コロポックル
2026-07-01 01:22:35
16603文字
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どうせ全部呪いのせい(アズラオル│R-15?)

魅了を食らった経営顧問と、それに振り回される所長のアズラオルです。
かっこよくない経営顧問、捏造設定、露骨なカップリング要素などが含まれます。
まだ本番行為はないです。まだ。R-15にはなるか?




 抵抗する気力すら失せたオルガマリーを抱えて、アズライールは所長室へと向かっていた。

 いつぞやの女神ウルズの件以来、本人は自身の影が薄いのを気にしているふうであったが、このアサシンは黙っていればかなり目立つ。
 なんと言っても背が高かった。図体だけを見れば、サーヴァントの中でもかなり長身の部類に入るだろう。あまり寝つきのよくないオルガマリーはときどき深夜に食堂を訪うが、ほの暗い廊下で彼に出くわした際の、あの心臓が縮み上がるような恐怖は、なにも日頃の不穏なやりとりだけが理由ではない。

 存在感が希薄だというのであれば、それは、ひとえに暗殺者たる彼自身の振舞いに起因するものであろう。つまり、アサシンクラスとしては優れているという証左だ。

 では。
 そんな、図体が大きくて威圧感たっぷりの経営顧問が、ルンルン気分で廊下のど真ん中を歩いていたならば。いったい、どれほどの注目を集めることか。
 答えは、彼の腕にすっぽりと収まったオルガマリーが現在進行形で痛感している。

 周囲の視線など気にも留めず、恭しく横抱きにした女の顔を覗き込みながら、アズライールは歌うような調子で語りかけた。

「これは、デートと言っても差し支えないな」
……差し支えしかないわね……

 弾むような足取りで歩く青年とは裏腹に、オルガマリーの表情はなんとも暗い。
 無理もなかろう。ばったり居合わせた三女神の長女には「新婚さん、でしたか?」と頬を染められ、ハサンの面々には痛ましいものでも見るような顔をされ、騒々しい英国の劇作家には執拗にインタビューを迫られ——最後の奴はわざわざ大嫌いなカラテチョップで撃退したが——要するに、死ぬほど目立って仕方がなかった。

 どちらかといえば内向的であると自負するオルガマリーにとって、他者から向けられる好奇の目など攻撃も同然であり、長く晒されれば命にだって関わる。目立ちたがり屋の某地球大統領とは違うのだ。
 こういうとき、忌々しい己の分け身が心底羨ましくなる。実際のところ、今ここにいるのが大統領ビーストであったならば、この首はとうに吹っ飛んでいるのだが。

 慣れ親しんだ所長室に到着する頃には、部屋の主はしなびた風船のようになっていた。

……ふむ」

 浮かれきっているとはいえ、さすがのアズライールも、オルガマリーの疲労困憊ぶりには思うところがあったらしい。しばらく彼女の顔をしげしげと観察したあと、暗殺者はその肢体を丁重にベッドへ降ろした。
 一応、その程度の判断力は残っているのか。やわらかなシーツの感触にようやくひと心地がついたオルガマリーであったが、ぬるりと視界を覆った影のせいで、すぐさま緊張状態へ引き戻されることになる。

「まっ、て、待ちなさい」
「む。なぜだ」
「なぜだはこっちの台詞です」

 枕もとに腰かけ、当然とばかりに覆い被さってきたアズライールに、オルガマリーはすんでのところで待ったをかけた。
 本当にギリギリである。あと一秒長く固まっていたら、なんというか、こう、触れていたかもしれない。唇とか、取り返しのつかないところが。

 鼻先が触れるほどの距離へ迫った顔を両手で押し返すと、黒目がちな双眸がわかりやすく不服を訴えてくる。

「恋人なら、接吻くらいはするだろう」
……言い忘れてたわ。なりませんから、恋人には」
「えっ」

 初めて聞く声とともに、アズライールが目を見ひらいた。虚をつかれた、というのは、まさにこのような表情を指すのだろう。
 ——このひと、こんな顔もできるのね。
 あまりにも聞いたことのない声、見たことのない表情だったので、オルガマリーは状況も忘れてつい感心してしまう。

