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保科
2026-06-08 01:35:46
15522文字
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超かぐや姫!
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きつね一匹、部屋の中
かぐいろ かぐやと目が覚めたら部屋に居たキツネのお話/獣化パロです!時系列は9月の1週目後半くらいでお願いします
そのうちキツネをディスプレイ越しに甘やかすヤッチョがめっちゃ奮闘する時とはあるかも
→書いた ヤチいろ ギリ付き合って……ない……?
6/14 なんか続いたの書いた かぐいろかぐキツネ
1
2
3
ヤチヨとキツネ
『
……
彩葉?いろはー?
……
あれ、今、玄関開いた通知来た筈
――
』
いつもなら聞こえてくる「ただいま」の声を、どのセンサーでも検知できなかったヤチヨは首をひねる。
泊まり込みで研究所に出ずっぱりだった彩葉をできうる限り出迎えてあげたかったヤチヨは、リビングのタブレットからおーい、と呼ぶ声を
――
ふと止め、ディスプレイを落とす。
だって。彩葉なら、少なくとも無言で帰るなんてことはしない。であるなら、彩葉本人じゃない何者かの帰宅、それは
――
帰宅ではなく。
『
……
ふぅん?
――
おいたは、よくないね〜』
マンション最上階の窃盗とは、随分な不届き者もいたものだ。
ヤチヨはこの部屋の守護神(自称)として、警戒度を跳ね上げると、部屋に設置されたすべてのカメラを即時にハックする。ヤチヨがいつでも見られるように、という彩葉の気遣いを反転して防犯として活用するのは本意ではないけれど
――
全カメラの映像を集中して確認する。異変、人影、物音、何かないか
――
ふと、廊下に布が落ちているのが確認できた。布、というか、服?
――
粗い画質での解析に気を取られ、それ故に、その『物音』に対する反応が数瞬遅れた。
とん、とん、と、それは部屋に設置されたセンサーではなく、ヤチヨが投影されているタブレットが検知したものだった。
『
―――
およ?』
部屋全体に気を取られ、唯一確認を怠っていた、タブレットのカメラに慌てて意識を戻す。
――
鼻。ドアップのくろぐろとした鼻、ふすふす、と呼吸音。とん、と、それがディスプレイを叩いている。ヤチヨは一瞬呆気にとられ、慌てて我を取り戻す。
近くのカメラから、併せて状況を俯瞰する。
――
黒みがかった茶の毛のキツネが、一匹、お行儀よくダイニングテーブルの上におすわりして。とんとん、肉球でタブレットを叩いてヤチヨを呼んでいる。それが何者か、なんて、ヤチヨは
――
かぐやは、よく知っていた。
「キュウ
……
」
寂しそうな声に、あわてて画面を光らせる。そうだ、今の彼女は、まだヤチヨがどこにいるか分かっていない。光らせて、そうして、うわずった声で名前を呼ぶ。タブレットのスピーカーから声が届く。
『い、彩葉
……
!?』
「
――
キャウ!」
映し出された、ヤチヨの姿を見つけて。嬉しそうにキツネ
――
彩葉が一鳴きする。いとかわゆし。ブンブン!と大きく尻尾が振られ、ワンちゃんみたいにタブレットにすり寄って来た彩葉は。
そのまま勢い余って、長いマズルでタブレットをスタンドごと倒すと、そのガッシャンという音に、びくぅと全身の毛を逆立てた。あーあーあー。
『あらまあ。そっかあ、なっちゃったか〜、おキツネさんに』
「キャウ、クゥ
……
」
『うんうん、お家に帰るまでは大丈夫だったんだよね?
