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pakkonn_niji
2026-05-30 08:47:53
34435文字
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未定
きゅかず Webオンリー(2回目) サンプルです
間に合えば
1
2
3
▶ 鳳王次郎
2.
三年の教室。その入口に立つ。一年の自分がそこに居ることが不自然だったのは、四月までの話だった。七月となった今、よくある景色の一部とされている。
中等部から上がり、高校一年生になってすぐ、王次郎は三年生になったカズキの元へ通い始めた。週に一度、部活の合間をぬって彼に会いに行く。深い事情があると言うよりも、単純に遊びたかったからでしかない。
彼とは長い付き合いになる。初めて出会ったのは小学校に入学してすぐ。見るからに「小生意気なガキ」といった風体のカズキに、王次郎は助けられた記憶ばかりだった。
あの頃は、自分より彼の方が大きな背中をしていた。手のひらだけは自分の方が大きく、カズキに苦言を呈されたこともある。彼はクールに見えて負けず嫌いだった。手の大きさに関してぶつくさと年単位で文句を言えるほど。
そんなこんな、カズキとは長い付き合いだ。分かりあっている。途中、一度だけカズキが錯乱して「前世」がどうのと叫んだこともあったが、それも今となってはいい思い出だ。カズキにこの話題を振ると、呆れ顔になる。「さては一生ネタにするつもりだな?」と肩を竦められた。
そんなカズキだが、ここ数日様子がおかしい。心ここに在らずとでも言うべきか。どことなくぼんやりとしている印象を受けた。今もそうだ。
今日はカズキとバッティングセンターに行く約束をしている。その迎えにここまで来た。すっかり慣れたカズキのクラスメイト達に挨拶されながら、王次郎は逡巡する。
カズキは窓の外を見ていた。流れる雲を目で追うような仕草だが、外は快晴。雲ひとつない。
一体何を見ているのかと首を傾げると同時、王次郎は「よお!」という明るい声を聞き止めた。声の方を向けば、そこには三田がいる。
カズキの同級生であり、王次郎にとっては先輩だ。タメ口でと言われているため気兼ねなくそうさせて貰っている。彼は王次郎に向かい、人懐こい笑みを浮かべていた。
「今日バッティングか? カズキに用事だろ」
「ああ」
王次郎は頷く。カズキを迎えに来た。それに違いはない。
だが、王次郎は「いや」と訂正を入れた。
「
……
んん? なんだ、違うのか?」
「違わない。
……
違わないのだが」
話しかけることに際し、疑問がある。王次郎は言外に三田へ伝えようとしたが、彼はこてんと首をかしげただけだった。どうやら自分から言わないとダメらしい。
王次郎は口を開いた。
「カズキについて聞きたい」
「は? いやいや。何言ってんだ? カズキと一番仲いいのはお前だろ。自分で聞けよ」
そうだろうか。王次郎は考え込む。カズキはあの性格だが、案外人との関わりは多い方だ。あの態度でいながら世話焼き気質も持ち合わせているため、見た目と態度にそぐわない友好関係を築いていたりもする。
しかし三田から見て、王次郎が友人として有力ならば嬉しいことだ。王次郎は三田の言葉を受け止めた上で、改めて口を開いた。
「関わりは多い。だが、分からないことがある。最近のカズキについてだ」
「最近?」
「ああ。ぼんやりとすることが増えたと思わないか」
ぼんやり。その単語に三田はぱちぱちと瞬きをする。その後、うーんと唸りながら腕を組んだ。
「そうかぁ? 別にそうは思わねーけど」
どうやらピンと来ていないらしい。考えすぎなのかもしれない。王次郎は「ならば問題ない」と返し、教室の中へ足を踏み入れた。
