shio_nmnnk
2026-05-08 21:10:14
16373文字
Public
 

君にだけ捧ぐ 4話進捗2

オンリーで出した進捗(https://privatter.me/page/69d0f6db09e2d)の続き。時間がなくて終わらない

https://wavebox.me/wave/453vl3n40abxrlq4/
感想ください♡♡♡♡♡

 敢助は由衣の書いた日記をパラパラとめくり、大きくため息をついた。
「由衣……お前なぁ」
 由衣も敢助に見られることを考えると、小言の一つくらい言われると思っていたが、日記であることに変わりはないし、別に書くなとも言われていない。何より、ずっと屋敷にいるので書くことがあまりないのだ。由衣は頬を膨らまし、そっぽを向いた。
「ふん! 嘘は言ってないもん」
由衣が書いた日記には、このように書かれていた。

・敢ちゃんに血が必要なのか聞いてみた。1回ある程度の量を飲めばしばらく大丈夫らしい。確かにそこそこ血は飲まれたと思う。
明確な周期はまだ不明だが、今までの話から推測すると1週間に1度辺りだろう。

・人間時代と食事の美味しさはどのくらい違うのか聞いてみた。なんとなくそのご飯の味はする気がするけれど、あまり美味しくはないらしい。食べれない事はないくらいとのこと。血の方が美味しいしお腹も膨れるらしい。ちゃんと吸血鬼が血を飲むように造られているようだ。

・敢ちゃんからネックレスを貰った。『何かあれば、その石に少しだけ魔力を込めて、名前を呼べばいい』と言っていたから、魔法石の類なのだろうか。確かに、今の敢ちゃんと同じ目の色の石だ。

・眷属は日光に当たっていいのか聞いてみた。本来の動物たちより吸血鬼の特性はあるが、少しくらいなら平気らしい。確かに、一緒に日の光の当たる中庭に行ったが、あまり長くは日向にいなかった記憶がある。

・敢ちゃんは瞬間移動のような魔術が使えるが、どういう仕組みなのだろうか。近くで使っている様子しか見たことがないから、どうなっているのかは分からない。ただ、私も知らない魔術だから、吸血鬼が使う特別な魔法なのだろう。

・私が敢ちゃんの命令(のようなもの)で術を解かせられたのは、どういった理由なのだろう。吸血鬼が持つ特殊な魔術に起因するものなのか、あるいは吸血鬼の所有印が影響しているのか。そして恐らく、吸血鬼しか持っていない何かしらの知識を得ているのだと思う。どこで、どうやって知識を得たのだろう。

・敢ちゃんの左目の傷はどうしたのだろう。私の血を吸っても治る様子は見られない。魔術の適正はあまり低くなかったのに高威力の魔術を使っていた。かなり昔の魔術書に体の一部を代償に力を得る禁術に近い魔術があった気がする。左目はその代償?

