無窓居室
2026-04-20 03:40:18
5569文字
Public Pixv投稿企画
 

もしもあの日に戻れたら(Pixv執筆応援プロジェクト7月)

一行目から👹が死んでるIFの未来。
漫画版の😈👹が結ばれたけど一生は共にしなかった設定です。



 ——ああ、駄目だ。どうしても。自分は悪魔のヨーチューバーで、誰かに服従することなどできず、それ以上にアカネは誰かを束縛するような鬼ではない。何度やり直しても、おそらくは同じ結果になるだろう。
 夕焼けは去り、空にはささやかな星が瞬いている。湖の水面は暗く、 おごそかな沈黙を守って凪いでいた。その景色を眺めているうちに、聞き慣れた声がブラックの耳に届いた。

「じっ!じーっ!!」
「カメラちゃん」

 魔界の自宅で留守番をしてくれていた助手が、帰りが遅いのを心配して迎えに来たらしい。ブラックはいつも通りの打ちとけた笑顔を浮かべて頷いた。

「ええ……そうですね、そろそろ帰りましょう。明日も早くから撮影の予定がありますし」

 右手を胸の上から離して湖に背を向ける。もう痛まない棘の刺し痕を思ってから、駅の方角へ向かって歩き出した。初めて訪れたときと同じに、電車でこの地を離れたいと思ったのだった。
 湖の真上では流れ星が一筋、涙を知らない魔物達の恋を弔うようにきらめいた。
 それが夜空をつたい流れていくのを、魔界の王が見ることはなかった。


 2024/09/10