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保科
2026-06-08 01:35:46
15522文字
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超かぐや姫!
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きつね一匹、部屋の中
かぐいろ かぐやと目が覚めたら部屋に居たキツネのお話/獣化パロです!時系列は9月の1週目後半くらいでお願いします
そのうちキツネをディスプレイ越しに甘やかすヤッチョがめっちゃ奮闘する時とはあるかも
→書いた ヤチいろ ギリ付き合って……ない……?
6/14 なんか続いたの書いた かぐいろかぐキツネ
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かぐやとキツネ 10年後
「
――
あ」
「彩葉?」
夜、食事も終えてお風呂も終わって、ゆったりぬくぬくリラックス
――
というタイミングで。明らかに何かやらかした時の声で呻いた彩葉に、私はなんじゃらほいと声をかける。
「どしたのさ、世界終わった?」
「
……
世界は終わってないけど生活は終わったかも」
「
………
?」
生活ならこの復活を遂げたスーパーかぐやちゃんが進行形で徹底してお支えしているはずですが。なーんか足りてなかったか。うぇーと、と指折り数えるもののそれらしいものは特に思いつかない。強いて言えば昨日雨
……
あめかぁ。
「洗濯物生乾きだったとか
……
?」
「あ、いや、違う違うかぐやがどうこうではなく、というかいつも家事炊事ありがとうね、かぐやのおかげで本当に毎日助かってるから」
「え、うん。ども」
怒涛のお礼に押されて思わず頷いて、いやまあ彩葉専用ハイパーテクノロジー専業主婦ですので?と内心ドヤりつつ、じゃあなんだろ、と首を傾げる。
そんな私の前で、かた、と机に置かれる小さなケース。よく見ればそれはピルケースで、確か、彩葉から、勝手に手を付けないように、と厳命されていたもので。
「、
……
これさー、彩葉がキツネにならないようにするためのお薬、じゃないっけ
……
?」
前に、そう教えてもらった筈だ。差し出すように前に出されるので、思わず手に取ると
――
「次の処方、先週だった」
……
。振っても音が鳴らない。軽い、あれ、これすかすか空っぽじゃん。じっとり視線を向けた先、沈痛な面持ちの彩葉がため息をつく。
「時系列おかしいよ。これで回答したら試験0点だよ」
「本気ですっぽ抜けた。
……
少なくとも明日は薬抜きだわ。今から予約入れるけど
……
」
しまったなぁ、とぼやく彩葉のやらかしは確かに珍しい。というか、基本、そういうスケジュール管理は病的なまでに徹底している彩葉だ。まあ、猿も木から落ちれば弘法のヤツも筆を誤るし、彩葉もスケジュール管理をミスることだってあるだろう。
「彩葉にしては珍しいね、この手のやらかし。なんかめっちゃ忙しかったとか〜?」
「
………
」
それでもこらえきれず突っ込めば、彩葉が曖昧な顔で黙り込む。私から小さく視線を逸らす。
――
つまり私絡みだな、りょ〜、先週あった臨時のトラブルと言えば、と指折り数えて、
……
あー。週末右腕が突然動かなくなって誤魔化しきれず研究所に彩葉の手配で救急搬送されたなぁそういえば。
「
……
ねえ、優先度、」
「あんたより高いものはないから。絶対」
言い切るより早く食い気味に被せられて沈黙する。照れくさいやらもうちょっと自分を大切にしてほしいやら、こもごもの感情をはぁい、と従順な返答で飲み下した。少なくとも、あの時、神経の接続切られて身動き取れない状態でそう思わざるを得ないくらいの説教をされ続けたので。