……オルガマリーは、」

 おずおずと、普段の横柄な態度からは考えられないほどおずおずと、冠位を受けた英霊の威厳を欠片も感じさせない声が降ってくる。

「私が、好ましくはない、と。私の好意を、煩わしく思っていると……そう、なのか、オルガマリー」

 細く弱々しい声音は、今にも泣き出しそうに湿っていた。
 鳩が豆鉄砲を食ったような顔が、たちまち、捨てられた仔犬のように萎れていく。今日は初めて見る表情ばかりだ。どれも、変に愛嬌があるのが余計に腹立たしい。

 ——なんなのよ。口に出す代わりに、オルガマリーは内心で悪態をついた。
 なんで、わたしが振ったみたいになるの。

 なぜかはわからないが、無性に苛立っている自分がいて、それがなおさら苦しかった。

……その、好意ってやつ。それが、あなたの本心でもなんでもない、ただの一時的なエラーだってわかっているからよ」

 目を合わせないよう顔を背けながら、努めて淡々とことばを並べる。悲しいことなどないはずなのに、なぜだか、気を抜くと泣いてしまいそうだった。

「明日には消えている感情なんて、真面目に取り合っても虚しいだけじゃない。なにより、あとから困るのはあなたなのよ、アズライール」

 彼は今、魅了魔術の影響下にある。紡がれる甘いことばも、いとおしそうに触れる手つきも、熱のこもった眼差しも。すべては、期限つきの紛いものでしかない。
 そんなものに踊らされて、後悔するのは明日の自分たちだ。今、傍から見れば恋人同士の戯れとしか思えないこの体勢すら、のちのアズライールを苦しめる記憶になりうるというのに。

 わたしは、おかげさまで好い思いをさせてもらったけど。なんて、言えるはずもない汚れた本心に、自分でも呆れ返ってしまう。

「一応、あなたのために言っているの。やめておいた方が身のためだわ。わたしも、今日のこと全部、なるべく忘れる努力はするから」

 そこまで言って、もう話すことはないとばかりに目と口を閉ざすと、オルガマリーはからだごと男に背を向けた。
 いくら正常でないとはいえ、アズライールは元々聡明な青年だ。先刻の「恋人にはならない」という発言をきちんと咀嚼できたのだから、今の話も、ある程度は正しく理解できるだろう。

 しかし。
 どうにも、覆い被さった気配が離れてゆく様子がない。

 振り返りはせず、試しに目だけをひらいてみると、長い蒼髪が滝のように視界を覆っていた。
 まだ、いる。むしろ、先ほどより、さらに近づいているのでは。

……アズライール?」

 あくまで振り返らないまま、そろりと声をかけてみた。
 返事の代わりに、わずかに影が揺れる。

——よく、わかった」

 少しの沈黙を経て、返されたのは肯定のことばだった。
 そう、わかってくれたの。それはよかった。ご理解いただけたはずなのに、まったく離れてゆく気配がないのは、いったいなぜなのかしら。
 なにとはなしに、動いてはいけないような気がして。じっと固まったまま黙りこくったオルガマリーに、アズライールは——つい先ほどまでの、あの悲痛な声音はどこへやら——妙に浮ついた、変にうれしそうな声でささやいた。

「つまるところ、私の想い……おまえに対するこの愛欲が、呪いによってもたらされた、偽の心だと。それが問題なのだな」

 提示された解釈は、意外にも、おおむね的を射ている。
 なんだ、わかってるじゃない。彼の認識に重大な齟齬があるのではと懸念していたオルガマリーであったが、少なくとも、こちらの言いたいことは伝わったようだ。

