いを
2026-05-30 19:22:43
989文字
Public 刀神
 

潮月抄・第三幕

「残潮/白む海」
青嵐


二、潮痕

 目を閉じると、足もとに残してきたものが脳裏に浮かぶ。
 砂浜にのこる、凹んだ草履のあと。
 どこかからやってきた流木。彼にもきっと故郷がある。
 あの貝殻にも。指先に持ち、ほんのわずか力をこめると割れてしまう、儚いもの。
 私はたしかにこの道を歩いてきた。
 消えない痕。