……
左手動くならいいと思うんだけどなぁ
……
。
「良くない。
……
ま、それだけだから気にしないで」
さらっと思考を読みつつ流されて。気にしないでと言われるものの、でも、常用薬がないのってまずいんじゃないの?という気持ちで視線を向けるものの、彩葉はどこ吹く風、と言った所でWEBの予約ページを開いていた。たぷたぷなにやら操作をして、ほっと息を吐く。
「
……
よかった、明後日予約取れた」
「おっけー。じゃあ、今日と、明日は薬ないってことだ。
お仕事お休みするの?」
「?なんでよ」
「なんでって」
心底不思議そうな声に、私のほうが戸惑った。
「別に、薬が切れてすぐに姿が変わるわけじゃないし
……
てか、大げさに驚いちゃったけど、思い返せばあんたが来る前とか薬飲まなくてもやってけてたんだから、別に2日くらい平気よ」
「彩葉さんさぁ、でっけーフラグビッシビシに立ってるけど平気?」
「だから何がよ」
いやいいんだけどさぁ。かぐやちゃんは相手の意思をソンチョーできるユウシュウな相棒なのでいいんですけどさぁ。
「
……
困ったらかぐやのことちゃんと頼ってよ?」
「そんなの当たり前でしょ」
とりあえずそれだけ伝えておくことにすれば、心配性ね、と彩葉は困ったように笑った。べーつに?杞憂なら別に、かぐやだって、いいんだけどさあ。
彩葉の不思議な体質
――
ヒトなのにキツネになってしまうこと、については、私も正直良くは知らない。長生きはしたけれど、決して人体の専門家とはなりえなかったものでして。人むじーわ。外の国すげーわ。
彼女以外に同様の症例は8000年の間、何度か見たことはあったけれど、発生原因も変化先も様々で、こう!と決めつけられるような事柄はどこにもなくて。
――
と、ずっと思っていたけれど。
今、彩葉は、おそらく薬で特定のホルモンの発生を抑える形でコントロールしている。以前、発症の原因をストレスと口にしていたけれど、彼女の感情自体に働きかけるのではない形だ。これらの情報は実際に医者当人から聞いたわけではないから概ね予測だけれど、特例的な症状に対してこうも効果的な対処が取れていることは、過去、制御できず迫害を受けたりと苦しんでいた人々を知る私からしても感慨深いものがある。併せて、彩葉が悲しまなくていいことを含め。
「
……
とかテキトーなことを考えていても朝日は昇るのよなぁ〜」
「ん
……
」
かぐやの中に仕込まれた体内時計は文字通り時計なため、起床時間は正確だ。午前6時、ぱっちり目を覚ました私は、かぐやの硬いだろう体を器用に抱き枕にしている彩葉の拘束からスルスルと抜け出す。なにせ朝ごはんを作らなければならないもので。慣れたものである。
「
―――
」
昨夜の会話を反芻する。平気、と彩葉は言った。
てこでも動かない彩葉が普段のルーチンを継続することを望むなら、かぐやはそれに応えるだけである。
――
私としてはどうにも心配だけれど。かぐやの代わりに押し込んだメンダコを抱きしめてすうすう眠る彩葉の頭を小さく撫でる。
……
大丈夫なのかね?本当に。
キッチンで目玉焼きを焼きながら
――
今日はサニーサイドだ
――
ぼんやり、これまで家の中で遭遇した彼女の獣化の例を思い出す。
どれも可愛かったなー
……
ではなく、かろうじて家の中で済んだだけで、どれももし外で起こったら大事故だ、
――
だってさ、最悪キツネになるのはいいとしても、キツネから戻るのがかぐや的には問題だ、だって洋服脱げちゃうんだよ?物語のように都合よくいかない、公共の場で好きな人が痴女になるのは全くもっていただけないしなにより大衆の目にそんな彼女を触れさせることなんて許されないかぐやもヤッチョもゆるさない。自然菜箸に力が入りそうになって慌てて制御する。何せこの義体、木の棒程度折るのは容易い。