カズキの机に近づく。彼はある程度の距離に近づくまでは窓の外をみていたが、ふとこちらを向いた。
「おっと。ごめん王次郎。時間だね」
「
……
ああ」
目線が合う。ゆるりと笑顔が作られた。自然な笑みだ。
取り繕うことの多いカズキだが、王次郎の前ではかなり気を許した振る舞いをする。これもそのひとつだった。普段の捻くれた様子とはかけ離れた素直さで立ち上がったカズキは、王次郎に向かって「じゃあ行こうか」と声をかけてきた。
王次郎は頷き、後ろに続く。続くがどうにも違和感が付きまとう。「カズキ」と名前を呼ぶと、「なに?」と彼は振り向いた。その顔はいつも通り。平常だ。何でもないと王次郎は首を横に振った。
*
不思議な事に、王次郎は中々カズキにバッティングで勝つことができない。体格や経験の差からして、王次郎がカズキに負ける根拠は無いはずだ。王次郎の知る限り、カズキが野球を嗜んでいた期間はない。彼はどちらかと言うとインドアで、バットを握る姿よりキーボードを叩く姿の方が親和性がある。
それだというのに、また今回も王次郎は負けた。彼のボールはいつも狙い通りに飛ぶ。放たれた球をバットで掬うようにして受け止め、気持ちよく振り抜いた。着地を見ずにホームランと分かる。
力が強い。スピードがある。コントロールが上手い。色々評価点はあるだろう。だがカズキの場合、それらが未知数だった。一度自転車に乗れるようになれば、十年二十年たっても乗れるように、当たり前のようにカズキはヒットを出す。
ゲームに負ける度、悔しさはあった。だが尊敬の念も強い。涼やかな見た目に反し、王次郎との対戦に本気で挑む所も好ましかった。
そして毎度のこととして、彼に飲み物を奢っている。
「どうも」と彼は笑った。運動して僅かに赤らんだ頬の横、スポーツドリンクが揺れている。
「
……
悔しいな」
「へえ? それは嬉しいね」
素直に気持ちを吐くと、カズキは幸福そうに笑った。意地の悪い回答であるが、これも彼なりの親愛の情である。悔しがる王次郎を見、カズキは目を細めた。
「でも、毎週毎週、君の上達は感じている。このままじゃ僕も危ういかな」
そうだろうか。王次郎は瞬きをする。確かに、自分の上達は感じていた。中々の強豪校に属しながら、高校一年生にしてレギュラー入りも見えてきている。
ただ、だからといってカズキに勝てる気はしなかった。
「どうだろうな」
「あれ、自信ないの?」
「私が上達する分、カズキも上達していく」
所謂いたちごっこなのだと。王次郎はまっすぐにカズキを見つめた。勿論いつまでも負け続けるつもりは無い。王次郎は常に練習を怠っていないのだから。
それはカズキも同じだろう。どれ程の練習量をこなせば、彼の領域にたどり着けるのか検討もつかなかった。
しかしカズキは首を横に振る。
「僕は頭打ちだ。それにこれ以上、上達させるつもりも無い」
王次郎は瞠目する。上達させるつもりがない、とは、どういうことなのか。そして、そもそもだ。あの技術を持ちながら、何故カズキは野球をしないのか。
「
……
何故」
王次郎は尋ねた。純粋な気持ちからいえば、王次郎はカズキと一緒に野球がしてみたい。彼とプレイが出来たらきっと楽しいだろう。年齢の差があり、今から同じ学生としては難しいが、地元のチームに入るなどすればいけるはずだ。
カズキの技術を知るのは、現在王次郎だけである。宝の持ち腐れだと言外に浮かばせると、カズキは肩を竦めた。それだけだ。言葉はない。
つまり、カズキは野球の腕を磨くつもりはないということになる。王次郎は僅かに肩を落とした。
「お前とプレイがしてみたかった」
「バッテリー組んで?」
「ああ、カズキと組めたら楽しいだろう」
そう言うとカズキは笑う。「それはいいね」と手をうった後に「でもさ」と髪を揺らした。