 敢助は再び日記をパラパラと捲り、パタンと音を立てて日記を閉じる。ベッド横の机の机の上に置くと、眉を顰めながらため息をついた。
「お前、これ吸血鬼の生態記録にしようとしてないか?」
 やはり、完全に読まれていた。書くことがないから、何かの役に立つだろうと考えていたが、どうやらその考えも読まれたのだろう。敢助に嘘は通じないので、どうしたものかと由衣は頭を巡らせる。
「そ、そんな事ないもん!」
……嘘だったら致死量寸前まで吸うぞ」
 気のせいかもしれないが、敢助の目が紅く光った気がした。この流れは不味い。由衣がどう拒もうと抗えなくなってしまう。また理性が飛んでしまう事だけは、困る。
……ごめんなさい」
 由衣が眉を下げて謝罪の言葉を口にすると、敢助はふっと息を零した。
「じゃあ少しだけ、な」
「す、吸わない選択肢はないの!?」
「嘘つこうとはしただろうが。嘘はよくねぇよな? ゆーい?」
「うっ」
 敢助は由衣の首の後ろに手を伸ばし、シュルッとリボンを解く。それと同時に首元あたりを覆っていた服の生地もはらりと落ちて、肩の辺りまで肌が空気に晒される。敢助は肩をそっと掴み、由衣を抱き寄せる。首筋に口づけを落とし、かぷりと甘噛みをされたかと思うと、ズブリと牙が刺さる感覚がした。
「んっ」
 仕置きだと吸血をしようとするのに、その行為は割れ物を扱うようにゆっくりと、少しずつ行われる。ゆっくりだから、その分時間もかかるし、息継ぎをする回数も増える訳で。由衣の首筋に吐息がかかるし、ずっと牙が刺さっているからいつもよりも体が熱くて、何となくぼんやりとする。体に力が入らなくて、それでも、少しでも触れていたくて、まだ離れて欲しくなくて、そっと敢助の肩に頭を乗せる。。敢助の手がピクリと反応したかと思うと、由衣の首筋から牙を抜いて牙によってつけられた傷を舐める。
「んぁ」
「随分と甘えただなぁ」
……かんちゃんの、せいだもん」
 由衣は敢助に体を寄せ、敢助のシャツの裾を小さく掴む。そして、肩に顎を乗せて頬を膨らませた。敢助は小さく口角を上げ、由衣を敢助の肩からそっと離す。敢助の両手で由衣の両頬を包み込んだ。
「そうかぁ、俺のせいか」
「んぅ……いじわる」
「かわいいなぁ、由衣は」
 敢助は由衣の額に口づけを落とし、由衣の両頬を撫でる。
……わたしも」
「あぁ、いいぞ」
 敢助が由衣の両頬からそっと手を離すと、由衣は敢助の胸元に手を添えて顔を上げ、敢助の唇に口づけを一つ落とした。
「由衣は唇にしかキスしねぇなぁ」
「わるい?」
「いや?悪くねぇよ」
 敢助は由衣の背中に手を回し、抱き寄せた。トクントクンと、鼓動が聞こえる。由衣はしばらくの間、胸元に耳を当てた後、顔を上げて敢助を見る。敢助の頬にそっと手を伸ばした。
「敢ちゃんは、唇にキスしてくれないの?」
……そうだなぁ、そういう約束だったな。一回だけ、な」
「約束……?」
 由衣は身に覚えのない”約束”に首を傾げる。何か、そういった類のものをしたのか。ぼんやりとした記憶を思い返すならば、答えはただ一つ。吸血された余波で、口づけを強請った記憶。……あれは現実だったのか。それを理解した途端、羞恥のあまり頬がカァッと熱くなる気配を感じた。
「可愛いなぁ」
 気が付けば、敢助は由衣の両頬に手を添えて、微笑んで由衣を見ていた。キスはして欲しいけれど、今はそれどころではない。由衣は敢助の口元に手をグイッと押しあてた。
「ま、待って!? え!? あれって全部現実なの!?」
 敢助は由衣の腕を掴んで手をどけた。そして、耳元に顔を寄せる。
……気づいちまったか?」
 否定をしないということは、つまり。
「うそ、でしょう……?」
「あの時は可愛かったなぁ……。もちろん、今も十分可愛いがな」
「やめて、やめて! ぜ、全部? ぼんやりとした記憶って、全部現実なの?」
「少なくとも、俺に教えてくれたことなら……全部現実だな」
 吸血されたとか関係なく、由衣の頬どころか全身が熱くなる感覚がする。恥ずかしくて、敢助から距離を取りたくても、いつの間にか背中に手を回されていて、動くことはできない。敢助は目元を細めニヤリと意地悪く笑っている。
「は、離してよぉ……
「離したら逃げるだろ」
「あ、当たり前でしょう……!?」
「別に気にしなくていいだろ。それともなんだ?そういうおねだりは、自分の意識がハッキリしている時にしたかったのか?」
「ば、ばかっ!」
 由衣は勢いよく敢助の顎に自分の頭をぶつける。
「い”っでぇ!」
 頭をぶつけられた拍子に、由衣の背中に回っていた手が緩む。由衣はその隙に敢助の体からすり抜けて、ベッドから降りようとしたが、敢助に振りほどけてしまうくらいの力で腕を掴まれる。
「ってて……。悪かった、由衣。からかいすぎた」
「ふんっ! 悪いと思ってるなら首のリボン結んでよね!」
「分かったよ。悪かった。ほら、後ろ向け」
 由衣はボスンと音を立てて、敢助の足の間に座り込む。敢助が由衣の髪をどかし、首筋のリボンを手際よく結んだ。
「髪もなんかやってやろうか」
「いいの? ふふ、それじゃあ敢ちゃんにおまかせしちゃおうかな」
「おう。任せられるほど上手くねぇがな」
 敢助は由衣の髪を取り、髪をいじり始めた。由衣にはどのようになっているのか見当はつかないが、すぐに終わらないということは三つ編みをしてくれているのだろうか。
……髪の手入れ、できてんのか」
「前ほどじゃないけど……。色々と工夫すればそれなりにできるわよ」
「今度、そういうモン買ってやる。教えてくれ」
「本当? ふふ、嬉しいわ。買ってきて欲しいものまとめておくね」
「あぁ。……ほら、できたぞ」
「ありがとう! 三つ編み?」
「おう。久々にやるから質はちょっとアレだが」
 由衣が三つ編みをみると、確かに、少しだけ緩くなっている部分があるが、対して問題があるように思えない。
「そう? 上手よ? また、やってくれる?」
「あぁ、いいぞ。由衣が望むなら、いくらでも」
 敢助はそう言って由衣の頬を撫でた。