「きゅ
……
」
――
キツネになるトリガーは彩葉も曖昧なのかよく教えてくれないけど、多分本人だけもう少し知ってることありそうなんだよな。やっぱこれを期に、もうちょい詰めたほうがいいかなあ。
「きゃう」
端がカリッと焼けたあたりが頃合いだ。するすると目玉焼きを皿に移し替えて、ちぎっておいたレタスを添える
――
忘れずトーストをトースターに押し込みながら、そろそろスマホのアラームに叩き起こされてるだろう彩葉が起きてきてもいい頃合いなのになぁと、ぼんやり思って。
「
――
きゅう」
かぷ、ふくらはぎが緩く噛まれた。甘噛み。
「
……………
。え?」
まずもってない衝撃に、おずおずと、足元を見る。私の足首から離れていく、直ぐに目に留ったふわふわの毛並みは、欠かさないドライヤーとかぐやの餌付けの成果だろうか。己の例えまでなんかアニマルじみてしまっていることに気を取られ、その耳がぺしょりと伏せられている弱々しいキツネが、どうやら私を控えめに呼んでいたのだということに遅ればせながら気づいた。
キツネ。黒混じりの茶の毛並み、クリリとした丸い瞳とシュッとしたマズルが凛々しい顔立ちには面影が覗く。
野生などと疑う余地も、見間違えるはずもなくこれはつまり彩葉当人
――
当獣であった。
「
……
ぎゅぅ
……
」
だから、まあ、彼女が向けられた私の視線に対して小さく鳴き声を上げ、何を怯えて
――
いや、申し訳無く思っているのかは、すぐに分かった。というか、『やっぱりね』、だった。
丁度手すきとなっていた私は、その場にしゃがみ込むと、キツネの前足の脇に手を入れてひょいと持ち上げる。抵抗されることも、何か反論するように鳴かれることもない。ぶらりと垂れ下がった尻尾に力はなく、よく手入れされた毛が手に馴染む。可愛い。やっぱりキツネの彩葉は可愛すぎる。
そうやって、目前にふわふわの彼女を据えながら、前に少し話したことを思い出す、『私、きっと、かぐやが撫でてくれるだけで
――
』
「
――
彩葉、おーはよっ」
あの言葉を、辿るように。抱き寄せて、頭を軽く撫でて、甘えるような声で何時も通りの挨拶をすれば。
――
ぐらり、体にかかる重さが数倍に増えれど、彩葉謹製の体幹はそう簡単に揺らがない。瞬きのうちに、一糸纏わない彩葉が腕のうちにいて、その柔らかな肢体を抱きしめながらかぐやはうーん役得とニマつく一方、彩葉はゔゔ、と、喉のどこを鳴らしてるのか分からない唸り声で呻いた。
「
……
嘘でしょ
……
」
「ねー、あのさ、再度の確認だけど。
――
お仕事、お休みしない?本当に?」
「
……
。
……
部屋に携帯取ってくる
……
」
この世の終わり
――
いやいや、曰く生活の終わりみたいな声で呻いた彩葉は、かぐやをゆるく押し返す。そうしてそのまま、
……
まあつまり目のやりどころに困る状態で恥じらいもなく歩いていこうとするので、
――
いやでも、パジャマにエプロンなかぐやも羽織らせたげるもの何もないな。エプロン?特殊性癖か。とりあえず、ほっとけないので、手を握って後をついていく。と。
「
………
」
「うひーめっちゃ睨むじゃ〜ん」
羞恥が勝ったか。向けられる眼光の鋭さに、まずったかな、と離そうとして、向こうから握り直された。驚く私を見て、彩葉が首を振る。
「
……
、ごめん、八つ当たり。居てほしい。
……
部屋に戻った途端、キツネになって電話できひんようになるかもしれへん
……
」
「ちょ、ちょいちょい昨日の威勢どーした!?あの余裕ぶっこいてるフラグ建築士さんどこ行った!?」
すっかり弱りきっている姿の珍しさに、声がひっくり返った。思わず口に出た半ば煽りの言葉にも反論はなく、ほんまになぁ、と方言の出る彩葉は取り繕う余裕もなくガチ弱りだ。
まあ、この短時間で姿が変わるとなれば相当なことがあったのだろう。
