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河童の皿箱
2026-05-28 22:20:38
6548文字
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遊戯王:短め(2026年)
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IC&IO
A.D.R.A.S.T.E.I.A.とグラフレアの話
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この娑楽斎と云う男。プロとは皆がこういうものなのだろうかと、花火師は疑問を抱いた。彼はその日のうちに仲間である技術屋の人形師に我が国の秘密兵器を渡し、兄の人格がどのようにシミュレートされているのかの解析を開始した。その後、浮世絵師はふたつのプランの大まかなフローを制作し、実現のために必要ないくつかのモジュールを仮で組み上げていた。
解析が終わるまでの間、花火師に与えられた仕事は、兄の姿の三面図を描き出すこと。それがアンドロイドの設計図となるのか、それともホログラムのグラフィクスになるのかは未定であったが、ともかく花火師は、自国に戻って兄の姿が写った写真を必死にかき集めた。問題は、兄のどの姿を提出するのか。争いなどなかった頃の兄か、それとも学都を襲撃したあの時の兄か。花火師は頭を悩ませたが、ひとまず両方の3面図のラフを描きあげた。そうするとふと、弟の頭には休みの日の兄の姿が思い浮かんでしまって、ついでにその時に来ていた服も描き上げた。本題からの脱線は止まらず、そういえば、そう言えばと。いくつもの兄の姿を描きだしてみては、頭を抱えた。間違えて提出せぬように、没の印を描き込んだ。
悩んだ末に仕上げたふたつの絵には、しっかりと色の指定まで盛り込んで。浮世絵師に提出すれば、その間に向こう側も解析のほとんどが終わったらしく、改めてふたつの案を持ち掛けた。兄を完全な機械で再現するのか、それとも仮想上のみで再現するのか。絵師からの提案は、立体投影によるヴァーチュアルであった。
というのもこの時計、あくまでも武装を転送するゲートでありながら、兵器なのだ。アンドロイドボディを搭載するとこの時計自体の形状を大きくして変化させざるを得ず、携帯性が失われる。完全に自立行動できるようにはなるとはいえ、メンテナンスの手間も大幅に増える。学業に専念している今、そんな兄のようなものの世話をするのは、確かに現実的ではないだろう。一方でヴァーチュアルであれば、時計自体が持つ演算能力とエネルギーの生産能力だけで十二分に投影が可能。携帯性にも変化がない。多少メンテナンスの必要な技術水準は上がるが、それは自国の技術でも可能だろうと。それならばと、花火師は投影型のプランを選んだ。
それからは実に迅速で、絵師は花火師が描いた図面から、兄のグラフィックを制作。人形師が組み上げた試験用モジュールにインストールし、ちょちょいと調整してやれば、時計で生産されたエネルギーによって兄の姿を映し出すことに成功。後は、これをシミュレーターがとりたい動きと連携させてやれば良い。なんとも容易いかのように相談し続けるふたりに、花火師は口が開きっぱなしになっていた。彼らは頭をひねることもあったが、その問題の解決まで、時間がかかることはなかった。
しかしながら、花火師の頭の中には、こんな冷静な考えが度々によぎっていた。俺は何をやっているのだろう。こんなことをしても、兄さんは戻ってこないのに。友が咄嗟に放った転送魔法のその間際、神の力の放出の中心にあった兄の姿。飛び去る神。直後に広がっていたのは、見知らぬ森。
…
兄は、神に見捨てられたのだ。ただ争いたくなくて、侵略者を追い払おうとしただけだったのに。
神に見初められ、あれほどまでに戦いに執着するようになって、その最期は
…
あんなもので。自国に戻っても、葬式ひとつすらなく、墓ひとつ立っていなかった。神の力が薄まって、国の体制が変化する混乱の最中、詳しい話を聞く時間もなく学業が再開して、側でずっと、兄の声がして。
あぁ、そうだ。本当は、ちゃんと見送りたかった。自国のために戦い続ける兄は、どんどんと恐ろしい顔をするようになった。でも、自国のために戦い続ける兄は、享楽のためでもなく。皆を守ろうとしていたことも、分かろうとはしていた。結局、怖くなって逃げだして、ほとんど喧嘩別れで終わってしまったけれど。
これは、そう。絵師が前話していた言葉を借りるなら、供養。兄の面影に、遺影に、今度こそ向き合って。四肢が裂けてはじけ飛んで
…
遺骸ごと消え去ってしまったのだろう兄に、せめてひとことを。それが、本人じゃなかったとしても。
絵師のもとから届いた新しい時計。形状は事前の打ち合わせ通り、ほとんど変わっていない。武装モードの他に、投影モードが追加されたそれを、意を決して起動する。迸る、神の再現。破壊の力。けれど徐々に、それはひとつの形を、輪郭を作り出した。
…
あの日の。優しかった兄が、まるでそこに居るかのようだった。
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