――
マンションの防犯カメラの彩葉、いつも通りだったもんねえ。お家で安心したのがよくなかったのかな?』
「
……
ギュ、クウ、キャウ」
『んー、何言ってるか分かんない!でも多分意地っ張りなことを言ってると見た!』
「
………
」
『ヨヨヨ、抗議として無言でタブレットを連打しないで〜?』
てしてし、タブレットを肉球で叩くキツネは、案の定彩葉だった。そんな会話を交わしながらも、可愛い目の前の彩葉を呑気に見ていられるほど、ヤチヨは内心の焦りを抑えられない。非常事態だ。
かつて、
――
遠い遠い昔であり少し前であり。かぐやだった『私』は、彼女を抱きしめることで元に戻すこと成功した。
しかし、今のヤチヨはツクヨミにしか存在できない身の上で、そんな彼女と現実で触れ合う手段は絶賛、目の前の彼女が開発中だ。まさか、キツネにスマコンをつけろなんて無茶も通らない
――
どうしよう。どうしよう。どうしよう
――
……
。
「
……
キュウ?」
思案げな声に、はっと顔を上げる。彩葉のやわらかな耳がひくひくと伺うようにこちらを向いている。鳴き声がまるで、ヤチヨ?と呼んでるみたいだな、と思って、頭を振る。
……
今、考えても仕方ない。
まずは、目の前の彩葉と対話をしないと。どんなカタチであれ、数日ぶりの彼女を、このままにはしておけない。色々な対処はそれからだ。
『
……
ん?ちょっとだけ考え事なのです、失敬〜。
ね、彩葉。質問いい?前みたく、イエス・ノーで』
「
―――
」イエス。こく、と、タブレットを上から覗き込むキツネの顔が、小さく上下する。彩葉も問答を覚えている。
『彩葉は今、困ってる?』
――
イエス。食い気味。
『タブレット越しの会話、問題はある?』
――
ノー。
『元に戻る方法に、見当はある?』
――
イエス。躊躇い気味。
……
帝を呼ぶとかかなぁ。最終手段として心に留めておこう。
そうして、最後の質問。
『
……
ヤチヨには、今、彩葉の為に出来ることがある?』
現実に干渉することのないヤチヨに、できることがあるのか。一番不安な、懸念事項。
ピタリ、彩葉の動きが止まる。
――
こくり、程なくわずかにその顔が頷いて、頷かれたのに目を見開くヤチヨを遮るように
――
タブレットのディスプレイのカメラ部分に手が載せられた。
一面、ぷにぷにの肉球で真っ暗だ。
『ちょ、ちょっと、彩葉!これじゃあ見えないよ〜?』
「
――
キャン、キュウ」
タブレットは、音だけは鮮明に拾ってくれる
……
パタパタと尻尾の振られる音、ぺち、と、何かがディスプレイに触れる音。
彩葉は一体、何と言っているのだろう。何をしているのだろう。ヤチヨの文句に対して言い聞かせるようで、でも、どこか得意げにも思えて
――
だめだ、耳を澄ませたって、8000年の経験はまるで生かせず分かりやしない。彩葉検定落第である。
仕方なく、最初にそうしたように、カメラを別の角度のものに切り替える。彩葉が気づいているかは分からないけれど、けしてタブレットだけが彼女の観測手段ではないのだ。
タブレットの次に近いものをメインに設定し、大凡のフォーカスを合わせれば。机の上、ふに、と。タブレットに鼻を
――
いや、マズルの口元を押し付ける彩葉の、姿が、見えて
――
えっと。ええと。
可愛すぎませんか。
思わず、自分の口元を撫でる。きっと、彼女の視界に映る姿は
――
彼女の、その、口づけの先は。
『
――
彩葉、彩葉』
「クゥ
――
キャウ、キャン、キャウ」
タブレットから、呼びかける。ピンと立った耳が、私の言葉を逃さんとする意思の表れのようで、いじらしい。かわいいな、かわいい。でもね、いつもの
――
人間の彩葉もかわいいんだ、ヤッチョはね。
――