「君の事だし、他の人の球も受けたいってならない?」
「む」
「野球バカだからね、君は。僕を誘ってくれるのは光栄だけど、僕じゃなければダメという訳じゃない」
さらりと言うカズキに、王次郎は僅かに猫背になった。何故そんな言い方をするのか。その言い方だと、まるで王次郎が「カズキじゃなくても野球が出来るなら良い」と言っているようでもある。
訂正のつもりで「私はカズキと戦いたかった」といえば、カズキは「えっ」と目を丸くした。「敵想定ってこと?」と、彼自身を指さしている。
日本語は難しい。王次郎はなんと説明したらいいか分からず、困ったように眉を寄せた。
カズキと戦いたい。本音だ。彼と隣り合わせにバットを振るう瞬間は何物にも代えがたい。その熱気と正面からぶつかりたいという思いはあった。それが同じチームだろうが、敵チームだろうが構わないというだけで。
グダグダになりながらも、王次郎は説明する。カズキとどのように野球で繋がりたいのかと。カズキは穏やかな顔で聞いていた。
その表情に見覚えがある。時折カズキの見せる、過去を見る時の顔だ。今の王次郎でも、幼少期の王次郎でもない。カズキが出会ったという、前世の王次郎。彼を思い出している時のそれである。
自覚も悪気も無いのだろう。だが、自分の頭の上を通り越していく視線を面白いと思えない。前世のことをカズキが口にしなくなってから久しいが、目は口ほどに物を言うとは言うものだ。王次郎は時折、間接的に「お前では無い」を突きつけられている。
居心地の悪さからふと目をそらすと、カズキは不思議そうな顔をした。しかし、すぐにそろりと口を開く。
「君と野球をするのも楽しいと思う。けれど僕は、これ以上練習しようとは思わないんだ。バットを握るのだって、君の横でしかしないんだから」
「野球は苦手か?」
「苦手ではないけど、上達しない事にだって意味がある」
王次郎は少しムッとした。その想いのまま「どんな意味がある」と聞くと、カズキは眩しそうな顔をした。
「君の指標になれる。いつか王次郎が、僕よりも上手くプレイ出来るようになる日が来るかのね」
カズキは楽しそうだ。そして、本心からそう言っている。自分のスキルを物差しにして、王次郎の成長を実感している。けして馬鹿にするでもなく、バッティングセンターですら本気を見せて対戦して。
王次郎は「そうか」としか言えなかった。純粋な気持ちで王次郎の成長を喜ぶカズキに口出しできるはずもない。故に飲み込んだ。
王次郎の目から見て、カズキは時間を動かしたくないように見える。だから訓練して、上手くなりたくない。ずっと同じ強さで居続けておきたい。きっと、それがカズキのいう「前世」に繋がるから。
王次郎は本確的に不貞腐れた。前世前世と、言わないながらに伝わってくるものが多すぎる。前世でなく今の王次郎を見てくれたのならそれでいいのに。
カズキはきょとんとした。「なに、拗ねてるの?」と機嫌を伺うように尋ねてくる。「拗ねていない」とボヤくと「嘘だ」と笑われた。
そうやって、からかわれながらもバッティングセンターを出る。「王次郎って顔に出るよね」とくつくつ背を揺らす友人に肩を軽くぶつけつつ、王次郎は口を開いた。否、開こうとした。それよりも前にカズキが「あ」と呟く。
「あの子、この前教えてもらった彼女?」
促されるまま視線の先を見る。そこには一人の女生徒がいた。野球部のマネージャーだ。
彼女は王次郎とカズキを見とめると、軽く会釈をした。それだけだった。そのまま彼女は立ち去っていく。どうやら近くにあるスポーツ専門店を見に来ていたらしい。
あっさりとした挨拶を見て、カズキは不思議そうにしている。
「随分素っ気ないね」
「そうだろうか。頼りになるマネージャーだ」
