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保科
2026-05-11 01:26:14
3643文字
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超かぐや姫!
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ねっとりなかよし
哲学について考えました 答えは出ませんでした いろかぐ/いろヤチ
1
2
前提条件抜けてません?
「
――
ヤチヨって、性欲とかある?」
『
…………
』
彩葉からのその突拍子もないセクハラをひとまず無言で乗り切れたのは、そこまでの会話が全て義体制作に向けたアンケートじみた問答だったからで、後、その瞳が変わらずバインダーを眺めていたからだろう。
タブレット越しに伺うそのうつむき加減の顔は、真面目な研究者モードのままだ。かつての悪童ならばここで茶化しの一つや二つ入れたろうし、現に今の私もそうしたいと思ってはいるけれど。
――
私は、今、彼女に尽くしてもらってばかりの私は、その選択をこの場において選べない。僅かに息を吐いて、自分の心に蓋をする。できる限り感情がこもらないよう、淡々と続ける。
『
……
どうかなー。月人はそもそもそういった生殖行為を必要としないから。
人としての肉体を持っていたかつてならともかく、もと光る竹をベースとした情報体の【ヤチヨ】は、限りなく月人に近いしね。客観的に見れば、まあ、無い
……
んじゃあ、ないかな』
「ふぅん、生殖行為の必要なし、
……
まあ断片的に聞く限り、月人は繁殖を主目的とするものではなくどちらかといえばシステムの歯車に近そうな印象だったしな
……
」
つぶやきながら、彩葉はバインダーに何やらボールペンで書きつける。カメラの画角からは何も見えなくて、だから、彩葉が何を考えているのかも見えない。何を目的としているのか?探る眼差しは交わらないまま、次の問いが投げられる。
「次。人間のそういった営みについて、どの程度興味や知識がある?情報のみ?」
『夜伽?うん、まあ、知識としても、
――
実態を見た経験もあるよ。知ってのとおり、一時期は遊郭に身を置いていたしね。
その時も私が具体的に何か奉仕をしたという経験はないけど。まあ、言うとおり情報のみの耳年増〜ってところかな。自分が、とかはあまり考えたことないかも』
「そっか」
一瞬ざり、と不自然に揺れたペンは、すぐにまた何かを書き記す
――
なんなんだろうこれは。挟んだ冗談にも無反応、普通に恥ずかしいのですが?
かり、とペンが止まる。不自然な空白に、私がどうしたのか口を挟もうとして、とん、と詰まるようなノック音がそれを割く。彩葉が、どこか躊躇うような素振りとともに、口を開く。
「
……
そうすると、ヤチヨは、義体について
――
生殖行為が行える様なオプションは必要ない、かな
……
」
『ゲッホ』
――
直接的な物言いに、さすがに噎せる。ああもう分かった、彩葉が何を聞きたいのか、やっと理解した。
『
…………………
』
「
…………………
」
交わらない視線。
――
交わろうとしない視線は、意図したものであることにも気づく。彩葉、私はここで漸く、この、正気に見せかけた狂った問答で初めて彼女を呼ぶ。
『彩葉。いーろーは』
「
……
はい」
ものすごーく小さな返事。明らかな負い目がある。
『つまりさ、今。
ヤチヨが
――
かぐやが義体をゲットした暁に、えっちがしたいかどうか、って話をしてるね?キミ』
「
…………
あんまそんな、物言いは、その」
『違う?』
「あっ
……
てます
……
」
まるで閻魔様の前で断罪を待つかのような態度の彩葉は、呼びかけによろよろと視線を上げる。やっと交わった視線は、分かりやすいくらいぐっちゃぐちゃに揺れていた。うーん。要らないことを100個位考えてそう。私はじっと彩葉を見つめて、気まずそうなその目が直ぐにバインダーでなく床をとらえるのに、ああ、やっぱ分かってなさそうだなぁと呆れてしまう。
――
きっと彩葉は、『誰かと』私がまぐわうことをずっと考えている。誰かを愛し、誰かと添い遂げること。それを避けたい
――
でも、私の同意なくそれは出来ない。そんなところか。
呆れを通り越して最早頭痛がしそうだ、システム不調でツクヨミが落ちちゃうぞ
――
脅し文句を飲み込んで、あのさ、と私は問いかける。羞恥を覚えるラインはとうに超えていた。
『
――
私の意見を尊重してくれるのはとっても嬉しいけど。彩葉の意見も聞きたいなぁ?』
「は?
……
、え、私?」
何を想定外みたいな顔をしているんだろうこの子。ふ、と、口の端から漏れ出たため息はまるで笑い声だ。
『だって、私が誰かと夜伽を共にするなら相手は一人しかいないのですよ?』
「
―――
」
怪訝そうな顔。いやあ信じられますか皆様、これがかの、日本の叡智と呼ばれし女傑のとぼけ顔ですよ。
『はい他人事みたいな顔をしなさんな〜、
――
該当者1名酒寄彩葉さん。
彩葉?いい、私は、
――
かぐやは、かぐやが愛した人以外とそういう事をしたくない。
……
ああ、そうだね。そういう意味では、あるよ、性欲。貴女限定のだけどさぁ?』
きょとん、と。何も分かってなさそうだった愛らしい顔が、瞬間、赤色に染まる。
「
―――
は?待っ」
『待たない。待たないでどんどん酷い質問したのは貴女だよ彩葉。じゃあ、重ねて聞き返そうか。
彩葉は私とそういうこと、したい?
――
ねえ、これ、そういう結論だよ?分かる?分かってるかね?』
「
――
、
―――
、
――
」
顔を赤くしたりはたまた青くしたり、引きつって笑ったり口をつぐんだり。ぐるぐると百面相を繰り返した彩葉は、数十秒後、息も絶え絶えに分かりました、とつぶやいた。いや何がだーい、と言うツッコミは、まあ、これ以上いじめるのも可哀想だし、やめてあげた。
暫くして。名前が呼ばれる。
彩葉が、羞恥心で泣きそうな顔で、私の名前を呼ぶ。
「かぐや」
『
――
はいはい。何かな?』
「
…………………………
絶対、私以外と、しないでくれる?」
『しないよ、当たり前じゃん。
――
んふ、つまり私とならシてくれるんだ、いーろは?』
「
……………
。阿呆」
こつん、とディスプレイを叩かれる。それは肯定として受け取っておきますよ。
さて、そうして決定された義体のオプション有無は、
――
推して知るべしだ。蛇足だからねぇ。
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