように人形を両手で包み込んだ。
「これ、売ったら結構なお値段になると思うんでっすけど
……
。」
「そうか?」
「そうでっすよ!」
「じゃあ売ればいい。」
「売りません!」
きっぱりと言い切られてしまった。そこまで気に入るような出来だっただろうか。
「また来まっすからね。」
「好きにするといい。」
「留守でも来まっす。」
「それは困ったな。」
タタルは満足そうに頷くと、木彫りのカーバンクルを大事そうに抱えて帰っていった。
小さな背中が見えなくなるまで見送ってから、静かになった庭を振り返る。
好物の実まで平らげた相棒は、すっかり満足したらしい。新しく敷き直した藁の上で丸くなり、静かな寝息を立てている。
花壇では風に吹かれた花々が小さく揺れ、葉擦れの音だけが耳に届いた。
穏やかな午後だった。
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