「そうじゃないだろ」
カズキはため息をつく。そうじゃないとはなんだと首を傾げると、カズキはやれやれと首を振った。
「せっかくの彼女なんだから、お互いもう少し愛想良くしたらって話。初めてなんでしょ? 大切にしなくちゃ」
言われ、王次郎は瞬きした。そう言えば彼に説明をしていなかった。
「もう別れる」
「え?」
「正確には
……
別れそうだ」
カズキはその言葉を聞き、再び数秒後に「え?」を繰り返した。カズキの中で想定外が起きているのは明らかだ。彼は何度か瞬きをした後、ゆっくりと言葉を区切りつつ問いかけてきた。
「
……
君、どんな失礼をしたんだ」
「自覚は無い」
「全く」
呆れたように吐き出されるそれに身を縮こませる。僅かに伏せられた瞼を前に追撃されるかと思ったが、カズキは「君らしいけどさ」と言うだけだった。
王次郎は足を止める。過ぎるのは「それだけか」という泡のような疑問だ。相手が三田であれば嬉々として弄っただろう。それと比較すると無関心に思える。
動かなくなった王次郎に気がついたらしい。カズキが振り向いた。「どうしたの」と聞かれるのでなにか答えようとするが、浮かばない。
王次郎はくるりと目線を一周させてから、考えもなしに口を開いた。
「失礼を働いた覚えは無い。だが、
……
失礼だと思われた理由に心当たりは、ある」
「へえ」
カズキは適当に相槌をうつと、手に収まっているスポーツドリンクのキャップをくるくると弄り出した。完全に開けるでもなく、飲むでもない。意味の無い行動だ。落ち着きのない動きは彼らしくない。
この話題をカズキは好まないのだろう。好まない話題なのに自分から触れる所がカズキらしい。苦手意識を悟られたくないという無意識あっての選択なのだろうか。
合わなくなった視線を戻して欲しい一心で、王次郎は宙に浮くような気持ちのまま言葉を吐き出した。
「彼女に話した事がある。カズキと共にいる時間が一番楽しいと」
「なんで彼女にそんな話をするんだ」
「デートの行き先を聞かれ、バッティングセンターが良いと答えた。一番楽しかった場所に行こうと聞かれたからだ」
王次郎にとって、野球は楽しいものだ。強くなりたい。部活も大切だ。だが、そこにある楽しみとはまた別種の「楽しさ」をカズキとの間に共有しているつもりである。
生活の中にカズキがいた。いつもだ。彼の言う前世についてはよく分からないが、王次郎はカズキと腹を見せあった仲だと思っている。
デートよりもお前と過ごす方が楽しかった。その言葉の中に媚びはない。カズキが喜ぶだろうと思い伝えた気持ちであるが、本心だ。
しかしカズキは頭を抱えた。
「馬鹿」
「
……
ばかではない」
何故そのような言い方を、と文句を口にする前に、カズキは口をひん曲げる。「いいかい、王次郎」という声は諭すようなものだった。
「僕だって君は特別だ。小学生の頃から知っているし、こうやって週に一度は遊んでる。お互い分かることも多いよね」
「ああ」
「だから僕と君が一緒に過ごして楽しいなんて当たり前なんだ。積み重ねがある。人も思いも場所もだ。
……
それを出会ったばかりの相手と比較するなんて、君、それは馬鹿じゃない?」
王次郎は黙った。言いたいことはある。馬鹿と言うな、だとか、それはそうかもしれないという部分的な同意。そしてふわりと浮かぶのは、カズキがそれを言うのかという反発である。
カズキは王次郎を見ているようで見ていない。彼の言う積み重ねが、彼の妄言にある前世由来でないとどこで判断できるだろう。
彼にプレゼントされたサボテンを気に入っているが、王次郎はサボテンを好きだと思ったことは無い。それなのに彼は「君こういうの好きでしょ」と渡してきた。その無意識と、今回の王次郎の発言、一体何が違うというのか。