……それが、」

 ゆえに、油断した。

「それだけが、問題なのであれば。私が気兼ねする理由もない」

 大きな手に、顎を掴まれて。
 決して乱暴ではない、けれども有無を言わさぬ力で、顔を正面に向けられる。
 なに、と呟くはずだった薄い唇を、あたたかいものが塞いだ。

 見ひらいた両目に、夜闇よりも黒い瞳が映る。咄嗟に目を瞑ると同時、閉じ忘れていた唇の隙間を、なにか濡れたものが割りひらいた。
 口腔へと侵入したそれが、奥で縮こまっていたオルガマリーの舌を絡めとる。顎の裏側を撫でられ、ざらついた粘膜同士をすり合わされて、敏感なところを刺激される感触にくぐもった悲鳴がもれた。口の中から聞こえる水音がはしたなくて、ひどく罪悪感を掻き立てられる。

 両手で顔を包み込まれ、耳の穴を指で塞がれて、くちゅくちゅと濡れた音が頭に直接響いた。舌の裏を舐られるたび、びりりと痺れるような感覚に指先が震える。恥ずかしいのに、逃げたいのに、顔を逸らすことさえ許されない。
 長い指が耳を撫でる。喉まで貪るみたいに、奥へ奥へと舌をねじ込まれる。そのすべてが、くるしくて、あまくて、溶けてしまいそうにあつかった。

 本当に喉の近くまで舐られていたからか、ずるりと舌を引き抜かれた拍子に、オルガマリーは少しばかり咳込んだ。口づけって、こんなに苦しいものかしら。たぶん違う。違うとは思うけれど、正しい作法は彼女にもわからない。
 ぜえぜえと胸を喘がせながら、涙に濡れた目で見上げた先に、ぼんやりと黒い両目が見えた。潤んだ視界ではその表情までは読み取れないが、たぶん、きっと、ちょっと笑っている。

「ひとつ、賭けをするか」

 降ってきた声には愉しそうな色が滲んでいて、やっぱり笑っているな、と思った。さらさらと、長い前髪が顔をすべる。愛でるように頬やまなじりに口づけを落とされて、いや、とむずかるような甘えた声を上げてしまった。

……おまえは。今しがた、私がおまえにしたことも、すべては魅了の呪いとやらによる誤作動と捉えている。そうだな、オルガマリー」
「っ、じっさい、そう、でしょ」

 息も絶え絶えに返されたことばに、アズライールはくつくつと愉快そうに笑う。
 なにがそんなにおかしいものか。明日、正気を取り戻した自分が置かれるであろう惨状を、少しは想像してみればいいのに。

 顎を伝って首筋へと降りた指先が、オルガマリーの喉もとをするりと撫で上げる。これは自分のものだ、とでも言いたげに、頚椎のあたりを指の腹でなぞられて。くすぐったいと文句を言うべきか、いつものように怯えるべきなのか、それすらわからなかった。

「ならば、こうしよう。明日の朝、おまえの言うとおり、この想いが掻き消えていたならば——まあ、そうだな。腹でも斬って詫びるか」
「は、……いらないわ、うれしくないわよ、サムライじゃあるまいし」
は必要だろう。なに、私からすればいずれ通る肉体改造みちだ、予行練習とでも思えばいい」

 ちょっと先の範囲も予習しちゃおうかな、なんて勤勉な学生のノリで切腹などしないでほしい。
 まず、どういう生き方をしていたら、ライフプランに己の腹を捌く工程が組み込まれるのか。信仰とは難解なものである。否定はしないがよそでやってくれ、とオルガマリーは切実に思った。

 生きたまま、麻酔もなしに、肉を抉られる。その意味を。痛みを、恐怖を、絶望を、彼女は誰よりもよく知っているから。

……おまえには、メリットのない提案だったようだ。これでは賭けにならんな。訂正する。口頭での謝罪ならびに反省文の提出、一週間の業務代行で手を打とう」

 オルガマリーの表情に察するものがあったのか、さすがのアズライールもすぐに代替案を提示してきた。初めからそれでいいのに。この男は、たびたびブラックジョークの匙加減を見誤る悪癖があるようだ。

