すだ
2026-06-27 12:00:00
8622文字
Public 龍の国その他
 

水無月に芽生えたもの

関係:幼馴染/ 文字数:8,622
6月といえばジューンブライド!ということで関連するお話を書きました。本人たちは今回結婚しません、すみません。
以前公開した、現パロ・術師の家系に生まれたスバルとカグヤが小さい頃、6月の結婚式にリングボーイとフラワーガールとして出席したお話。
カグヤがスバルにプロポーズしたきっかけが書かれています。


おまけ

「うまくできません」
 ふくれっ面のカグヤが手足を投げ出し寝転んだ。
 彼女の両隣には、せっせと花冠を作るいろはと、不貞腐れたカグヤをオロオロと見下ろすツバメがいる。モコロンがふわふわ飛んできて、カグヤのお腹に着地した。
「カグヤちゃん、あたしが代わりにやってやろうか?」
「だめだよ、ツバメさん」
 いろはから注意され、ツバメは頬に手を当てた。
「でもね、いろはちゃん」
「だめなの! 誰かへのプレゼントは、自分で作って渡さなきゃ」
「それはそうなんだけど、カグヤちゃんはあまり手先が器用じゃないからさ」
 先程からスバルに贈るのだと花冠を作ろうと頑張っているのだが、すぐにぐちゃぐちゃになってしまうのだ。カグヤが可愛くて仕方ないツバメは、つい手を貸そうとしてしまう。
 じわりと目尻に涙が溜まり始めたカグヤの頭を、あー、と声を上げながらツバメが撫でる。
「よし、できた! はい、起きて起きて」
 いろはがカグヤの肩を掴んで揺さぶり始めたので、ツバメが起き上がらせてやった。
「わたしからカグヤちゃんへプレゼント。花冠をどうぞ、お姫さま」
 せっかく花冠を頭に乗せてもらっても、肝心の姫は浮かない顔だ。
……ありがとうございます……。いろはさんはお花の冠が作れてすごいです。私も兄さまに作って、結婚してください、って言うつもりだったのに」
「それはちがうよカグヤちゃん。ちょっとこっちきて」
「はい」
 いろはに手招きされ、カグヤが顔を寄せる。
「結婚する人達に必要なのは、冠じゃなくて指輪なんだって!」
「そうなんですか?」
 カグヤに見上げられ、ツバメは頷いた。
「そういえば、結婚式のときに指輪を交換してました」
「うんうん! だからね、カグヤちゃんが作らなきゃいけないのは、白詰草の指輪なんだよ」
「ゆびわ……指輪なら、私でも作れますか?」
「やってみよう!」
「ふたりとも、ここら辺にきれいな白詰草があるってモコロンが」
「オイラに任せとけ! 頑丈で、きれいなヤツを見つけてやるからな」
「ありがとう、モコロン」
「そういえば今日、ヌバタンは?」
 いろはに訊かれ、良さそうな白詰草を探しながらカグヤは答えた。
「今日は兄さまのおうちでお泊まりです」
「ときどき入れかわるんだっけ?」
「そうだぞ、オイラとアイツはカグヤとスバル両方の相棒でもあるからな。こうして定期的に交替して親交を深めてるんだ」
「今日はいっぱいブラッシングしてあげますね」
「頼むぜ! へへ……またオイラの毛並みがフワフワになっちまうな」
 毛並みの良さが美竜の条件だと思っているモコロンは、頬を染めながらぴょんぴょん跳ねた。宙に浮きながら飛ぶなんて器用だな、といろはは感心する。
「いっしょのお布団で寝ましょうね」
「おうよ! その代わりスバルには内緒にしといてくれよ。後が怖いからな」
「ほら、喋ってないでやるよ! 日が暮れる前に完成させるんだろ? いろはちゃん、手本を見せてやっておくれ」
「うん! えっとね——
 それからしばらくして。
「できました……!」
「すごいすごい!」
「良かったねえ」
 何度か茎をへし折りながら、ようやく出来上がった白詰草の指輪を、カグヤは満足げに見つめた。
 壊さないよう、大切にハンカチで包んでショルダーバッグへしまう。
「喜んでくれるといいね、スバルくん」
「はい!」
 ご機嫌のカグヤをじっと見た後、いろはが尋ねた。
「ねえねえカグヤちゃん、前から聞こうと思ってたんだけどさ」
「はい?」
「どうして結婚したいのはスバルくんなの? イカルガさんのことも同じくらい大好きなんだよね?」
 いろはからの質問に少し考えこんだカグヤは、顔を上げると口を開いた。
「イカルガ兄さんのことも大好きです。でも、ちがうんです」
「ちがうんだ」
「はい。イカルガ兄さんみたいになりたいとは思いますけど、家族になって一緒に住みたい、とはちがいます」
「そうなんだ。じゃあスバルくんは?」
「兄さまとは、ずっと一緒にいたいです!」
「そっかあ」
 スバルの話題が出た途端、カグヤの顔がひときわ明るくなる。それだけで、大好きなんだなあ、といろはにも伝わる。
 いろはとカグヤには、その気持ちが何と呼ばれるものなのか、まだよくわからない。理解しているツバメだけが優しくカグヤの頭を撫でた。
「さ、帰ろうか。いろはちゃん、今日はウチでご飯食べていくかい?」
「食べる! やったー! ありがとうツバメさん!」
「いろはさんと、まだ一緒にいられて嬉しいです!」
「わたしもー!」
「早く帰って食べようぜー!」
 三人と一匹、仲良く肩を並べ帰路に就く。いろはが喋るとカグヤが笑い、モコロンが茶々を入れる。ツバメがニコニコしながら見守っている、いつもの風景。
 ふと、カグヤがショルダーバッグに触れる。その中にある白詰草の指輪を思い浮かべ、彼女は笑みを深めるのだった。