言いたいことは、きっと分かった。だから、お返事をする。
『私も好きだよ。大好き。
早く
――
ちゃーんと、キスしたいね』
「
―――
ギュ」
ぎしり、全身の毛を逆立て固まった彩葉が、思い出したようにこちら
――
棚に置かれたカメラ
――
を、向く。気付いたらしい。くりくりの目と、こちら側の私の目が、あ、確かに合ったな、とヤチヨが思った矢先。
ば、と。助走なく飛び跳ねたキツネの跳躍力はそれは目を見張るもので、そのままリビングの対角、カメラの死角まで吹っ飛んで
――
「あいだぁ!?」
『
――
え、彩葉!?』
どがら、何かを崩したのかぶつかったのか破砕音の後、聞こえる悲鳴は人間の声
――
彩葉の声だ。戻ったってことだろうか。このカメラじゃ反対側は見えなくて、ヤチヨは慌てて現状を確認するために「っ、ぎゃー!待ってみないで裸だから今!」
あー。そういえば、そうなるんだったっけ、彩葉。
動きを止めたヤチヨはしばし考えて、
『
…………………………
』
「だァから、見るなってんでしょこのエロ童!」
『わあ。彩葉ってエスパー?』「あんたの考えることとかお見通し!」彼女の近くにあるカメラの前に、あえなく謎の置物が置かれて、ヤッチョは無力を再度噛み締めることになるのでした。くそー。
「
………
ヤチヨさんは、今、私が素直にありがとうと言いがたい現状をどう思う?」
「彩葉彩葉、ギューってしていい?」
「話を聞かんかい
……
てか事後承諾
……
」
それから少し経った、ツクヨミにて。天守閣、ヤチヨに正面からハグされたままの彩葉がああもう、とぶつくさ唸った後、ため息交じりに抱きしめ返す。その身体についている、名残のようなキツネ耳と尻尾は、彼女の現実の姿と色合いは違うけれど、ヤチヨがインスピレーションを受けて、彼女に与えたアバターの姿だった。きっと彩葉も察しているだろう。
「
……
ありがと、ヤチヨ。ごめん。迷惑かけた。すごい助かった
……
」
「どういたしまして
――
全然迷惑じゃないけど。
ちょっとだけ、久しぶりだったねえ。
ふふ、キツネの彩葉、やっぱり可愛いね?」
「
……
。そんな優しいこと言ってくれるの、ヤチヨだけだよ
……
」
そんなことないと思うけどなぁ、と、ヤチヨは敢えて口にしない。かわいい彩葉の秘密を知る人は、少なければ少ないほどいいから。
彩葉は、深々と疲労をにじませるため息をつく。
「
――
家に着いて油断したっぽい。薬、忙しすぎて昨夜分飲んでなかった、私は何度同じ過ちを繰り返せば
……
」
「安心しちゃった?研究所だとやっぱり気を張ってるから?」
「安心、というか」
俯きがちだった彩葉の目が、ちら、とヤチヨを見据える。なんだろう。ヤチヨは首を傾げて、
「玄関で靴、脱ぎながらさ。何のしがらみもなくヤチヨに会えるんだ、って、思ったら、なんか、ずっと寂しかったのが全部溢れて、泣きそうになって」
「
―――
」
「
――
気づいたら、その。はい
……
」
キャパオーバー。ヤチヨに会いたすぎて。
……
。熱を感じないはずの身体が、触れ合っている彩葉ごと熱くなっている気がして、ああ、どうしよう。ヤチヨは頭を抱えたくて、でも両腕は塞がっているから、独白するしかない。
――
ちょっと好きすぎる。あー、これ、ダメです。
「
……
なんか言ってよ、マジであんたに好きって言われるだけで満足する自分のチョロさに嫌になってんだからこっちは」
「え、うん。キスしていい?」
「
……
え?待った、何でも言えとは言ってな
――
」
――
全部言い切ることができないのは、お察しであるのです。めでたし。
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