「それなら、いいわ。乗りましょう。給料はそのまま、十倍の業務量でこき使ってあげる」
「容赦がないな。……だが、よかろう。その代わり」

 首筋から、さらに下。シャツ越しに、鎖骨から胸のあわいへと指を這わせながら、青年はとろりと笑う。
 まるで。罠にかかった獲物を見下ろす、狩人のように。

「夜が明けても、私の想いに変わりがなければ——おまえを抱く」

 とん、と。
 胸の中心より、やや左。ちょうど、心臓の位置するところを、指先で優しくノックされる。
 そういえば、心音がずっとやかましい。たぶん、彼がカルデアへ帰ってきてから、ずっと。

……な、」
「抱く。無論、媾合の意味でだ。おまえを、明日の晩、かならず抱く」

 聞き間違いかと目を瞬かせたオルガマリーへ、抜かりのない経営顧問は退路を絶つように念を押す。逃げ道を塞がれたあわれな子羊が、ようやく、告げられたことばの意味に思いを馳せた。
 ——抱かれる。わたしが、アズライールに。
 ——抱かれる、って。つまりはどうなるの?

 知識として、知らないわけではないけれど。自分の身に起こるそれも、目の前のサーヴァントが姿も、なにひとつ想像がつかなかった。

 すっかり固まってしまったオルガマリーの視界で、蒼髪がさらりと揺れる。無防備な首筋に顔を寄せられ、二度、三度と甘噛みのような口づけを落とされて、わけもわからないまま変にうわずった声がもれた。

……楽しみだ。おまえを、爪の先までこの手で汚して、すっかり私で満たしてやれる」

 左耳に触れた唇が、湿った吐息とともに陶然とささやく。低くひそめられた、熱に浮かされたような声に、脳がふやかされてゆくような錯覚を覚えた。
 まだ、賭けの勝敗も決まっていないのに。まるで、すでに定まった未来をなぞるかのように、アズライールはとろとろと甘い毒を獲物の耳に注いでゆく。

「その首、その感情こころ、胎の内に至るまでを、余すところなく……なあ、オルガマリー。明日がこんなにも待ち遠しい。おまえの肌は、肉は、喰らえばどんなに甘露だろうか」

 大きな手のひらに、薄い腹を撫でられて。
 その下にある内臓が、彼に、満たされる。そんな未来を、想像してしまった。

……あまり、誘惑してくれるな。知ってのとおり、今の私は、いささか自制が効きにくい」

 茫然と目を見ひらいたオルガマリーを見下ろして、おそろしい暗殺者は困ったような、なにかを堪えるような笑みを浮かべる。
 いま。わたしは、どんな顔をしているの。
 無性に気になったが、目の前の男に訊ねるのはこわくて、代わりに彼女にとって不本意な認識のみ訂正することにした。

「ゆ、うわく、なんて。してないじゃない。してません、わたしは」
……そうか、そうだな。悪かった。私の目に映るおまえが、たまらなく魅力的に思えるのは、私自身の問題だったな」
「みッ……!?」

 前にも、同じことを言われた気がする。そのときは、なぜだか——たぶん、彼の言う『魅力』の方向性が、どちらかというと漁師から見た巨大マグロなどに近かったがゆえに——まったくうれしくはなかったのだが。

……どうせ、首がどうとかビースト云々とか、そういう話でしょ」
「いや? 文脈通り、性的欲求の対象としての話だが」

 なんてことを言うの。
 あまりにあけすけな言い草にぎょっとしてしまったが、そういえば、アズライールは魅了でちょっぴりおかしくなっているのだった。要するに、端から正気ではない。
 そもそも、本来の彼はいかにも超然としていて、性欲なんてものがまともに備わっているのかも疑わしいほどだ。