本格的に面白くなくなり、王次郎は黙った。カズキはじっと覗き込んでくる。
「まあ、君が僕といて楽しいなんて当たり前のこと。僕は君に楽しんでもらう事がなによりだし、その上で僕が楽しかったらそれに勝るものなんてないから」
彼は目を細めていた。機嫌のいい猫のように。分かりにくいが、なんやかんやで王次郎のいう「お前といる方が楽しい」の発言は効果があったのだろう。
王次郎は口を開いた。
「それは
……
前世と関係があるのか」
何故、彼は自分に興味があるのだろう。その答えは、あの日一度だけ聞いた前世にあると思っていた。
「私と共にいるのは、前世が原因か」
カズキは王次郎ではなく、自分の知らない自分
……
存在しない虚栄に向けて語りかけているのではないか。その想いが消えない。
王次郎としては追い詰められたような気持ちで発した言葉だったが、カズキは片眉をつりあげただけだった。
「なんで?」
「
……
」
心底分からないと言った顔をする彼に、王次郎の方こそ戸惑ってしまう。カズキは「君さ」と言いながら、背中に手を回してきた。
「思春期だよ、それ」
「思春期で済ませるな」
「済ませていいだろ、年齢もちょうどこの辺りなんだし」
彼は時々大人のような口ぶりになる。それすら彼の言う見も知らぬ「前世」かと身構えてしまうのに。カズキは王次郎の葛藤も知らず、悠々と腕を組んだ。
「言ってなかったかもしれないけど、あの前世っていう話、あれ嘘なんだよね。君の気を引きたくて幼い僕がついた罪のない嘘」
王次郎は「なんだと」と目を見開く。カズキは「ごめんごめん」と軽く謝ってきた。
「流石に君でもわかると思ったけどな? だって前世だよ。君はそんなのあると思う?」
「
……
思わぬ」
「でしょ?」
だから嘘なんだって、とカズキはへらりと笑った。そのまま歩みを再開する。王次郎は暫く棒立ちした後、慌てて追いかけた。
「では、私が前世について悩んだことは
……
」
「悩んでたの?」
「ああ」
「あはは! 思ったより効果あったんだね」
カズキは楽しげだ。君と仲良くなれたのなら、嘘も方便だねと通学カバンを揺らしている。隣に並びながら、王次郎は横からカズキの顔を覗き込んだ。
「騙すのはいいが、ネタばらしまでが遅すぎる。小学生の頃から悩んでいた」
「騙すのはいいんだ」
「構わない。対策した所で、私はカズキに騙される」
そう言うと、カズキは本格的に声を上げて笑った。君って単純と肩を震わせている。
一通り笑った後、カズキはニヤリとしながらこちらを見上げてきた。
「それでどうするの」
「どう
……
」
「彼女。このままだと別れる訳だ。そこで君は選択する必要がある」
王次郎は僅かに身を引いた。カズキの面白がるような表情に気圧される。「選択
……
」と呟くと、彼は頷いた。
「君の認識不足を彼女に詫びるか、それともそのままでいるか」
飄々と告げる彼の髪を、暑さを帯び始めた風が揺らしていく。王次郎は「どうしたらいい」とカズキに問いかけた。カズキは「赤ん坊じゃないんだから」と苦笑する。
「君の問題だろ。僕は君のプライベートにアレコレ言うつもりは無い」
「
……
む」
それはそうだ。ここでカズキに「話し合え」「話し合うな」と言われて、王次郎が実行したところで何も生み出さない。王次郎が決めるしかないのだ。
別れ際、助けを求めるようにカズキを見ると、彼は揶揄うように顔の横で手のひらを振った。
別れて暫くして気がつく。カズキに話を聞くのを忘れていた。彼がぼんやりとしている件についてだ。
だが、先程は特に変わりなかった。ぼんやりどころかかなり鋭利ですらある。杞憂だったかと、王次郎はその事を忘れてしまった。
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