「ねえ彩葉、目覚めてそんなストレスヤバかった?嫌な夢とか見た?」
「
………
」
とぼとぼと歩く彩葉を何度も追い越しそうになりながら、私が問いかけるのに。彩葉は私のことをちらと見ると、ほんの少しだけ口元を揺らして、ポツリと呟く。
「
――
かぐやが」
「うん?」
「メンダコになってた」
「
……
、うん」
そりゃまあ、ぬるするっと、ぬいぐるみに差し替えましたからね。頷く。対して、彩葉の返事はない。黙り込んだまま階段を登って、開きっぱなしのドアから自室に入る。会話が停滞する。気まずさに口を開く。
「
……
あ、メンダコじゃないのがよかった?えびのでっかいのとか〜」
「
―――
、
……
本当にそう思う?」
眼差しはわずかに不審を宿していて、
――
それはかぐや的に心外だ。
「ううん。
違うと思うし、かぐや的に『そーなのかもなぁ』の予想はあるけどさ。言っていいの、これ」
「
………
」
だから、冗句で終わらせないのか、という問いを投げ返す。
――
沈黙。私から手を離した彩葉は、ベッドに落ちているパジャマのシャツ部分をひろいあげて、軽く羽織ると、同じく転がっていたスマホを手に取った。ため息は、小さくて浅い。
「
――
かぐやが先に起きて、朝ごはん作りに行ってるんだって、そんなのいつも通りで分かってるのに、居ないんだ、って思ったら、
………
」
「寂しかったんだ?」
「
………
」
……
真っ赤な顔で彩葉がこく、と、アラサーらしからぬ純朴さで頷いて、あや〜、とかぐやは予想通りの回答に頭を掻く。重症じゃん彩葉色んな意味で、そのせいで?それだけでキツネになっちゃうって
――
逆に高校生の時薬無しでどうしてたの?どうなってんの?どういうこと?
問い詰めたいことで頭が埋め尽くされていくかぐやの前、ベッドに腰掛け、スマホを操作しながら彩葉が呻く。
「あぁもう、私の体どうなってんの
……
てか突発2連休とかヤバすぎる、社会人失格だよこんなん
……
」
――
連休取得に後悔するよりちゃんと服を着てよ油断しすぎだよ。そっちのが社会人失格だよ。
と、ついつい突っ込みたくなりつつも、まあ、今一番不安なのは、きっと彩葉だろうなんて想像に難くはい。からかいは極力控えてあげて。
「もっかい手ぇつなぐ?」
「え?」
漏れ出る微かなコール音を聞きながらかぐやが提案するのに、彩葉が戸惑った声をだす。いやだって。
「電話中キツネになったら困るっしょ」
「
………………
」
そんなことにはならん、と言いたかったのだろう、顔をしかめた彩葉が、けれど、
……
そうだね、と呟いて、握った私の手を
――
そのまま勢いよく引っ張った。
「へ、ちょ、」
「ぐぇ。
……
、あ、もしもし?お疲れ様です酒寄です。すみません急に、ちょっと今日明日の勤怠についてご相談がありまして
――
」
バランス崩してベッドに背中から倒れ込んだ彩葉が、いろいろアウトな姿で仕事先に電話を入れるのを。私は何も身に着けてない彼女の胸元にのしかかるような姿勢で、手持ち無沙汰な片腕で抱きしめられながら、なんつーか、吹っ切れすぎな彩葉も大概危険じゃのぉ
……
としみじみ思った。
思うところはあれど、電話が切れるまでは、思いついたいじわるはしないことにする。それ位の分別はかぐやにもありまして、てかこれ、
――
かぐやいつまで彩葉の側にいればいい感じ?
朝ちょーっと不在なだけで変化しちゃう、となると、多分今日明日についてかぐやって
――
過った疑問は、まあ、口にするまでもなく一生隣に居るって決めたし決まってるしな
……
で解決した。まあ、うん、彩葉とかぐやでありますので。はい。ため息をついて柔らかな胸に顔を埋めた。
――
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