 頭では、わかっているのに。
 呪いに冒された男の、植えつけられた偽物の愛情から生まれた言動で、こうも舞い上がってしまう自分がいる。

 ——これって、ひとの心を踏みにじっているも同然よね。
 にわかに首をもたげた自己嫌悪を振り払うように、オルガマリーは小さく首を振って、男の厚い胸板を両手で押し返した。

「もう、いいです。わかりました。明日からの激務、覚悟しておきなさいよ」

 努めて普段通り、冷静で厳格な所長らしく聞こえるよう虚勢を張った声に、アズライールは意地悪く目を細めてみせる。

「そちらこそ。明日の晩、ゆめゆめ忘れぬことだ」

 言うが早いか、筋肉質な両腕がオルガマリーの背中へ回される。正面から抱き寄せた華奢なからだごと、その長躯をごろりとベッドに横たえて、アズライールはあたたかな感触を閉じ込めるように背を丸めた。
 大柄な男性に、全身を包み込むかのように抱き締められて。鼻腔を満たす沈香じんこうの匂いと、布越しにもはっきりと伝わる引き締まった肉体の感触に、オルガマリーはつかの間パニックに陥った。

「はあ!? なっ、ななななにして」
「ふふ、そう警戒するな。ただの添い寝だ。……今回は、な」
「安心できる要素がひとつもないわ!?」

 密着する体温におもしろいほど心臓が跳ねて、その体躯を、生物として自分とはあまりにかけ離れた強靭な肉体を、全身で思い知らされて。
 ——に。万が一、億が一にも、抱かれるなんてことになったら。
 想像しかけて、すぐに思考を霧散させた。たぶん、まともに考えてしまったら、正気ではいられない。

「今日はもう、眠るといい。日頃から、あまり睡眠をとっていないのだろう、おまえは」

 なんで知ってるのよ、と言いかけて、そういえば毎晩のように廊下で出くわしているのだったと思い直す。

 普段の彼なら。
 こんなに優しい声で、こちらを気遣うようなことを、言うはずがない。

……薄情ね。わたしは、明日なんて、ずっと来なければいいと思っているのに」

 思わず、本音がこぼれ落ちる。
 明日の朝までは、この男の愛情も、優しさも、熱を孕んだ欲望さえ、すべて自分のものだというのなら。たとえ、泡のように脆く儚い、うたかたの夢であったとしても。いつまでも、と醜く願ってしまう。

 すっぽりと腕の中に閉じ込められたオルガマリーからは、アズライールの表情はうかがえない。
 けれど。

「かわいそうに。私に抱かれるのが、そんなにこわいか」

 含み笑いのような声とともに、心底愉快そうなささやきが降ってくるから。
 こんなに心臓に悪いのが、いつまでも続いてしまっては、命がいくつあっても足りないのでは。そう気がついて、オルガマリーは未練がましい感傷を押しのけるように声を張り上げた。

「だッ……誰もそんな心配してないわよ! わかった、寝ます、寝ればいいんでしょ! 明日、慌てふためくあなたを顎で使うのが楽しみね!」

 言うだけ言って、そのままぎゅっと目を瞑って押し黙る。アズライールはまだ笑っているようだったが、どうせ、明日の朝には青い顔でおろおろしているのだ。今だけは、気分好く笑うことを許してやってもいいと思った。

 とはいえ。ただでさえ寝つきがよくないのに、こんな状況で寝られるのかというと。
 初めこそ、自分の心音が邪魔で、とても眠るどころの騒ぎではなかったのだが。やわらかな香の匂いと、ほどよく低い体温が。大きな手で、髪を梳くように頭を撫でられるのが。思いのほか心地好くて。

 そういえば、異性と添い寝なんて、初めてかも。
 なんなら、抱き締められたのだって。
 実の父親にさえ与えられたことのない、力強くもやわらかなぬくもりに、オルガマリーは存外すんなりと眠りに落ちた。