錘(つむ)
2026-06-19 23:59:21
7000文字
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バッカスに花の冠を

ジョン王がビールとか飲みすぎる話 ギャグです 色々と許してください カプと言うほどまでではないと思いますが生産元がリチャジョなのでおきをつけください


「余に酒が、飲ませられぬというのか!」
 ジョン・ラックランドは激怒した。だけでなく、ヒールで床を蹂躙し八つ当たりをした。
 愚行と浪費には酒がつきもの、戴冠するのはまだ先の少年の姿ではあるが、愚王ランキングなら地元で負け知らずであろう。何の自慢にもならないが。本当に何の自慢にもならないが。ちゃんと酔える酒での宴会があると聞きつけて、わざわざ足を向けてやったというのにこの侮った扱いは何だ!
 サーヴァントは常人が酔うアルコールは効かないが、古今東西、酒を愛した英雄偉人は星の数ほど、酔わぬ酒など無粋というわけでサーヴァントでも酔える酒が存在する。酒飲みは業が深い。食堂で酔っ払われても困るので、定期的に広間を使ってアルコールと軽食を出しているそうだ。初参加のジョンはこうして出鼻をくじかれた。
 エプロン姿のブーディカが、なだめるように両手を広げる。
「いくらでも飲ませてあげるよ、その姿じゃなければ」
「はァ!? 余の何が不満だというのだ」
「マスターの国の法律では、お酒は二十歳になってから」
 なまじ学んだ分、法を持ち出されると弱い。その方の効果はここまで及ぶのか、などと小声で反論したが、ここは法廷ではないので無意味な議論であろう。
 サーヴァントは厳密に年齢を示せるものではないが、ただ父王の期待を受けているだけの、やらかす前の十五歳ころを最盛期と自分で説明してしまったのだから、いまさらやたらかわいい二十代だがぁ〜? は通用しないだろう。
「実際はどうかじゃなくて、子供がお酒を飲んでいるのがマスターの世界だと法に触れるってこと。だから、悪いけど見た目で判断するからね。いくら二十歳を超えていても、見た目がアウトならアウト」
 釘を差されてしまった。食い下がろうとすると、横から見慣れた黒髪の女王巫女が顔をのぞかせた。
「ジョン君もですか!」
「壱与」
 よく共闘するので、この二代目女王のことはよく知っている。
「ううっ。泡の出る麦のジュースぅう。」
 べそをかいている。麦の酒ならエールのたぐいか。ジョンも好きでよく飲んでいた。
 いつも思うんだけどなんでこいつ悪で王の属性なんだろうな。酒とか飲みたがるからかな。壱与が使えている神の教義はわからないが、酒を禁じているのかも知れない。
「壱与ちゃんはジョンと違って大人の霊基がないからね……
 壱与は細い肩をがっくりと落とし、頷いた。
「はい、わかっていますぅう……
 飲ませてやってもいいのではないか、余が飲んでもいいのと同じくらいに飲む権利があると思う。そう口添えしようとしたが、壱与はジョンよりずっと聞き分けがいいようで、涙を拭うとジョンに向き直った。
「ジョン君は私の分まで、泡の出る麦の液体をぐびぐびぷはーっっかーーーこの一杯のために頑張ってるぅ〜!してくださいね、約束ですよ」
「あ、ああ。任せよ、安心して、ええと、眠れ?」
「よかった……がくっ」
 がくって自分で言ったぞ。いや先に眠れとか言ったのは俺だけど。
 壱与はすぐに顔を上げ、両手を掴んでブンブンと上下に振ると、「じゃあ、また周回で!」と微笑みを残し去っていった。手を振り返しながら、よく考えると嫌な別れの挨拶だなと思った。